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数分でエレクトロニックスポーツ(esports) の広がりを概観

"the Staples Center as used for the 2016 League of Legends World Championship finals." by Patar knight under CC-BY-4.0


本記事は、eSportsの記事ですが、最近スポーツ関連記事を連続して執筆しています。関連して、来月(2020年9月8日)、スポーツテックイベントを行います。「Sports x データ x テクノロジー」で、今どのような取り組みが行われていて、どのような未来に向かっていて、どのように将来のアスリートや子どもたちや社会に貢献できうるのかについて、ユーフォリアの橋口さん、技術顧問の古川さんと熱くトークします。

「Sports x データ x テクノロジー」に、興味をもっていただいた(特に)ウェブエンジニア、データエンジニア、データサイエンティストの方々(そしてそうじゃない方も)、是非ご参加ください。


本記事では、esports について書きます。

勢い高まるesports

esports というと、特に日本ではただのゲームの大会でしょ、という程度のイメージでとどまっていますが、世界的に見ると非常に大きなムーブメントとしてその規模を拡大しています。以下の2017年の CNN のビデオの出だしでも、ただのゲームの大会でしょという知らない方のイメージから出発して、何か凄いことになっているぞ、という紹介をしています。

 ですが、2年たち、更にその勢いは高まっているのです。


esports とは

昔のコンソールゲーム機の時代と違って、今や誰もがもっているスマホ・タブレット・PCを中心として、多くの人がゲームに興じています。Clash of Clans とか、Vaingloryとか、モンストとか、荒野行動等。ビッグタイトルである Clash of Clans は1億人を超すユーザーを擁しており、それら多くのゲーマーによって大きな売上がもたらされています。
 現代におけるゲームビジネスの成長が裾野としての下支えになって、今や esports は世界で数兆円規模の一大産業に変貌しています。Electronic Sports、もしくは esports は、プロフェッショナルレベルにまで高められた、個人もしくはチームで競うビデオゲームコンペティションです。


その規模

League of Legends 等のゲームが有名ですが、非常に複雑な操作と戦略を必要とし、トッププロはスポンサーや専門のコーチをつけて一日10時間~12時間ゲームのトレーニングを積み重ねています。2016年の League of Legends のチャンピオンシップでは、賞金総額は6億円。そのトッププロたちの戦いに惹きつけられ、4300万人以上がオンラインで視聴しています。競技人口は League of Legends で 7000万人以上おり、esports 全体では少なく見積もっても1億人以上いると推定されます。野球の競技人口が3500万人なので、非常に大きいことが想像いただけると思います。オーディエンス、すなわちファンの数も毎年増えています。2017年のある esports チャンピオンシップの視聴者数は1億600万人をこえ、これは2016年のアメリカ大統領選の候補者ディベート番組の視聴者数を上回ったそうです。その多くは若者で、NFL のファンの平均年齢とesports のファンの平均年齢は30歳近く離れているとも言われています。2019年の Newzoo の推計によると、現在世界で4億5000万人以上が esports の大会を視聴しているとしています。esports 大会の売上規模は、2019年には全体で1200億円以上に登っています。

アジアでの人気

ファンが4億5000万人いると書きましたが、その視聴人口のうち、一番多くを占めている地域はアジアで、57%に達しています。北米が12%、ヨーロッパが16%というのに対して大きな割合を占めています。アジア各国における浸透は進み、競技インフラ整備も進んでいます。例えば、香港にあるアジア最大の esports complex は昨年オープンし、24時間、毎日利用することが可能です。2万5000平方フィートの敷地内にはトレーニングファシリティや最大80名の選手が試合できるサイバーゲームズアリーナもあり、年間120万人が試合を観戦しています。
 このような盛り上がりが示すように、esports はアジアにおけるスポーツの世界でも無視できないものとなっており、2007年に中国・マカオで行われたアジアオリンピック評議会(OCA)主催の第2回アジア室内競技大会(Asian Indoor Games) において正式メダル種目となり、2018年にインドネシアで開催されたアジア競技大会(Asian Games) では大会史上初めて公開競技として採用されました。中国開催の2022年アジア競技大会では正式メダル種目となることが発表されています。


様々な企業がバックアップ

esports ブームはゲーム会社が投資をしただけの産物ではありません。他のスポーツでもそうであるように、esports のプレイにも選手にとってパフォーマンスを発揮するための様々な道具が必要です。PC、キーボード、専用のマウス、ヘッドフォン、esport に向いたPC用デスクやマウスパッド、椅子等です。それゆえ、DellLogitechIKEA といった会社も esports への投資を行っています。
 例えば、IKEA は、esports 向けの家具を製造していくことをアナウンスしています。

 加えて、BMW、Honda、Nissan、Nike、PUMA、Red Bull など多くの企業が esports 関連のスポンサーシップを行っています。

 自動車関連が多いのは、モータースポーツ・レーシングスポーツと esports との相性がよいことも関係しているようです。

 また、コンサルティング業界等も無関心ではないようです。esports も団体戦等の形式が増えており、個人の能力だけではなく、チーム編成・運営やマネジメントのウェイトも大きくなってきています。そこの分野において、コンサルティングファームがサポートをするようなケースも出てきています。

キャリアとしての esports

マーケット規模は年々大きくなっており、esports は今後の3年間で視聴者が6億5000万人以上になると予想されています。イベントにおける賞金額も増えてきていて、例えば、2017年のDota 2の世界大会「The International 2017」の賞金総額は27億円を記録。プロ選手の中には年間3億円近く稼ぐ人物もいます。他のプロスポーツでのトッププレイヤーの収入はこの10倍を行くこともあるのでまだまだかもしれませんが、これらから esports アスリートになるということが若い人たちにとっては魅力的なキャリアとして映ることもあるようです。それゆえ、esports のチームや奨学金等の支援プログラムを有した大学がアメリカでは30以上あるのですがそれらへ注目も集まっています。特に、ユタ大学、カリフォルニア大学アーバイン校、マリービル大学、ロバート・モリス大学、等が知られています。こうした大学側からのサポートが出てくるのも従来のスポーツと同様なわけですが、大学にとっても大学公式のチームが世界各国のイベントで好成績を残すことは、そのブランド向上に資する部分があります。


課題と未来

esports そのものはもちろん合法であり、今後発展こそすれ、衰える気配は一切ありません。ですが、課題がないわけではありません。アジアの中での中国や韓国、各国の盛り上がりと異なり、同じアジアの中にありながらも日本においてはスポーツとして承認されておらず、賞金制大会が法律上制限されているところもあり、なかなか普及がすすまないという状況があります。
 また別の一般的な課題として、他の各種スポーツと同様に、怪我や故障をどう業界として防いで安全に発展させていくかというのは重要なポイントです。esports は時に腱鞘炎や視力低下によりアスリート生命、ひいては日常生活に影響がでることがあります。特に若い選手が多い分野ですので、(昔、ゲームは一日一時間、という標語がありましたが、)業界の安全基準も整備され、日本においてはスポーツとしての承認される方向性を見出し、健全に発展していくことを期待したいです。


おまけ

esports においてはライブストリーミングが普及しており、現在収益源の複線化として esports においてライブコマースも行っていこうとする動きもあります。新しいECとしてのライブコマースの高まりについて、以下の記事で解説をしています。


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