Yaw Tog「TIME」


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 アメリカのシカゴを発祥とするドリルは、ヒップホップのサブジャンルのひとつ。ミニマルな骨組みのビートにヘヴィーなベースが交わるスタイルは世界を席巻し、多くのフォロワーを生んだ。なかでもUKドリルはその筆頭として有名だが、他にもアイルランド、スペイン、ガーナなど、さまざまな場所で興味深い音が日々作られている。

 今回取りあげるヤン・トーゴも、ドリルの流れに影響を受けたラッパーのひとりだ。現在17歳のヤンは、“Sore”のMVが300万回近く再生されるなど、ガーナのドリル・シーンを代表する存在と言っていい。多彩なノリを生むフロウに、豊富な語彙を活かした歌詞といった魅力の数々は注目されるに相応しいスキルの高さが際立つ。

 そんなヤンのデビューEPが「TIME」だ。本作はまだヤンを知らない人にとって、名刺代わり以上のインパクトを持つ作品となるだろう。スターへの階段を駆けあがっている最中の勢いはもちろん、表現力豊かな言葉とラップも楽しめる。
 サウンドは強烈な低音が前面に出ており、これまでのドリル要素を深化させた曲が多い。そういう意味では、ヤンの作品に親しんできた者からすれば馴染み深い音ばかりだ。

 とはいえ、表題曲はJ・ハス的なアフロスウィングを連想させる曲に仕上がるなど、今後はより幅広い音楽性を追求する可能性も示している。作品全体で見れば浮いた曲とも言える一方で、定型にハマらないヤンのチャレンジングな姿勢が滲む内容は、素直におもしろいと感じた。



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