2021年ベスト・ドラマ20


 ドラマは音楽や映画以上に韓国の作品が際立っていた。作られる物語はバラエティー豊かで、物語に込められた視点も実に多彩でした。世情に対するオルタナティヴな価値観を醸す作品も多く、それらは韓国に住んでいない人でも共鳴できるものだと思います。

 ブログやWebマガジンで評した作品は、タイトルにリンクを貼っております。こちらもぜひ読んでください。



『マイネーム:偽りと復讐』

20 『マイネーム:偽りと復讐』

 体技中心の骨太なアクション・ドラマでおもしろかった。映像史の視点から観ると男女役割の逆転と言える演出がいくつかある。『アトミック・ブロンド』を連想させるカメラワークもグッド。



『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』

19 『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』

 血に塗れたアメリカの歴史や偽善など、さまざまなことを考えさせられる作品。陳腐なシニシズムに陥らない誠実な脚本に拍手。



『くたばれケビン!』

18 『くたばれケビン!』

 精神世界で暴れまわるという設定が目を引くコメディー。虐げられた者を浮き彫りにする健全なシニシズムは必見。



『静かなる海』

17 『静かなる海』

 『サイレント・ランニング』『エイリアン』『惑星ソラリス』あたりの作品が脳裏に浮かぶ韓国のSFドラマ。社会風刺も散見されるなど、秀逸な批評精神が見え隠れする。



『ある日~真実のベール』

16 『ある日~真実のベール』

 韓国の司法制度にこびりついた腐臭を見せつけるミステリー。性役割の面で少々ステレオタイプも見られるが、歪な社会構造を炙りだそうとする批評眼には一定の評価をあたえてもいいはずだ。



『全然まったく大丈夫』

15 『全然まったく大丈夫』

 家族というテーマを軸にしつつ、多くの問題を考察したチャレンジングな作品。旧来の性役割や家族像に疑問を投げるのみならず、異なる価値観を持つ者と共生していく方法を考察した物語は誠実さと他者への愛情で溢れている。



『ジャイバ』

14 『ジャイバ』

 この素晴らしい南アフリカのドラマは、秀逸なダンスシーンと演技の数々を生みだした。アイデンティティーや抑圧といった社会問題と共振する要素も際立っていた。



メイドの手帳

13 『メイドの手帖』

 貧困やシングルマザーの子育てなど、筆者も含めた庶民の多くが自分ごととして味わえるシーンばかりだ。正直観ていて辛くなる瞬間もあるが、そうした情動を呼びおこすのも表現の大事な役割のひとつだ。



『スカイ・ロッホ』シーズン1

12 『スカイ・ロッホ』シーズン1

 『トレインスポッティング』や『バンディッツ』といった90年代映画のエッセンスをモダンな形に昇華したスペインの作品。階級というスティグマを取りいれた物語は見どころたっぷり。



『ナビレラ』

11 『ナビレラ』

 体が心に追いつかない老人と、心が体に追いつかない若者による静謐なヒューマン・ドラマ。社会背景や性役割の観点から見ても興味深い点が多い。



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10 『D.P.』

 ラストの銃乱射など、韓国の徴兵制に対する批判的眼差しを明確に示しつつ、そこにシニカルな笑いも入れた秀逸なバランス感覚が際立つ。ホモソーシャルに文字通り壊されたソッポンの顛末は、涙なしでは見れなかった。



『ロースクール』

9 『ロースクール』

 性暴力が題材の回など、社会問題を消費するだけじゃない批判精神も見られる作品。ドラマ全体としても性役割(ジェンダー)の面でフェアな眼差しがあってモダンな作り。



『地下鉄道 ~自由への旅路~』

8 『地下鉄道 ~自由への旅路~

 バリー・ジェンキンスが監督を務めた良作。特別な力を持たない黒人の物語という点では、『ビール・ストリートの恋人たち』と地続きの作品とも言える。



『賢い医師生活』シーズン2

7 『賢い医師生活』シーズン2

 流麗な物語の展開や感情の機微を掬いとる会話など魅力がいっぱい。静謐で上品な映像も輝いている。2人の娘から臓器をもらっても命を粗末にする患者と、どれだけ願っても小さな命を手にできなかった母親の対比が際立つ第2話に感嘆。



『IT'S A SIN 哀しみの天使たち』

6 『IT'S A SIN』

 HIVの大流行に翻弄される若者たちの10年を描いたイギリスのドラマ。マイノリティーも差別してしまうというアイデンティティーの複数性を描きつつ、マイノリティーに優しく寄り添う物語に仕上がっているのは素晴らしい。



『転校生ナノ』

5 『転校生ナノ』シーズン2

 タイで起きている学生運動の要素を感じさせるなど、生活とその背景にある社会の匂いを醸す作品。痛烈な風刺センスが好み。



『君は私の春』

4 『君は私の春』

 他者との生き方だけでなく、さまざまな要因によって心が傷ついた人への寄り添いも描いている。最終話のコンビニ店員など、随所で韓国の世情を滲ませる脚本はとても良く出来ていた。



『原潜ヴィジル 水面下の陰謀』

3 『VIGIL』

 2021年のイギリスでもっとも多くの視聴者を獲得したドラマ。精密な脚本、役者陣の優れた演技力、多彩な光の使い方、男女平等の実現など、魅力でいっぱいの内容は日本のドラマファンにもぜひ観てほしい。



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2 『K-Pop Evolution

 K-POPの発展と病巣を描いた傑作ドキュメンタリー。数多くの現役アーティストが証言するなど、後世の人々が参照できる貴重な資料という意味でも必見。



『ムーブ・トゥ・ヘブン』

1 『ムーブ・トゥ・ヘブン

 とても素晴らしい。韓国ドラマにおける脱マクチャンの流れが生んだ最高の果実。世界中のドラマと比較しても群を抜くところが多い。

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