タイでのエピソード・その46
—その45の続き—
オンボロ観光バス…もといハイエースは、順調にラオスへと向かった。
夕方の18時頃に出発し、到着するのが大体朝の4時くらいだから…約10時間はこのクソ狭い車内で我慢する事になる。
うーむ…拷問だ。音楽を聴き、ところどころで仮眠をし、何とか時間が過ぎるのを待つ。
周りと話が出来れば良いのだが、今日会ったばかりで気まずく、なかなかその空気を作れない。なので観光ビザツアーの「行き」の車内は基本、静かだ。
…のはずなのだが、先ほど図々しく話しかけて来た初老の男「K」は、唾を飛ばしながら周りに積極的に話しかけている。胡散臭い…話しかけられている人も、迷惑そうだった。
途中、給油も兼ねてコンビニのある広場で15分程度の休憩を挟む。この休憩ポイントが5,6ヶ所ほどある。まずはその1ヶ所目に到着した。
休憩ポイントで、今回唯一の女性に話しかけてみた。もう、これくらいしか楽しみ方を見出せん(笑)
「こんにちは」
「あ、こんにちはー!」
元気で気さくな、感じの良い子だった。国籍は日本人なのだが、話によると日本人の母と韓国人の父とのハーフらしい。
「タイの東大」と言われるトップの大学、チュラロンコーン大学に通う大学生とのこと。頭良過ぎやん…英語もタイ語も韓国語もペラッペラ。
彼女、色々あって国籍は日本らしく、やはり滞在にはビザが必要なのだそうだ。卒業間近で、それと同時に学生ビザも切れる為、仕事が見つかるまでの繋ぎとして観光ビザを取得するらしい。
繋ぎで、か…。そう、まさにこれが「健全な」観光ビザの使い方である(笑)。
私の様に、日本から逃げるために取得するのはおすすめしない。
って、尤も…
私を含め、彼女以外のほぼ全員が、そういった「やましい理由」で取得しようとしているはずだが…。むしろ、先ほどの彼女の方が、レアパターンなのだ。
そんなスーパー学歴な彼女に劣等感を抱きつつ、それでもすっかり仲良くなった。うーん、私は孤独が趣味みたいなモンなんだが、人と仲良くなる事自体は苦手じゃないのかもしれん。
名前は…忘れちゃったな…何て言ったっけ。ちなみに彼女はタイのロックバンド、「StarBox」のボーカルという側面も持っていた。
今はもう、活動してないみたいだけど。ここまで気合いの入ったPVを作るくらいなら、頑張って欲しかったんだけどな。タイにいる間、ずっと応援していた。まぁ、色々あったのだろう。
とにかく、彼女は歌うのが大好きみたいだった。「出来れば最後にはボーカリストとして…」と言う夢を抱いていた。
今はどうしているのだろうか。その夢が叶っている事を願いたい。
…とまぁ、この様な思わぬ出会いがあるのも、この観光ビザツアーの面白い所の一つだったりする。実は、ツアー自体はそこまで嫌いじゃないんだよ。
時間、カネ、そして気持ち…ここに余裕があれば、心から楽しい旅になったんだろうなぁ。
トイレを済ませ、コンビニで軽食を買い、一同はまたバス…て言うかハイエースに乗り込んだ。
—その47へ続く—
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