見出し画像

バイバイ

やるだけの事は、やった。

ワクチンにやられたものの、まぁそれも仕方ない。

どうせ叫んでも誰も理解してくれないし、それでおふくろが治るわけでもない。

病院到着後、人工呼吸器を外した医師がちょうど走って来た。

「今、呼吸器を外しました。電解質の値が弱まり、危ない状態です。出来る限りの事をさせて頂きます。」と述べた。

思うんだが、もうすぐGWだし、医師もこれ以上の延命とかさせたくなかったんじゃないかね?(笑)要はめんどくさかったと思う。ぶっちゃけ、第一印象からそんな感じだったよ。

ま、それも含めて今回は少しばかり、運が悪すぎた。

その後ICUに入ると、既に彼女の心臓は止まっていた。

壮絶な現場。飛び交う叫び声と、全身がパンパンに浮腫んだ体のおふくろが、心臓マッサージを受けていた。

体のあらゆる場所に管が入れられ、「自分のものじゃない血液」を巡らされている。もう、ここまでされたらハーバライフの貯金も効かない。

…人殺しども。お前ら、流石だなぁ。

止まった心臓が何とか動き出す。親父が泣きながら「頑張れー、頑張れー」と叫び続けた。

私は超・冷静に「あの緑の数字って何ですか?あれが0になったら死ぬってこと?」と医師に聞いた。他にも「この機械って、何の機械?すごいねぇ」とか…。自分でもびっくりなくらいだった。

医師は私に「今何とか心臓もう一度動きましたが、これ以上はもう…」みたいに話して来た。いやぁ、悪いけど「早く死んでくんねぇかな」って聞こえたよ。GW、どこ行くの?(笑)そっちの方が大事だよねぇ。

脈は40まで落ちた。もう、時間の問題だった。

しばらくそこで止まっていたので、「そろそろかな?」と思った私は、医師と看護師の目の前でマスクを脱ぎ捨て、耳元で全てを語った。

「おふくろ…いや、母さん。母さんね、ワクチンにやられたんだよ。ほらね?だから言ったでしょう。俺の言う通りだったでしょ?」

…この様に言った次の瞬間…

何と、意識が無いはずの彼女の唇がグッと動いた。

聞いている…!

「お、案外元気じゃん(笑)。そうか、そうか。でも、もう良いよ。苦しいでしょう?ここまで機械に繋げられて、生きたいって思わないよね?だから、もう楽にして良いんだよ。えーっと…母さん、産んでくれて有難う。あと、俺の名前でお店やってくれて、有難う。俺、すっごく嬉しかったよ。自分の店で倒れるなんてずるいわ(笑)。それ以上の良い死に方は無いね。羨ましい。俺も母さんみたいに生きるよ。好きな事を思い切りやって、好きな様に死ぬ。だから…見守ってて。」

…おふくろは、そのひと言ひと言全てに対して、頷いた。

フォロワーの皆さん、有難う御座います。皆さんの祈りが、こんな奇跡を起こしてくれました。私は、幸せ者です。

親の死に目に会う事自体が難しいこの時代で、こんな最高の別れ方は無いでしょう?ぜーんぶ言いたい事を言って、ぜーんぶ聞いてくれました。

しかも、彼女自身も最高の形で倒れた。好きな事をしている時に、だ。それらをトータルで考え、私は「なんて幸せなんだ。なんて最高のお別れなんだ!」と心から思った。

「また、一緒になろう。もうちょっと、待ってて。俺も数十年後にはそっちに行く。その時はまた、新しい世界を作るよ。そして、またあなたの息子として生まれてくるから。だからまた、会いましょう。」

親父が隣で、「唇が…動いてる。聞いてる!」と言った。そうそう、聞いてんのよ、この人。凄いよね。私はこんな凄い人の息子だったんだ。

私は続けた。

「見ろ、母さん。変な世の中だよねぇ?こいつらみーーーんなワクチン打ってんだぜ?マスクしてさ。頭おかしいと思わねぇ?」

…周りにいる看護師、そして医師に聞こえる様に、でかい声で述べた。

「だからさ、これからワクチンで苦しむ人たちを助けたり、打たない様に出来るだけ呼びかけたり…俺なりにやってみるよ。母さんに安心してもらえる様な、立派な人間になるから。」

そして…「だから、おやすみ」と言い、あまり好きな言葉じゃないが、分かりやすく伝わる様、「愛してるよ」と言った。

最後に赤子の様に彼女の顔に抱きつき、おでこにキスをした。おふくろの、いつものシャンプーの匂いがした。

「じゃあね。バイバイ。」

…彼女はやはり頷き、その後すぐ、心拍数が40から0になった。

——2022年4月29日、16時30分。須藤ユキ子、永眠。

涙は流れなかった。今度こそ、流し尽くしたからね。

私と親父は、周りの看護師と医師に深々と頭を下げ、その場を後にした。

…あぁ、そうそう。

確かどこかで、「母さんは死なない。俺の中で生き続けるから」とも言ったはずだな。勿論その時も、頷いてくれた。

これでようやく、サタンはコキュートスへと戻る。

新生マサヤン=ケンヂ、爆誕である。

皆さん、今後とも宜しく。

もし私の研究に興味を持って頂けたなら、是非ともサポートをして頂けると嬉しいです。サポート分は当然、全て研究費用に回させて頂きます。必ず真理へと辿り着いて見せますので、どうか何卒、宜しくお願い致します。