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『飛ぶ教室』

”人形が壊れたからでも、あとで友だちを失ったからでも、泣く理由はどうでもいい。人生で大切なのは、なにが悲しいかではなく、どれくらい悲しいか、だけなのだ”


『飛ぶ教室』 著 ケストナー 訳 丘沢静也

この作品こそ、いまの大人と、そして子どもが読むにふさわしい極上の物語。何歳になっても読める=読みたくなる、大人同士、子ども同士、大人と子どものすばらしく深い友情とユーモアが、忘れかけていた温かい人間の心を呼びさます。今回の新訳は初めて大人の目線をはっきりと導入し、軽やかで明晰な話として蘇らせた。訳者・丘沢静也は、長年ケストナーに惚れぬいてきたが、ここにその果実が結晶。(Amazonより)



『図書室のはこぶね』で鍵となる作品。

外国文学を読んだ時にいつも感じることで、カタカナの名前と人物が始めはなかなか一致しないんだけど、この作品は小気味よく読みやすいボリュームで区切られている章を経るごとに、どんどん名前と人物が一致してきてひとつの像になっていく過程が読んでいて楽しかった。

5人の腕白たちがどんどん鮮明になっていき、そして愛着が湧いてくる。

寮という限られた空間でのボーイ・ミーツ・ワールドの物語で、ほんの数日での少年たちの気持ちの揺れ動きや成長が眩しい。

特に、ウーリの弱さへの葛藤と、マティアスのウーリに対する思いやりが好きだった。

ほかの三人も、短所への自覚や逆境に対する折り合いの付け方など、頑張って胸張って背伸びしている様子も印象的。


”心配するなよ。すごく幸せってわけじゃない。幸せだなんて言ったら、ウソになる。けどさ、すごく不幸でもないんだから”


また、冒頭のまえがきを読んだだけだど、脈絡やまとまりがないというか不思議な話なのかなって感じるけど、無理なく自然な流れでその道筋を通りながら物語が進んでいくことに、文章力の凄さを感じた。

海外の物語への入門編としてオススメの一冊。


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