ドラマ『都会の男女の恋愛法』は、多彩な映像表現で心を語る


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 『都会の男女の恋愛法』は、2020年12月22日から韓国のkakaoTVで放送されているウェブドラマ。チ・チャンウクとキム・ジウォンを主演に迎え、都会で生活する男女の複雑な恋愛関係や気持ちを描いた群像劇だ。日本でもネットフリックスを介し、ほぼリアルタイムで観られる。

 筆者は基本的に、ドラマ評は全話放送されてから書くようにしている。ある回だけがおもしろくても、全体で観たら微妙な作品も少なくないからだ。
 それでも『都会の男女の恋愛法』を取りあげたのは、スタンスに背いてでも書きたいと思わせる魅力を本作が持つせいに他ならない。
 その魅力とはずばり、多彩な映像表現だ。本作は人間の機微を丁寧に描いた脚本が光るが、登場人物たちの想いを饒舌に語る映像も見どころが多い。


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 なかでも特筆したいのは、第2話におけるラストのシークエンスだ。短い間とはいえ、情熱的に愛しあったジェウォン(チ・チャンウク)とウノ(キム・ジウォン)の喪失感を見事に映像で語りあげている。最初にひとり寂しく座るジェウォンを映したあと、これまたひとり寂しくベッドに座るウノを登場させる。

 この一連の流れで見逃せないのは、ジェウォンが画面の左側に、ウノが画面の右側にいることだ。そうした構図はかつて隣にいたはずの大好きな人がいない寂寥感をアピールし、作品の叙情性をより高めている。


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 第3話でのスプリットスクリーン(複数に分割した映像を画面に映す技法)の使い方も素晴らしい。登場人物たちの異なる価値観を対照的に見せることで、物語やキャラクターに多彩さと深みをもたらしている。分割した映像のカット割りを細かくし、ドラマの展開に躍動感をあたえる技も心憎い。
 自慢気に技法を振りまわすだけの虚しいナルシシズムに陥らず、物語と深く関連させた映像表現の使い方は、制作陣の高いスキルをうかがわせる。

 『都会の男女の恋愛法』は現在も放送中のため、ここでは脚本や物語の着地点といった要素を評価することはしない。とはいえ、いま楽しめる映像面だけをとっても、秀作と言える作品なのは確かだ。




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