『幾千年の声を聞く』
『幾千年の声を聞く』 青羽悠
世界の中心に聳える巨大な〈木〉。人々は枝の上に家を建て、各地から人が集まり、やがて国ができ、文明ができた。だが、他国から〈木〉のもとを訪れた学者は気がつく。
「こんなものは本来、地球に存在しえない」。
この〈木〉はいったい何なのか?
宗教の長となった少女、天文学に人生を捧げる青年、革命組織に身を置く男――
数奇な運命に巻き込まれた人々の叡智と苦悩が積み重なり、やがて壮大な謎が解き明かされていく。
これは力ではなく、知性で世界を変えようとした人たちの、幾千年の物語。(Amazonより)
個人的に難しい本だった。
数年前に『星に願いを、そして手を。』で知った若い才能で、『凪に溺れる』でグッと心掴まれた著者の、初めての青春小説以外の作品。
元から全般的に共感しやすいわけではなく、どこか超然とした思考や真意があり、それらを掴むまでには時間がかかる印象だったけど、今作はその感じが顕著だった。
幾千年もの時間を跨いだ舞台や、巨大な木の恩恵と呪縛という設定は興味を惹かれるしワクワクするけど、どこか自分とはかけ離れたところで物語が進んでいるような、一種ののめり込めなさが常にあった。もちろん、個人的な読解力の問題ではあるけど。
いろんな変遷を経た上での最終章の、「もう死んだようには生きたくない。ちゃんと生きているうちに死にたい」という考えへの帰結で、やっと自分の範疇に収まった感じがあった。
16歳で受賞しまだ22歳。経験と共にこれからも色んな変容を見せていくであろう著者が進み到達する場所が気になってしょうがない。
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