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インターましロードを作る旅第1章~ピンチは続くよどこまでも、前編


1 はじめに


旅の行程 初日

『インターましロードを作るたび、第1章』へようこそ。今回から5回にわたり、真しろが渡英修行終了間際に行った、真しろ史上最大のスケールかつ最難関のヨーロッパ1人旅について振り返っていきたい。今回の旅は、ヨーロッパの5カ国を、Interrail Global Passという、列車乗り放題のチケットで周遊するというものだ。


第1章では、1日目の旅について振り返る。ルートは、英国を出発し、飛行機でイタリアのヴェネチアへ飛んだあと、ヴェローナを経由してオーストリアのインスブルックへ電車で向かう内容になっている。そんなに複雑なルートではないのだが、この1日目が、正直この旅の中で1番気の休まらない旅になろうとは、旅を始める前の真しろは予想していなかった。



2 第1のピンチ


2023年6月25日、午前1時40分。真しろはベッドから飛び起きて、無我夢中で準備をしていた。タクシーを2時に予約しているのに、今起きたばかり。パッキングは全くと言っていいほど終わっていない。前の日までかなり予定が詰まっていて疲れがたまっていたため、寝坊してしまったのだ。こんなことは今までなかった。最初から最大級のピンチに、はまったのだ。というより、完全にこれは自分のせいなので、やらかしてしまったのだ。


タクシーに乗り遅れてしまえば、真夜中の修行場で完全に路頭に迷うことになるだけでなくバスに乗り遅れることにもなり、最悪の場合飛行機にも乗れないことになる。その瞬間、この旅は企画倒れになってしまう。そんな空しいことがあっていいものか……。持って行く荷物は決まっていたので、秒殺で用意して、なんとか予約していたタクシーに乗ることができた。


3 修行場→ヴェネチア~第2のピンチ


最初の、超絶無駄なピンチを切り抜けてタクシーに乗り込み、向かったのはバス乗り場。今から空港行きのバスに乗るのだ。今回お世話になる空港も、例によって、Stansted 空港だ。


真しろの修行場からこの空港へ行く方法は、タクシーだけで行く方法を除けば、電車とバスを乗り継ぐ方法と、空港行きのバス1本で行く方法がある。後者の方が乗り換えが少ないし運賃も安いし早く着くし夜中でもバスは運行している。つまり、実質こちらの方法を選ぶことになるのだ。ちなみに空港行きのバスのお値段は、日本円で約3000円前後だ。追加のメリットを言えば、このバスにはUSBポートもあり、Wi-Fiまで付いているのだ。唯一のデメリットは、オンラインのサイトが音声読み上げソフトと仲が悪いことぐらいだろうか。


3時発の空港行きのバスに乗って1時間ほどで空港に着いた。いよいよヴェネチアに飛び立つことになるのだが、ここで第2のピンチに巻き込まれた。


今回は、RyanairというイングランドのLCC(イングランドの学生の味方)を使用するのだが、オンラインチェックインを事前に行っていないと、£55も追加料金がかかってしまうのだ。そして、Ryanairのウェブサイトは非常に音声読み上げソフトとの相性が悪く、真しろは直接ウェブサイトから予約できなかったので、別のサイトから予約をした。すると、オンラインチェックインをすることが実質不可能になってしまったのだ。それを説明したのだが、結果的に£55の出費は免れないらしく、日本円で約1万円が無駄に消えることになった。ちなみにこれは、旅の最後に乗った飛行機でも同じだった。ピンチはなんとか切り抜けられたが、痛い出費である。


とはいえ旅は始まったばかり。こんなところで落ち込んではいられない。まだ英国すら出ていないのだ。


空港の職員の方に案内していただき、眠い目をこすってヴェネチア行きの飛行機に乗った。飛行機の中ではやはり熟睡した。


4 ヴェネチア→ヴェローナ~第3のピンチ



Venezia SantaLucia 駅

Stansted空港から約1時間半で、飛行機は、水の都として有名なヴェネチアへ到着。普通ならこの町でのんびり観光と行きたいところなのだが、今回の真しろの目的はヨーロッパの鉄旅。美しい町でゆっくり過ごしている時間はない。しかもこの町で、真しろは第3のピンチに巻き込まれ、この旅の本当の厳しさを知る。


ヴェネチアの空港には、マルコポーロ空港という別名が付けられている。マルコポーロと言えば、13世紀に『東方見聞録』という旅の記録を書いたことでも知られる人で、日本のことも、「ジパング」として記していたらしい。今、、真しろも、まさに奇々怪々とした旅をしているので、親近感を覚えながら空港に降り立った。


ヴェネチア空港(マルコポーロ空港)

