田邊雅之 彷徨の記憶 -- Thoughts and Thesis.

ノンフィクションライター、ライター、編集、翻訳、コラムニスト、コピーライター。スポーツ…

田邊雅之 彷徨の記憶 -- Thoughts and Thesis.

ノンフィクションライター、ライター、編集、翻訳、コラムニスト、コピーライター。スポーツ、ビジネス、音楽、映画、文化、政治/経済/社会、書評、ルポ、広告、タイアップ等々。様々な仕事をしておりますので、ご遠慮なくお問い合わせください。masa.client@gmail.com

マガジン

  • ジェコが語るW杯初出場、祖国ボスニア、イヴィツァ・オシム

    原題:エディン・ジェコ『初めてのW杯を我が祖国に捧ぐ』  Sports Graphic Number 842号所収

  • 『ウルトラス 世界最凶のゴール裏ジャーニー』著者インタビュー

    『ウルトラス 世界最凶のゴール裏ジャーニー』発売記念。ジェームス・モンタギュー×田邊雅之 特別トークセッション 全3回

  • 「日本が示唆するウルトラスの未来」特別コラム&メッセージ

    『ウルトラス 世界最凶のゴール裏ジャーニー』 著者ジェームス・モンタギュー、特別寄稿コラム

  • サッカーが与える絶望と希望。ティトー、ユーゴ内戦、オシム。

    『ウルトラス 世界最凶のゴール裏ジャーニー』サブテキスト ユーゴ編

最近の記事

  • 固定された記事

ご挨拶に代えて:私はこんな仕事をしてきました

(浅田龍一名義含む。雑誌、Web媒体の記事は膨大ですので、書籍中心のご紹介となります)(多忙のため、最近の仕事はupdate していませんのでご容赦ください) 1:書籍執筆(自著、共著、取材/構成、寄稿)■中卒の組立工、NYの億万長者になる。 ■ファーガソンの薫陶 勝利をもぎ取るための名将の心がまえ ■パーソナルカタカナ語辞典(金田一春彦先生監修。国際政治等の関連項目を執筆) ■ワールドカップ戦記 飛翔編 1994-2002 ■ワールドカップ戦記 波濤編 20

    • 在りし日のオシムを偲んで

      シャイで気難しくておちゃめでおっかなくて、皮肉屋でユーモラスで情熱的。高潔で誇り高く温もりに溢れ、白い球体と酒と日本を愛し続けた哲学者の如きサッカー人。偉大なる人格者にして、不世出の知性でもあったイヴィツァ・オシムへ捧ぐ。 オシムが体現する、豊穣なる矛盾を愉しむ2005年 ナビスコカップ追想サッカーが与える絶望と希望。ティトー、ユーゴ内戦、オシム。ジェコが語るW杯初出場、祖国ボスニア、イヴィツァ・オシム

      • 『億万長者サッカークラブ』東欧編:オリガルヒの台頭 #6「次々と闇に葬り去られていく反体制派 」

        裏切られた期待 プーチンに異議を唱えようとして、命を危うくしたのはオリガルヒだけではない。民間の活動家も、当然のように粛清の対象になる。ロンドンでオリガルヒツアーを展開しているウラジーミル・アシュルコフもその一人だ。  今となってみれば、ずいぶん変な気持ちがするだろうが、アシュルコフにも、プーチンこそがロシアに希望をもたらす人間だと、信じていた時期があったという。 「旧ソヴィエト時代の体制から資本主義へ移行するのは、一筋縄じゃいかない。当時は新たな時代を切り拓こうとする人たち

        • ジェコが語るW杯初出場、祖国ボスニア、イヴィツァ・オシム③(原題:「初めてのW杯を我が祖国に捧ぐ」)

           (前編より続く) 他方、戦争の暗い影と根深い民族対立は、ピッチ上にも実害を及ぼし続けてきた。  ボスニアのサッカー界は、ムスリム教徒のボスニア人、正教徒のセルビア系、そしてカトリック教徒のクロアチア系が混在する国内情勢を反映している。しかも各派がそれぞれ代表を擁立し、サッカー協会の会長を交代制で務める状況が続いていたために、健全な運営がなされずにいた。その窮状に輪をかけたのが、深刻な腐敗や財政難の問題である。  事態を重く見た UEFA や FIFA は、2011年

        • 固定された記事

        ご挨拶に代えて:私はこんな仕事をしてきました

        マガジン

        • ジェコが語るW杯初出場、祖国ボスニア、イヴィツァ・オシム
          3本
        • 『ウルトラス 世界最凶のゴール裏ジャーニー』著者インタビュー
          3本
        • 「日本が示唆するウルトラスの未来」特別コラム&メッセージ
          4本
        • サッカーが与える絶望と希望。ティトー、ユーゴ内戦、オシム。
          10本

        記事

          ジェコが語るW杯初出場、祖国ボスニア、イヴィツァ・オシム②(原題:「初めてのW杯を我が祖国に捧ぐ」)

