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『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』

鮮烈だった。

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『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』町田その子


思いがけないきっかけでよみがえる一生に一度の恋。
そしてともには生きられなかったあの人のこと――。 大胆な仕掛けを選考委員の三浦しをん氏辻村深月氏両名に絶賛されたR-18文学賞大賞受 賞のデビュー作「カメルーンの青い魚」。
すり鉢状の小さな街で、理不尽の中でも懸命に成長する少年少女を瑞々しく描いた表題作。その他3編を収録した、どんな場所でも生きると決めた人々の強さをしなやかに描き出す5編の連作短編集。(Amazonより)


ハッとするドンデン返しや、涙を誘うヒューマンストーリーや、生々しい妖艶な描写とか、そういうことに振り過ぎるのではなく、あくまで自然な流れで、でもその流れから逃れられない魅力がたっぷりあって、こういうのをセンスいいって言うんだろうな、とふと思った。

各編の繋がり方も大仰なものではなく、基本的には同じ土地に関わる人達の緩い関わりだけで、ウォーリーを探せみたいにどこで関わってくるんだろうなという楽しみもありつつ、その僅かな繋がりが大事な要素を担っている構成も良かった。

それぞれが抱える苦しみや葛藤に対して、決して明快な救いを提示するわけではなく、環境は境遇は変化すれど、あくまで「生き続けていく」ことに焦点を絞った物語は心を撃つものがあった。また、朝井リョウの『正欲』を読んだ後だと、それぞれの決別できない性質みたいなものに対する理解が今までと違ってきていて、改めて貴重な読書体験だったなと実感した。

本屋大賞を受賞したと知って、初めて読んでみた作家だったけど、この世界観というか文章の流れにハマりそうなのでいろいろ読んでみる。

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