ここからは、ヴェネチアの中心駅である、ヴェネチアサンタルチア駅までタクシーに乗ることになった。タクシーに乗ってみると、運転手の方は英語を少し話すことができるようだった。そうだ!!ここからは英語圏ではなくなるのだと改めて実感する。だが、そんなことは分っていたので、少し気が引き締まったぐらいだった。それよりも真しろが心配していたのはスリだった。イタリアはとにかくスリの被害で有名だからだ。だから言語の問題なんてその時はどうでもよかったのだ。


タクシーは駅の近くに到着したのだが、実際の駅舎にたどり着くためには、橋を渡らなくてはいけないらしい。ヴェネチアは半島の先にある小さな町で、至る所にこのような橋がある。つまり、近くとは言っても、少し歩く必要があるのだ。

タクシーの運転手さんが、橋の架かっているサンマルコ広場の警備員さんと思わしき人を連れてきてくれて、駅まで一緒に行ってくれることになった。しかしこの警備員さんが、なんとほとんど英語を話せない人だったのだ。こちらが、Can you speak English?といくら言っても、彼はイタリア語でしか話をしてこない。とりあえず、駅へ行ってヴェローナ行きの電車に乗りたいと伝えた。しばらく歩くと電車の音がしたので、どうやら駅へは無事に着いたらしい。


ところが、駅に着いてから、彼はしきりに何かを真しろに訴えてくる。いろいろ聞いているうちに、「パギ、パギ」と発音していることだけは分った。修行中に習ったなけなしのスペイン語の知識が正しければ、おそらく彼は何かを支払って欲しいらしかった。加えて彼は、ヴェローナ行きの電車があと3時間後にしか来ないことを英語とイタリア語を交えて訴えてきた。アプリで検索した時刻表によると、電車がすぐ来ることになっていたので、もはや誰を信じていいか分らない状況になった。周りで聞こえてくるのはイタリア語ばかり。これぞ、英語圏の外を1人で旅する厳しさなのだ。真しろが持っているアイテムは日本語と英語、そして、持っているとは言いがたいスペイン語とフランス語の知識だけなのだ。しかたないので、燦々と輝く太陽に、アプリで見た電車が来ますようにと祈った。ついでに、スリに遭わないことも祈った。もちろん祈るだけでなく、精一杯英語で伝えられることは伝えた。


祈りが通じたのか、自分のお目当ての電車が到着したらしい。「パギ、パギ」としきりに叫んでいた警備員さんだったが、最後は電車に乗せてくれた。電車の椅子は意外と狭く、決して座り心地の言い椅子ではなかった。


電車の中は街と違って、意外と英語話者に優しかった。というのも、車内放送は英語とイタリア語のバイリンガル放送だったし、乗り合わせたお客さんの何人かが英語を使えたので、ヴェローナに行くことを伝えられたのだ。そんなこんなで、このピンチもなんとか切り抜けられそうだ。


5 イタリア脱出


Verona Porta Nuova 駅  

イタリア時間、12時半。無事にヴェローナへ到着した。ここから、オーストリアの町、インスブルックへ向かう電車に乗車できればイタリアは脱出できるだろう。ちなみに、これから乗る電車は長距離を走る電車なので、予約がいっぱいの場合は、いくらインターレールのチケットを持っていても、乗ることはできないらしい。


駅員さんが、イタリア語と英語を交えながら今回も案内をしてくれて、なんとか電車に乗車できた。今回乗る電車は、以前真しろが誕プレ代わりに旅行したボローニャから来た電車らしい。つまり、ボローニャもこの近くなのだ。

この電車、真しろは個人的にとても楽しみにしていた。イタリアとオーストリアの間にはいくつかの山があるため、この電車はたくさんのトンネルを通る。加えて、イタリアの公用語であるイタリア語と、オーストリアの公用語であるドイツ語は専門的に言えば、少し違う種類の言語のグループに属するので、簡単に言えば音の響きが変わるのだ。つまり、言語的境界線をもこの電車で超えられるのだ。


とはいえ、ここから3時間の長旅の予定なので、どこまでちゃんと起きていられるか自信はなかった……。


予想通り、この電車はいくつもトンネルを越えて、山沿いを走っていることがすぐに分った。あいにく車窓を解説してくれる人は見つからなかったのだが、恐らくかなり美しい景色を通り過ぎていたのだろう。ちなみに、イタリア側の最後の駅はボルツァーノという駅で、この駅には、イタリア語とドイツ語が両方書かれた看板があるらしい。そして確かに、このボルツァーノを過ぎると長いトンネルがあって、客層も少しずつドイツ語を話す人に変わっていった。そしてそのトンネルの中で、真しろはうとうとし始めた……。


6 おわりに


「あれ? 1日目はまだ終わっていないのでは?」と思っている読者諸氏。その通りである。ここで筆を止めたのは、イタリアを脱出できた安心感を読者諸氏に伝えたかったからではない。この後、さらに恐ろしいピンチが真しろに襲いかかるからだ。それは是非次の記事を読んでいただきたい。


それでは、国境の先でまた。Have a nice day!

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