           (前編より続く)  ジェコの言葉は正しい。サラエボを初めて訪れた人がまず驚かされるのは、あまりにも生々しい戦争の傷跡だ。  建物の壁には弾痕が残り、目抜き通りには人々が突如として命を奪われた場所を示す、赤い花びらのようなレリーフが点在する。そして市街を取り囲む丘陵や山々に並ぶ、おびただしい数の白い十字架。旧ユーゴスラビア解体に伴って発生した3年半の内戦は、20万人の死者と200万人の難民だけでなく、民族浄化なる忌まわしい単語さえ生みだした。   むろん戦争はこの瞬間にも

          ジェコが語るW杯初出場、祖国ボスニア、イヴィツァ・オシム②(原題:「初めてのW杯を我が祖国に捧ぐ」)

          ジェコが語るW杯初出場、祖国ボスニア、イヴィツァ・オシム①(原題:「初めてのW杯を我が祖国に捧ぐ」)

           『ウルトラス 世界最凶のゴール裏ジャーニー』は、世界各国のサッカー界の実像を浮き彫りにするノンフィクションとして、大きな反響をいただいている。とりわけ旧ユーゴ諸国に関する章は、多くを考えさせられるという感想をお寄せいただいた。  私はユーゴ編のサブテキストとして『サッカーが与える絶望と希望』と題したコラムを公開したが、2013年11月、Sports Graphic Number 842号 に寄稿した原稿、イングランドの知人であるサイモン・マロックと共に実現させた、エディン

          ジェコが語るW杯初出場、祖国ボスニア、イヴィツァ・オシム①(原題:「初めてのW杯を我が祖国に捧ぐ」)

          サッカーが与える絶望と希望。ティトー、ユーゴ内戦、そしてオシム。番外編

          読者の皆さまへ 大変な長文、最後までお付き合いいただき、ありがとうございました! 正月前から今日(1月18日)まで他の仕事もせずに、原稿料がまったく発生しない執筆作業に傾注するというのは自分でもいかがなものかと思いますが、多少なりともお楽しみいただけたようであれば幸いです。 原稿ではいろいろ記しましたが、突き詰めて考えると、俗に言う「ユーゴ問題」、「ティトー体制(&サッカー)」、そして「オシムさんが試みたこと」は、下記の5枚のスライドに要約されるのではないかと思います。

          サッカーが与える絶望と希望。ティトー、ユーゴ内戦、そしてオシム。番外編

          サッカーが与える絶望と希望。ティトー、ユーゴ内戦、そしてオシム 9/9

          #9:オシムが蘇らせた、サッカーという名の希望■ティトー、ユーゴ内戦、そしてオシム 語弊のないように断っておくと、ヴェンゲルはネガティブな文脈で発言したわけでは全くない。むしろこの話題が出たのは、サッカークラブやスタジアムが、いかなる役割を果たすべきか、今はやりの言葉で言えば、地域コミュニティにおいて「共創」のハブになる必要があるというテーマを、ホテルでディスカッションしているときだった。 サッカーが持つ社会的な機能は、むろんユーゴ建国の父であるティトーも熟知していた。彼

          サッカーが与える絶望と希望。ティトー、ユーゴ内戦、そしてオシム 9/9

          サッカーが与える絶望と希望。ティトー、ユーゴ内戦、そしてオシム 8/9

          #8: なぜサッカーは憎しみを煽るのか■政治利用されて続けてきたスポーツの大会 ユーゴで起きた一連の出来事は、スポーツと政治の関わりを否が応でも考えさせる。このような話になると、必ず引き合いに出されるのがオリンピックだ。事実、スポーツの祭典は求心力の高さ故に、為政者によって国威発揚やガス抜き(民衆の不満解消)、そして支持率向上のためなどに用いられてきた。ナチス・ドイツ時代のベルリン五輪は代表格だろう。 サッカーの場合は、やはり4年に一度開催されるW杯がこれに相当する。アル

          サッカーが与える絶望と希望。ティトー、ユーゴ内戦、そしてオシム 8/9

          サッカーが与える絶望と希望。ティトー、ユーゴ内戦、そしてオシム 7/9

          #7:オシムが命がけで試みたこと■目の当たりにした交渉劇 ボスニアのサッカー連盟は、今でこそ立派なビルを構えるようになったが、当時は市内にある雑居ビルのような建物に間借りするかのように、小さなオフィスが設けられている程度だった。事実、オフィスには机を置いただけの簡単な受付と、小さな会議室がいくつかあるのみ。日本に例えるなら、個人商店の事務所程度といえばイメージしてもらいやすいだろうか。 建物の外でしばらく待っていると、アタッシュケースを持ったUEFAとFIFAの使節団が

