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『終点のあの子』

白でも黒でもない柚木麻子って感じ。

『終点のあの子』柚木麻子


プロテスタント系女子高の入学式。内部進学の希代子は、高校から入学した奥沢朱里に声をかけられた。海外暮らしが長い彼女の父は有名なカメラマン。風変わりな彼女が気になって仕方がないが、一緒にお昼を食べる仲になった矢先、希代子にある変化が。繊細な描写が各紙誌で絶賛されたオール讀物新人賞受賞作含む四篇。(Amazonより)



軽い感じの女性の人間関係でもなく、かといってズドンと落ちるようなドロッとしたものでもなく、小さな希望と小さな悲哀、読後には両方の感情が訪れる。

各々の感情は、他者と比べての悩みや優劣、妬み僻みなどに彩られており、また相手の感情を理解しきれず、「なんでそんな風に思うんだろう」と想像力が足りていない様子が思春期ならではの初々しさと青臭さが表現されている。

個人的には「ふたりでいるのに無言で読書」の保田さんの人間として芯の強さと、その強さゆえ恭子の気持ちが理解できないところがめちゃくちゃ良かった。

新人賞を取った「フォーゲットミー、ノットブルー」だけだと、諦めとわずかな許しを感じるけど、逆の主人公を描いた最後の「オイスターベイビー」を読んだ後にはより救いの感情が出てくる。どちらかが優位とかではなく、お互いに傷つけ合ってたんだということを感じられて、四編通して更に深みが増していく。

作者の幅の広さにまだ驚いている最中なので、もっと読み倒す。

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