タイでのエピソード・その52
—その51の続き—
私が買い集めたXRPは、それなりの量になっていった。遊びもせず、娯楽の誘惑にも負けず、ただひたすらに睡眠時間を削って円を稼いだ。
そして、その分をXRPに突っ込んだ。毎月、生活が圧迫されるかされないか、ギリギリのラインと言えるカネをXRPに突っ込んだ。
XRPには将来性がある。絶対に、上がる時が来る。それまではガチホ。
そして…ついにその日はやって来た。
XRPの価格が20円そこそこから80円以上まで上がったのだ。
既にタイに来てから長い時間が過ぎていた。3回ほど観光ビザの取得を繰り返し、そろそろ一年が経とうとしている頃の出来事だった。
「よし…巻き返せる!」
大きく資産を増やした私はガッツポーズをし、エリートビザ取得に向けて躍進した。
もう取得出来るだけの資産を手に入れたが、ここでエリートビザだけにぶっ込んでしまうと、その後の資産が心もとない。
そこで、ここで増やしたカネをもう少し増やし、余裕が出来てから取得しようと思った。幸いにも、まだまだ観光ビザの取得は出来そうだったからね。
目標としていたエリートビザ。もうすぐ、手に届く。もうすぐだ。焦る必要は無い。少なくとも、通常の観光ビザが取得出来なくなってからでも遅く無い。
これからの資産を増やすために、私は某YouTuberが提案したプロジェクトに着目した。
そのプロジェクトは「リバースプロジェクト」と言うもの。提案者は「ビットパンダ」と言う名のYouTuberだった。登録者も結構いたし、有名だったと思う。
仮想通貨を真面目にやっていた人なら、知ってるのでは?
彼が持ち出したそのプロジェクトは、簡単に言うと「FXトレードをメインとした自動売買ツールを用いて、人生の大逆転を狙う」といったものだった。
この業界は詐欺が多い。それは重々分かっている。しかし、彼は信用出来ると思っていたのだ。何度もラインでやり取りをしたし、人格者だと思い込んでいた。
だが…今思えば、疑うべきポイントは沢山あった。
パンダの仮面を被って素顔を見せない。
「ビットパンダ」と言う既存のオーストラリアの取引所と同じ名前にしている(詐欺を働いた後、逃げるのに役立つ)。
以前、「今、バンコクにいるのですが…」とか話しながら動画をアップした際、窓の風景を見せなかった。
私が「バンコクにいるのですか?私はオンヌットなので、近くに来たならお会いしましょう!」と言ったら、「ちょうどその辺を通ったところなんですけどね」と言う、当たり障りのない返事が返って来た。
何が言いたいかって?
…そう、騙された。
彼は一人ではなく、複数で動いていた。今回のプロジェクトで提供する「商材」の提供者とやらも、最初から彼とグルだったのだ。
この商材も、提供している会社も…全て実体が無い。詳しく調べてみて後で分かったのだが、詐欺グループとして有名な某事務所がアジトだった。
参加費として、ほとんどのXRPを彼に支払った。微塵も疑わなかった。
その後、面白いように自動売買ツールは負け、私の資金は瞬時に吸い取られた。
…まさか、タイの詐欺師たちを見抜く目を持っていながら、ネット上で詐欺に遭うとは。無知とは恐ろしい。
訴えれば良かった?ははは、そんな元気は無かったよ。
ここまでのエピソードを思い出してくれ。
私がどれだけの覚悟で動いた?
どれだけの物を捨てた?
どれだけの数、失敗して立ち上がった?
…流石にもう、立てない。心からそう思った。
ビザもそろそろ継続出来なくなる。カネも無い。帰る場所も無い。
異国の地で私は…今度こそ崖っぷちまで追い詰められた。
—その53へ続く—
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