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【連載2話】妖怪コハクとAIマキナ Call Sign

あらすじ
妖怪とアンドロイドとの出会い。正反対の二人が最強の相棒となり、悪を蹴散らす旅が始まる。

ジャンル・SFファンタジーバトル

【第2話 前途多難】

「へ〜山道を通ってるのって、バスなんだ」
「そうです。運転も少なくなりましたね」

 話しながらマキナさんが伸びてる退治屋一人をバス停まで運ぶとベンチに寝かせた。

 もう一人は担いで人間の町まで運ぶらしい。

 力持ちでビックリしたけど、運びながら器用にバスと車の違いなど色々教えてもらった。

「なんで?」
「安全と人手不足を補うためです──そろそろ行きますね」

 そう言うと町の方へ歩き出すマキナさん。

「あっじゃあマキナさん、またここで。────あっ花束はすぐ用意しますねー…………聞こえたかな」

 こうして短く挨拶を交わして彼女を見送った。

 アンドロイドは、一見人間と同じで不思議な存在だ。僕はそんな未知なる出会いに高揚し、マキナさんの姿が見えなくなるまでずっと眺めていた。

「……はくー、琥珀ー。おい無事か! 人間の居住区に近づくなと言ったろ」
「大丈夫、ごめんタケ。梅ばあの落とし物探してて……」

 茂みの奥から現れたのはタケで、近所の頼れる兄貴。竹色の髪と瞳が印象的だ。

 タケは人間の大人みたいな大きさだから、僕と並ぶと親子だと思われる。

「それなら俺が見つけて渡した」
「そうなの!? 良かった」

 ホッとしつつ悔しい。梅ばあは親代わりで、タケも村の皆も家族のように思っているけど僕を子供扱いするから。

「気をつけろ、最近物騒なんだから」
「危なかったけど平気」
「何!?」

 僕があの村で最年少だから心配なんだと分かってはいる。

「大丈夫だって、都会から来たアンドロイドが助けてくれたよ。人間界って面白いね」

 だから一人前と認めて欲しくて、旅に出ることを決めたんだ。

 幸先が良い────そう思いながらその日はタケと並んで村へ帰っていった。



 マキナさんと別れて次の日。

 僕は出会った場所へタケと共に向かって歩いていた。

「コハク、旅はまだ早いんじゃないか?」
「そうかな。昨日も言ったけど、僕は世界を自分の目で見たいんだ」
「昔と違って妖怪が少ない……その点、ここは安全だ」

 最近はこうしてタケと言い合ってる。心配されてるのは分かってるけど……

「僕は梅ばあが見た世界を──」
「昨日、危険な目にあっただろ。梅ばあも心配してた」

 困った顔で僕を見下ろしているのは、見なくとも理解できた。

「けど梅ばあは旅に賛成してくれた。もう…………この話は止めよう」

 足を速めて待ち合わせ場所へ向かう。

「……それはそうと、本当にアンドロイドが来るのか?」
「たぶん」

 ちゃんと約束はしていないけど、信じて待つ────



 一方その頃、マキナは町の小さなコンビニスーパーでお会計をしていた。

「ありがとうございます。あれ? 高城さんところの……マキナちゃんかい」

 返事はせず軽く会釈だけすると、足早に店を出たマキナ。

 袋を片手に、長閑な田園を歩いて山へ向かっていた。

「……買ってしまった」

 ふと立ち止まると、購入したフライパンを袋から取り出し眺める。

 昨日は子供の妖怪に人間の食べ物とバスの話をした。オムライスを食べてみたいと言っていて……

 そんな彼を思い出していたら、フライパンを買っていた。

 あの時は反射的に彼を助けた。どうして……いや分かっている。また扉が視えて先に進めない。

 時々現れる透明な扉────

 目前の扉に思考が奪われて、手に持ったフライパンはいつの間にか腕と共に下がっていた。

「…………わ、たし──」

 呟いて扉に手をゆっくり伸ばす。

「──あっいたいたー! 貴方マキナさんでしょ。コハク達戦ってるの、助けて!」

 突然の声に現実へ意識を戻された。

 目の前には、スズメ2羽が山の方から勢いよく飛んで来た。

「──とにかく向かいましょう。場所は山?」

 知らせを聞いて走りだすマキナ。

「はいっ! あのっ、退治屋が、コハクとタケが応戦してて、けど妖怪達が縄で縛られて──」

 スズメは慌てて説明しようとして、冷静に走るマキナと対照的だ。

「落ちついて、順をおって説明を。着くまで状況が知りたい」
「はいっ!」



 その頃、コハク達は苦戦を強いられていた。

「──だから、悪い妖怪じゃないってば!」

 青色の狐火を球のように出して投げて応戦するコハク。

「〜〜呪文〜〜」

 しかし、氷の術が絶え間なく鋭利に降り注ぎ防戦になる一方。

「コハク、集中しろ。話は無駄だ。こいつらはダメだ」

 二人組の退治屋に応戦しながら、集中を促したタケの言葉にコハクは考えた。

 ──退治屋は三人。捕えられた妖怪達は縄で縛られてるから助けて、逃げることを優先しよう。……あれ、最初見たとき電話してたような……

「っタケ! まだ他にも退治屋がいる」
「は!?」

 叫んで伝えたが、茂みから現れた三人の姿を確認して更に緊張感が増す。

「おお、正解。昨日の新人に話を聞いてな……なんだアンドロイド居ないじゃないか」

 言い方は余裕を感じさせ、手に汗が滲む。

「ろ、六人……」
「怯むなコハク! まだ若い」

 確かに若い人達だけど……これじゃ多勢に無勢だよ。

 たぶん初めから、妖怪達を捕らえて助けに入る妖怪をさらに背後から回り込んで捕えるつもりだった。

 そして僕らは最初、助けを求められてここに来た……つまりこれは罠だった。

「緑頭に二人行かせろ」

 その人間の言葉にさらに絶望するコハク。

 戦い慣れていない狐火の球は動揺に揺れ外れ、氷の刃がすり抜けコハクへ向かう。

「──コハク!!」

 タケの声が届く頃、氷の刃はコハクの額に迫っていた。思わず顔を逸らそうと目を瞑る。

カキンと高い音が鳴り、顔を上げると氷を弾き返したマキナが立っていた。

「このフライパン、用途多様ですね」


次回【出発】


表紙イラストは、手作りです。
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