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タイでのエピソード・その64

その63の続き—

「やっぱりムリですか?」

「うん、ムリだね。押されるよ、確実に。」

「そうですか…分かりました。まぁ仕方ないので、押されるの覚悟で参加します。」

私とバスツアー担当者であるT氏との会話だ。

今回、渡タイしてから5回目の観光ビザ更新になる。

徐々に厳しくなりつつある観光ビザの取得において、「5回目で赤ハン(青ハン)を押される」のはもはや確実だった。その手の情報はこのT氏に確実に入ってくる様になっているし、間違いあるまい。

それでも、エリートビザやその他のビザの取得のアテが無い私は、観光ビザに賭けるしかなかった。

まだハンコを押されていないので、今回取得出来るのは間違いない。だが、今回ハンコを押されてしまったら…次回は取得できない。つまり、もう3ヶ月しかタイに居られない事になる。

世話になった…この街には本当に。7年ほどの歳月を経て、あらゆる意味で私を成長させてくれた。

結局、目指した「成功者」とやらにはなれなかったが…でもまぁ、もう少し遊びたいという気持ちはある。文章を書いている今でも、たまに遊びに行きたいと思うくらいだ。

セカンドライフには最高の場所だよ、本当に。某ウイルスさえ無ければ、ね…。

いつも通り、例の駐車場に集まり、ツアーに参加する。もはや手慣れたものだ。私もすっかり、「常連」である。

半日かけてラオスの国境へ。ビエンチャンに行き、ボロホテルで一泊。

何も無い街を適当にブラブラ。ツアー参加者と他愛もない話をして、時間を潰す。

次の日、タイ大使館から受け取った私のパスポートには…

しっかりと、赤いハンコが押されていた。

来たか…ついに。覚悟していたつもりだけど、実際に押された時はショックだった。

タイ人の気質的に、履歴なんかいちいち調べない。なので、ぶっちゃけパスポート更新と重なれば、どうとでもなる。要は新しいパスポートになってしまえば、実質そこからまた3〜5回は取得可能なのだ。

だが、私のパスポートにはまだまだ、余白が残されていた。

更新するにも、出来ない。

観光ツアーを終え、いつものコンドミニアムに戻ってくる。

初めてここに来た時の感情が込み上げてきた。

「ああ、ようやくまともな暮らしがタイで出来る…。どんな形であれ、俺の力でスタート出来るんだ。これから頑張るぞ!」

…的な、ね。

もはや涙も出ない。あの時、詐欺に遭わなければ…今頃とっくにエリートビザを取得し、余裕こいてたはずなんだが…

人生に「たら、れば」は、無しだ。

さぁ、どうしよう。帰るところも無いしなぁ。かと言って、東京あたりに住むほどの蓄えも無い。

何より…

まだまだ、名残惜しい。こっちに来てこの1年半は、ほぼほぼ仕事しかしなかった。最後に少しは遊ばせてくれよ(笑)。

…まぁ、まだ3ヶ月あるわけで。この間にどうすべきか、考えるか…。

ヤケになって酒を飲み、風俗に浸り、とことん散財……

…するでもなく、私はいつも通り、案件を確認して仕事を続けた。


—その65へ続く—

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