タイでのエピソード・その26
—その25の続き—
「…何だ、これ…」
私はその動画に見入った。脳を揺さぶられる感覚に陥った。
その動画によれば、実はこの世界は平面大地の上にあり、「柱状節理」と呼ばれるものたちは全て、過去の巨大植物の成れの果てだと言うのだ。
昔の動植物は全て、大きくて頑丈、かつ長寿だった。
その証拠を「ここぞ」と言わんばかりに提示してくる。それらの証拠は、聖書の内容を正当化するには十分過ぎた。
私はその動画のあまりの説得力に、何一つ疑わず、その全てを真実として受け入れてしまった。
自然と今までの人生を振り返る。今までの私は一体、何だったのだろう。なぜ私は生まれ、生きているのだ。
何よりも、なぜ…
なぜ誰一人、ここに疑問を持たないのだ?皆、狂っている…。
私は今まで社会の外に放り出されていた。まるで適応出来ない。故に、私自身がクレイジーだと思っていた。だが…真にクレイジーなのはどっちだ?
私ではなく…この世界の方ではないのか…。
皆、そんな事も考えず、ただひたすら毎日を過ごしている。
この世に適応すべく教育され、釣りやらゲームやら音楽やらスポーツやら、自分なりの趣味を満喫し、時にギャンブルや酒に溺れ、世の不満を謳い、出会いや別れに一喜一憂し、恋愛をし、セックスをし、子を育み、たかだか数万円のカネとローンの為に命を削って働き、時に数億円と言う夢を抱き…結局何も理解せぬまま、わずか80年前後と言う短い時間を、まるで線香花火の様に散らして逝くのだ。
いつも歩いているはずの散歩道が、まるで違って見えた。
側から見れば、私は恐らく徘徊している老人の様だったに違い無い。
それほどまでにその動画の衝撃は大きく、私の正常な思考を奪った。
薄暗い夕方の空に、星が見え始めていた。
それらを見て、改めて私は思った。
…この世とは?
居ても立っても居られなくなった私は、仕事の合間に本を書き始めた。
内容はイルミナティ・フリーメイソンの陰謀と、巨大樹や巨大生物のことについて。
仕事の合間に色々調べていた私は、少なくとも一冊の本を書き上げられるくらいの知識はあったのだ。
時に自宅で、時に近場のカフェで引きこもり、仕事の合間に狂った様に書き綴った。まるで、それらの情報を脳に焼き付けるかの様に…。
今思えば、あの経験は間違いなく、今に活きている。
その本の題名は「コルカノ・ムシュマデ」。
君が代の「苔のむすまで」のヘブライ語だ。最も知られる訳は、「全地に響き渡る」。
さらに掘り下げると「全ての基は、キリストにあり」となる。
私はすっかり動画の影響を受け、聖書に感銘を受けてしまった。
元々ダーウィニズムに懐疑的だった私は、この時点で「この世は神によって作られた。少なくとも、創造主は存在している」という確信を持った。
書き上げた本のボリュームは、PDFファイルにして約240ページ分ほど。
試しに私の知り合いにタダで提供したが、皆、最初の数ページにだけ目を通し、最後まで読まなかった。
…ここから私の長い長い旅が、本格的に始まる事になる。
—その27へ続く—
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