タイでのエピソード・その27
—その26の続き—
フラットアースにすっかりハマった私は、身の回りの知人にも積極的にこの話をしてみた。
だが…誰一人として興味を持たない。
別に押し付けるつもりも全く無いのだが、ごく一部を除いて皆、鼻で笑う様な態度を取った。
私が病気なのか?何も考えずにカネを稼ぎ、結婚してローンを組み、ただただ生きるのが正解なのか?
もしくは、こいつらが病気なのか?
…私が病気である事を願う。
じゃなきゃ…
この世は地獄そのものじゃないか。今まで私は、こんな奴らに囲まれて生きてきたのか。
一人だと見せて実は一人じゃない。そりゃそうだ…人間は一人じゃ生きていけないのだから…ずっとそう思っていた。
だが…フラットアース理論すら全く受け入れてもらえないその実情を客観的に観察するに…どうやら私は、私が思っている以上に一人…いや、「独り」だった。
「…こうなりゃ、誰に理解されなくてもいい。俺は俺の信念を貫いて、ずっとこの分野を掘り下げてやる。」
簿記?宅建?プログラマー?なんだそりゃ。その知識は次の世界で役に立つのか?
心から理解した。クレイジーなのは私じゃ無い。
残念ながらどうやら…この世の方だ。
…そりゃあ、現実よりもゲームの方がよっぽど楽しいわな。
私はその頃、スポーツジムで出会ったパチプロの話に乗り、パチプロ組織に入ってパチンコ店で稼ぐスキルを身に付けていた。
その辺の田舎サラリーマンよりはずっと稼ぐことが出来たと思う。だが最終的に言って、私の元々持っていたライティングの技術よりは稼げなかった。
仕事は、あった。だが稼いでも心は満たされなかった。
変わらぬ人生、変わらぬ現状。ずっと実家にいるのも飽き飽きしてきた私は、ついに三回目の渡タイを決意する。
実はその頃、既に人生に…と言うかこの世にほとほと、絶望していた。
別に極端に鬱とやらになったわけじゃない。純粋にこの世に失望しているのだ。さっさとおさらば出来るのであれば、そうしたい。この釧路って街にはクズしかいない。ついていけん。
かと言って東京にも興味など無い。故に、行くとしたら慣れているタイだ。
そう決めた私は、タイ語の教科書を購入し、改めて文字から勉強した。
大体、三週間ほどで読み書きが出来る様になった。よし、これでさらに快適に過ごせる様になったはずだ。
あとは…カネだけだな。
すぐにでも飛び出したかったが、その頃の私は一身上の都合でカネが無かった。
私は財布に入っているカードの枚数を確認した。そして…ATMへと走った。
返すアテも無い借金を作り、私は家を飛び出す。
こんなクソ田舎に…いや、こんな人生には何の未練も無い。
故に、一方通行だ。
その時の私は本気で…海外で生き、海外で死んでやろうと思った。
私を陵辱しかしなかったこの土地も、親・家族にも…私の骨は遺さない。
それが最大の復讐になると思ったのだ。
ワケの分からん所で生き、ワケの分からんまま死んでやる。ざまぁみろ。
…ひと束のカネを握りしめた私は、早速チケットの手配を始めた。
—その28へ続く—
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