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タイでのエピソード・その19

その18の続き—

私が今回、改めて住み着いたのはラチャダーのソイ7(通称・ソイナトン)。

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タイの性風俗に詳しい人からすれば、「好きだねぇ」って感じだろう。

...そう、ラチャダーのソイ7近辺は、バンコクでも有数の「お風呂街」だ。

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同僚にここを紹介してもらう時、「マサヤンさんにピッタリの所かと思って(笑)」と言われた。おいおい、私はどんなイメージを持たれているんだ。

まぁ...間違ってないけどな!(笑)英雄、色を好む(と言う言い訳)。

その頃のタイバーツは特に安く、円がまだまだ強かった。日銀の「黒田バズーカ」が炸裂した頃である。

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よって、円で稼げば稼ぐほど余裕が出てくる状況。アパートの隣にも一軒あるし、遊ぼうと思えばいくらでも遊べる環境だ。うーん、苦しゅうないぞ。

それにここは、以前に比べても「天国」と言って良いほど住み易かった。歩いて10分以内の所にMRT(地下鉄)もあるし、どでかいデパートもあれば、お馴染みビッグCもある。

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加えて、何と言ってもこの付近には屋台が豊富だった。

お世辞にも健康的とは言い難いが、激安で済ませる事が出来るタイ料理屋、お酒と音楽を楽しむ事が出来るバーもあり、目の前にはセブンイレブンもあった。

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...改めて、S氏がいかに他人を誘導するのが下手なのかを理解した。前の俺は何故、あんな苦労をしなきゃいけなかったんだ...。

苦労をさせたかったのかもしれんが、別に住む場所でストレスを感じる必要はあるまい。改めて、以前の環境に誘導したS氏に恨みすら込み上げて来た。

...って、そうだ。S氏は元気なんだろうか?今回タイに来てから、一度も連絡をとっていないけど...。

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ま...最後の別れ方があんな感じだし、別に言う事も無いしな。

そう思った私は結局、S氏に連絡を入れなかった。今回の渡タイでは一度も彼とコンタクトを取らずに終わる事となる。

絶対に戻るまいと思っていた会社だが、まぁ知り合いも元々いたので、それなりに助かった。

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アパートを紹介してくれた彼らも近くに住んでいたし、色々と良くしてくれた。前回とは比較にならないくらいのスムーズな滑り出し。...仕事以外は。

贅沢は言ってられない。まずは突破口を見つけないとな。

そう思った私は、会社に通いつつも、空いた時間を使ってパソコンと睨めっこしていた。

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副業はダメ?クソくらえだ。生き抜くためには何でもやってやる。そう思った。

幸いにも、その頃のタイの通信インフラも徐々に整って来てたし、インターネットも日本には程遠いが、安定し始めていた。

アパートのWi-Fiはしょっちゅう途切れてしまっていたので、タイではお馴染みの通信会社「true」のSIMカードで契約し、Wi-Fiとテザリングの二刀流で何とか凌いだ。

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尤も、当時はまだ3Gだったので、かなりイライラしながらやっていたのだが。

そして、会社に通い始めて気付いた事は...

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やはりこいつら、何も変わっていない。仕事の帰りにソイカウボーイで酒を飲みつつ、女の裸を見て帰る。

「お持ち帰り」の相場は上がっていた。大体3000バーツ程度。その時のレートで大体8000円くらい。

そんなお金も無いもんだから、女の子を横につけて数百バーツで飲んで、ボーッとして終わるだけ。...何がしたいのかよう分からん。こんな事を毎日繰り返すなら、休みの日にお風呂にでも行った方がええやん。

あと、たまにプールバーに寄って、ビリヤードやって帰る。

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まぁ、趣味としてビリヤードやるなら、まだマシな方か。それでも、彼らと過ごす時間はとにかく無駄に思えた。

やはりここに長居すべきでは無い。そう思った私は、急いでネットで稼げる技術を磨いた。時間さえあれば家に引きこもって、ずっとキーボードを叩いていた。

そうしているうち、以前よりもさらに早く、彼らとの付き合いは希薄になっていった。

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帰りの「飲み」を私が常に断り続けていると、そのうち誰も私に話し掛けなくなっていった。そうそう、それで良いのだよ。お前らの「繋がり」ってのは所詮、その程度だろ?

あの遊び好きのHすらも、彼らとは遊ばなくなっていた。

Hとつるむ事は無かったが、Hも恐らく私と似た様な事を考えていたに違いない。私とHにとって、この会社のレベルはあらゆる意味で低すぎた。

——ある日、私が電話を取っていると、横で怒号が聞こえてきた。

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...何とHだ。信じられない。いつもひょうひょうとして余裕を見せる奴が、仕事の理不尽さを上司にぶつけている。

私の知る、うまく世間を渡り歩くHでは無い。要はそんなHを追い詰めてしまうほど、この会社の体制も仕事内容も上司の質も、全てがクソ過ぎた。

そうか。...お前も耐えていたのか。

Hはタイのとある女性と付き合っていた。

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以前は何人かの女に手を出していたが、もう一人に絞っていた。相当年上の人だったはずだな。風俗出では無い、普通の人だった。

その女性の存在は彼にとってかなり大きいようで、実際にその後、Hは彼女と結婚している。

その頃のHは、そんな状況であるにも関わらずこんな会社から抜け出せない自分自身に、イライラしていたのかもしれない。

皆、何かしらを抱えて生きている。

俺だけじゃ無いんだな。

...そう思ったその頃の私は、まだこの世の真理になど、興味すら持てずにいた。


その20へ続く—

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