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「お金を使うと景気は良くなる」は本当か(GDPとは何か、その1)

GDPをエラい人に怒られるくらいザックリ定義

GDPというのはGross Domestic Productの略、日本語でいうと国内総生産のことです。

いきなりムヅカシーですね。怒られるくらい簡単にいうと、国内で(個人事業主ふくむ)企業が稼いだお金の総額、これがGDPです。怒られないようにもっと正確に書いてもいいのですが、いきなり難しくなるので今はやめておきます。

とはいえ、数え切れないくらいある企業の稼いだ額を計算するのは大変です。そこで、こう考えます。

稼いだお金は、(経済学では)必ず1銭残らず使われます(と考えます)。お金を使うこと、つまり「支出」は、無数の企業が稼いだお金よりは、はるかに計算しやすいので、とりあえず支出をもとにGDPを計算します。

支出は、消費と投資からなります。よって、仮に政府という税金ドロボーが存在しなければ、GDPはこういう式でザックリと表現できます。

GDP=消費+投資

おーい、貯蓄はどこいったんだー、という人もいるでしょう。ここもザックリ、

投資=貯蓄

と考えるので、最初の式は成り立ちます。

貯蓄は、銀行に預けられたあと、企業に貸し出され、機械や土地購入、店舗や工場建設といった投資費用にあてられます。そのため、投資と貯蓄はイコールと考えます。

タンス預金は……とりあえず、ここでは、細かいことは脇に置いておいておきます。

消費と投資の違いは何でしょう。これも怒られるくらいザックリいうと、投資以外の支出が消費、と思っておいてください。儲けるための支出は投資、それ以外の支出は消費です。

そんなこというと、本を買うことは儲けるためだからやっぱり自己投資? という人もいるかもしれませんが、今は、その正誤もふくめて、脇に置いて話します。

税金ド◯ボーこと政府の活動をGDPに反映させてみる

さて、

やっぱり税金ドロボーの政府を、GDPに含めないわけにはいきません。政府は税金(租税)を徴収して何かしらに使います。われわれが稼いだお金を勝手に使うのですから、それについてどうこういう権利こそが、国民の基本的な権利、言論の自由というやつです。それはさておき、政府がお金を使うこと、つまり政府支出を最初の式に入れると、

GDP=消費+投資+政府支出

となります。

で、

ごめんなさい。じつはここまで、鎖国、ないしは、どの国からもまだ見つかっていない自給自足経済の国のことを念頭にいれてお話をしていました。大変申し訳ありません。

国は、別の国と交流し、貿易します。それを含めた式が、下のものです。

GDP=消費+投資+政府支出+輸出−輸入

輸出は、国内で作ったものによって稼いだお金なので、含めます。輸入は、すでに消費のなかに入っているので、差し引きます。

輸出−輸入のことを「外需」、もうちょっと専門的には「純輸出」といいます。それ以外の支出が「内需」です。

「かつて日本経済は外需主導だった」という言葉を簡単に翻訳すると、「かつて日本は輸出で儲けていた」ということになります。

「アメリカの呼びかけに応じて内需を拡大しよう」という言葉は、「アメリカさまのご要望により、あちらさまからの輸入を拡大して、外需を減らし、内需の割合を増やそう」というふうに翻訳できます。

いちおう完成したGDPの式をもう1回書きます。

GDP=消費+投資+政府支出+輸出−輸入

輸出と輸入について話すと複雑になるので(また)脇に置いておきます(置きすぎだ、という人には、それなりの価格の本を買って勉強なさることをオススメします)。

景気が増える「ただしい経済のまわし方」

上の式から、消費、投資、政府支出を増やすとGDPが増えることになることがわかります。

だから「『酒類を提供する飲食店』でお金使って経済回そうぜ、景気良くなるよ」というのは、間違いではありません

ですが、それでお金を稼いだお店(これも企業です)が、そのお金をほとんどを、仕入れや光熱費、人件費などに使ってしまうようでは、つまりもっぱら消費ばかりにつぎ込んでしまうようなら、それほど景気はよくなりません

しかし、そのお金の一部を、たとえば新しい機械や設備、たとえばこれまでより容量の多い製氷機や、今までよりフカフカで、居心地の良さからお客がついお酒をもう一杯、となるような椅子を買ったりする、つまり投資に回すと、これまでより儲けが増えていくので、景気は消費の拡大のみによるより、はるかに良くなります

ただ、時にはお金が足りなかったりするでしょう。あとちょっとだけ売上があれば椅子が買えるのに……そんな資金を貸してくれるところが銀行です(もちろんテメエが儲けるためですが)。銀行から椅子購入のため借金するときの利子、つまり金利が低ければ、銀行からお金を借りる企業は増えます。その結果、国内の投資はさらに増え、景気をよくすることができます。こうしたことを司っているのが日本銀行などの中央銀行です。

一方、政府支出も景気拡大につながります。そしてここでも、政府による投資(公共投資)を増やしたほうが、景気にはいい影響をもたらします

たとえば橋を作ることは公共投資です。それによる移動時間の短縮が、経済を効率化させ、企業の儲けが増えるからです。それにくらべると基地建設は投資ではない……いや、基地ができれば周辺にお店ができて儲かったりするから投資だ、と言えなくもないかも知れません。どっちにせよ、まとめて政府支出です。

で、そのうち投資効果の高い支出、つまりお金を使うことで企業の儲けが増える支出が景気にはよい、ということになります。

ものを作るだけではありません。銀行からお金を借りるのが難しい零細な個人経営のお店などに資金を貸すことも、そのお店の儲け拡大につながるので、投資です。「政府系金融機関」というのがありますよね。

ということで、タイトルにあった、「お金を使うと景気が良くなる」という考えは、間違いではありませんが、絶対そうなるわけではありません。そのため、こうしたことを理解したら、次は自分が正しいお金の使い方(投資つまり貯蓄も含めた)をしているか、そして、政府もそうしているか、それを見極める力を身につけることが、人として、そして国民または納税者として、必要になるわけです。

次回は、「お金を使う」のうち、「消費」について、お話していきます。

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