          サッカーが与える絶望と希望。ティトー、ユーゴ内戦、そしてオシム 7/9

          サッカーが与える絶望と希望。ティトー、ユーゴ内戦、そしてオシム 6/9

          #6: ボスニアを襲った新たな危機■ジェフユナイテッド、そして日本代表の監督へ 以降の歴史はご存じの通りだ。 オシムはユーゴ代表とパルチザンの監督を辞した後、ギリシャのパナシナイコス、オーストリアのシュトルム・グラーツを経て、2003年にジェフユナイテッド市原・千葉(現:ジェフユナイテッド千葉)の監督に着任。「オシムチルドレン」と称された選手たちを鍛え上げ、格上のガンバ大阪をナビスコカップで下してみせる。 さらには代表監督にも起用され、日本サッカーそのものの躍進と成熟を図

          サッカーが与える絶望と希望。ティトー、ユーゴ内戦、そしてオシム 6/9

          サッカーが与える絶望と希望。ティトー、ユーゴ内戦、そしてオシム 5/9

          #5: そして「東欧のブラジル」は消滅した■W杯90年大会で披露したポテンシャル 皮肉なことに、ユーゴサッカー界の頂点に立つ代表チームは、モザイク国家の脆さを体現する存在にもなっていた。それは選手の「国籍」を見ても簡単に理解できる。テクニックやスキルのレベルがきわめて高く、攻撃的なサッカーを展開する「東欧のブラジル」は、セルビア(ストイコヴィッチ等)、クロアチア(ボバン等)、モンテネグロ(サヴィチェヴィッチ等)、ボスニア(スシッチ等)、マケドニア(パンチェフ等)、スロベニア

          サッカーが与える絶望と希望。ティトー、ユーゴ内戦、そしてオシム 5/9

          サッカーが与える絶望と希望。ティトー、ユーゴ内戦、そしてオシム 4/9

          #4:サッカーという名の「劇薬」■サッカーという名の「劇薬」 ただし、ユーゴにおけるサッカーは、社会の統合装置としてのみ機能したわけではない。実際には、モザイク国家を解体に向かわせるような危険と背中合わせの「諸刃の剣」であり、一種の「劇薬」だった。 その事実はクラブチームに目を向けると、より明らかになる。象徴的なのは、クロアチアのハイドゥク・スプリットのウルトラス、トルツィーダだろう。 トルツィーダは1950年に結成。ヨーロッパで最初に登場したサポーターグループとして、

          サッカーが与える絶望と希望。ティトー、ユーゴ内戦、そしてオシム 4/9

          サッカーが与える絶望と希望。ティトー、ユーゴ内戦、そしてオシム 3/9

          #3:建国の父がサッカーを選んだ理由■サッカーを巧みに活用したティトー ユーゴ建国の父、ティトーがサッカーに目を付けた理由はいくつかある。まずサッカーは、バルカン半島でも最も人気のあるスポーツとして定着していたし、東西陣営を問わず、ユーゴの新生国家の対外的なイメージを向上させる上でも有用だった。現にティトーは「サッカー外交(親善試合を通じた国際交流)」を駆使し、外貨獲得の手段としても用いた。 だがサッカーが推進された背景には、それ以上に大きな大義名分がある。もともとサッ

          サッカーが与える絶望と希望。ティトー、ユーゴ内戦、そしてオシム 3/9

          サッカーが与える絶望と希望。ティトー、ユーゴ内戦、そしてオシム 2/9

          #2:危険で壊れやすいモザイク国家■6つの共和国、5つの民族、4つの言語、3つの宗教、2つの文字を持つ、1つの国家 ただでさえ複数の民族が勢力争いを繰り広げていた場所に、様々な帝国や西欧列強が絡み、さらに状況を不透明で混沌としたものにする。バルカン半島は、昔から常にいくつもの火種を抱えてきた地域だった。 その中央部で1943年に建国されたのが、「ユーゴスラヴィア民主連邦」である。同国は後に「ユーゴスラヴィア連邦人民共和国」(1946年成立)、「ユーゴスラヴィア社会主義連邦

          サッカーが与える絶望と希望。ティトー、ユーゴ内戦、そしてオシム 2/9

          サッカーが与える絶望と希望。ティトー、ユーゴ内戦、そしてオシム1/9

          #1:なぜユーゴはわかりにくいのか?■『ウルトラス』に寄せられた多様な感想と、共通する意見 「この本は本当にやばい」「サイモン・クーパーが書いた『サッカーの敵』以来の、本格的なノンフィクションですね」 昨年11月に出版した『ウルトラス 世界最凶のゴール裏ジャーニー』は予想以上の反響があった。イタリア在住の碩学である片野道郎さん、ノンフィクション作家の宇都宮徹壱さんなどからご推薦のお言葉をいただいたのは、望外の喜びだ。またサッカーファンに限らず、一般の読者の方々からも、多く

          サッカーが与える絶望と希望。ティトー、ユーゴ内戦、そしてオシム1/9