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満たされない思いだけを抱いて

ここのところ、わたしの大好きだった本屋巡りがちっとも楽しくない。

せっかく「積読を読んでみよう期間」でいくつか溜まっていた本を読んで嬉しくてもっと読みたい!ってなって本屋に足を運んで新しい子を探すも、どうもどれもしっくりこない。本屋の持つ、カラフルでうるさいほどの情報量がある景色が、むしろすごくのっぺりして見える。

別に、本なんて読まなくたって生きていける。今も十分すぎるほど持っている。それでもいつも「きっと何かいい本と出会えるはず」と思って本屋に行って、衝動買いすることなんて日常茶飯事だった。

こんなことを書きながらも、他の本屋に寄ってみたらまた違うものがあるかなあ、なんて思っている。なんでこんなに本にこだわるのか考えてみると、本はわたしが記憶にないほど幼い頃から没頭するものの中で、特に愛おしいものだからだ。

何かを知りたい、新しいものに出会いたい、そういう思いでワクワクする。それは今も確かにあるけれど、わたしにとって一番大事なことは、本を読むことで今いる世界とは違った世界に没頭することだった。そして、現実のつらいことから逃げられる、いわばどこでもドア。

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幼い頃、新しい本を買ってもらうといつも枕元に置いて寝ていた。寝ているときに本が読めるわけでもないし、朝起きてすぐ読むわけでも、きっと、なかった。それでも、「あたらしいじぶんのともだち」が寝ている時に見守ってくれているようで安心したのだと思う。思えば当時から寝付きはとても悪かった。はっきりと、眠るのが怖かった。眠った世界から、また目覚めてしまうことが怖かった。

ぬいぐるみも眠る時には欠かせなかった。大人になった今でもいくつも持っている。一緒に眠ってくれる子が、朝起きるとすごい格好で転がっていたりする。その状態を微笑ましく見つつ、ふと気づく。本やノートを枕元に置く習慣も全く変わっていない。時には山のように積んでしまっている。わたしのともだち。

それでも、今は眠ることを楽しめるようになった。眠ることを楽しむ、なんて変な言い回しかもしれない。だけど、思考がぐるぐるして眠れなくてどんどんつらいループにはまってきたり、眠りすぎて遅刻したり自己嫌悪したりするのにはもうずっとゲンナリしていたから。

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今日は、苦手なタイプの本もあえて手に取ってみた。わたしは「〜べきこと」みたいな、口調が強めの本があまり好きじゃない。反対に、自分が「いいな」と思う人の本には吸い込まれるように影響されてしまうのだけど。たくさんの主張を横目で見ながら「そうっすねえ」みたいな感想を心の中でつぶやいて歩き回るだけで、何もレジに持っていけなかった。

先月の頭から連載しているアパートメントでの記事が、数時間後にはリリースされる。今回はずいぶん早めに書けた。わたしにとって、どういう形態であっても、お金の動きがどうであっても、「つくる」ことは自分の楽しみだし処世術でもあるので、ざっくりいえば仕事という言葉でまとめていいと思う。だから、今みたいにぽちぽちと打ち込む「文字を書くこと」もわたしの仕事なんだとは、ずっとずっと思っている。それでもまだ、自分の中の「書くこと」の置き場がわからない。書くこと、読むことが、当たり前に自分の中にいすぎるのだと思う。

あなたはだあれ?って、「書くこと」に問いかけるといいのかもしれない。

そういえば美大受験で出題される小論文は独特で好きだった。「青と赤について書きなさい」みたいな問いに、対比とか色々と先生に教わったことを踏まえながら書いていくと、自分で気づいていなかった自分の考え方に気づく。掘り起こしてなかっただけで、そこにあったんだと、形にしてみて気づく。

何かを「つくる」というと、どうも壮大な感じに受け取られてしまうことがある。そんなことないのに、どんな生活にも「つくる」はあるのに、と思ったり言ったりしているわたし自身が、「つくる」ことに抵抗を覚えるときがたびたびある。今まで自分がつくると思っていなかったものをつくろうと急に思うことがあるからだ。

今作りたいもののひとつは、まちがいなく本だ。こんなに「欲しい本」が見つからないのは、自分が作りたいという感覚が強まっているからだと思う。どんな内容にするのか、どうやって売るのか、それとも自分だけの本を作ればいいのか、それはもうたくさんノートがあるじゃない、そんなことを思いながらも、いつもつくりたい衝動の前にはただ諦めて従うのがいいんだと、わたしはそれだけを知っている。

満たされない思いだけ、いつも心に抱えていて、総量は増えたり減ったりする程度だ。寝ていても、起きていても変わらない。今よりもっとやりたいことができるようになっても、きっとまた違う「満たされない」を抱えている。めんどくさいけど、諦めるしかない。

それだけ自分で知っていればいい。溢れすぎる前に、なにかしらの形にしてみる。誰かからヒントをもらう。ものや言葉を通して、体を通して、他にもたくさん、つくることと抱き合える方法はあるはずだから。

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