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2024年9月6日(金)「醗酵飲料・アイラグ(馬乳酒)」

今日の東京は晴れ。
朝方の最低気温は23.5℃、日中の最高気温は34℃迄上昇。久々に最高気温が猛暑日近く迄上がりましたね。こうなると、流石に暑い。さて、

昨日は「二十四節気・『立秋』と『処暑』の時季のメニュー(案)」についてお届けしましたが、本日は「醗酵飲料・アイラグ(馬乳酒)」について書いて行きたいと思います(冒頭写真はコチラから拝借しました。「フフル」と呼ばれる馬乳酒を造る為の牛皮製容器です)。
 
以前「醗酵食品・モンゴルの白い食べ物」でこのアイラグ(馬乳酒)についても少々触れたコトがありましたが、もうチョット詳しく。

モンゴルで遊牧民に飼われている家畜たちは、大抵春頃に仔を産み、夏の間中に乳を与えて厳冬期に備えて冬に耐えられるだけの大きさにまで育てます。
従い、モンゴルの短い夏がその季節である大体6~9月頃が授乳期(?)にあたり、その頃盛んに搾乳を行って、各種の「白い食べ物」を作っては夏場の主食にしたり、冬に備えた保存食にしたりしてます。
主には牛やヤク、羊や山羊の乳を搾ってますが、馬の乳も搾ります。コレが馬乳酒の原料。
伝統的な方式に則れば、搾った馬乳を冒頭写真の「フフル」と言う牛の皮で作った容器に入れ、何千回、何万回と攪拌する。この攪拌により、ゲルの中やフフルに棲み付いている乳酸菌と合わさって醗酵が進み、馬乳酒が出来上がると言うワケであります。日本酒の蔵に棲み付いている乳酸菌を取り込む「生酛造り」ってのがありますが、モンゴルの遊牧民はゲルの中で生酛造りをやっていた!なんて中々オモシロいですよねぇ。しかも、ゲルに棲み付いている乳酸菌は夫々のゲルによって多少の違いがあるようで、ソレがまた各家庭(ゲル?)の馬乳酒の味わいの違いになっているってトコロがコレまた面白いですね。
そして、この馬乳酒は大量生産が出来ないと言う点もオモシロいです。そもそも、馬の乳なんて搾乳用に育ててる牛とは違ってそうそう沢山取れるモノでも無いし、醗酵させる為には上述のような手間暇も掛かっているので、現在でも基本的には各遊牧民のゲルで造られていて、ソレを買い集めて来てはペットボトルに詰めて売っている業者が少々いる程度のようです。
世界で唯一の動物性由来のお酒であると言う点も良いですねぇ。

では、ナンで牛乳ではなくて馬乳で酒を造るのか?
以下成分表をご参照下さりませ。馬乳ってのは牛乳や羊乳に比べるとタンパク質と脂質が低く、糖質の含有量が高いんですね。酒を造るには糖化と言うプロセスが非常に重要になって来るので、糖質の多い馬乳が酒造りには向いている、と言うコトになります(あれ?馬乳よりも人乳の方が糖質含有量は多いので、人乳酒も出来るってコトになりますね(笑))。

確かに、馬乳の糖質含有量は多いですね。

以前京都の酒蔵である玉乃光酒蔵さんが「クムイス」と言う名の馬乳酒に似たモノ(恐らく牛乳酒)を製造・販売してました。コレは中央アジアのカザフスタンやキルギスタン辺りの遊牧民が馬や牛、ラクダや羊の乳から造っていた乳酒(クミスとも)を製品化したモノであったようです。確かに、30年位前に大手町にある玉乃光酒蔵直営の居酒屋さんで飲んだコトありましたね(笑)。今はもう造っていないとのコトで、残念です。
カルピスってのも、元々は創業者のお方が内モンゴルを訪問して飲んだのがその起源であるとの説もあるようなので、意外と馬乳酒も日本人にとっては身近なモンであったのですね。

で、遊牧民の造るアイラグ(馬乳酒)はどんなモンなのか。
アルコール度は2%前後と低いので、モンゴルでは子供も飲んでいる位だし、完全食であってコレさえ飲んでれば他のゴハンは食べなくても過ごせるモノらしく、モンゴルでは夏場に何ℓものアイラグだけを飲んで過ごす大人もいるのだとか(そんなに馬乳って搾れるんかい!と言うツッコミは無しで(笑))。

飲んでみたら、カルピスほどは優しくなく、乳酸醗酵しているだけあって割と酸味の強い飲むヨーグルトみたいなカンジでしょうか(と言っても、上述の通り造られる各ゲルによって味わいは異なるので、一概に言えるワケではありませんが)。醗酵中なので、シュワシュワとした微炭酸もある感じですね。慣れれば、美味いモンです。ガブガブ飲めちゃう。
ただ、旅行者など初めて飲むヒトはほぼ必ずと言って良いホド、腹を下す。そりゃあ、ゲルの中で醗酵させて造られてるモノなので、当然殺菌処理なんかされてません。ほぼ無菌状態の日本人がその手のモノを飲めば、ヤラれますわな。でも、大丈夫。多少ハラを下す程度で、それ以上のコトにはならない(と思う)ので。自分も何度も経験してます(笑)。

と言うコトなので、日本でホンモノのアイラグ(馬乳酒)を飲むことは多分出来ません。飲みたいヒトは夏のモンゴルに行くしかありますまい(玉乃光酒蔵さんがクムイス造り続けてくれてたら、類似のモノは飲めたのですが…)。
流石にコレだけはお店じゃあ出せませんね。

今週はコレにて。
来週は明日から新たな節気に入りますので「二十四節気・『白露』の時季のメニュー(案)」についてお届けする予定です。
週末もあまり天気は良さそうじゃないですが、良い週末をお過ごし下さりませ~。

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