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言葉と描線(信濃毎日新聞連載9)

信濃毎日新聞での連載「思索のノート」の第9回です。2020年11月の文章。

前回は、自分にとっては日記的な形式が書くことの基本的スタイルだという話だった。年々ますます重要だと思っているのは、自分にとって自然な思考の流れに逆らわないことである。学生時代には、学術の文章たるものはこう書くべきだという規範に従おうと努めていて、もちろんそれは必要なことで、だからプロの学者になることができたわけだけれども、その修練が自分の何かを過剰に抑制してしまった。その息苦しさをある時期から意識するようになっていた。博士論文を元にした『動きすぎてはいけない』以後は、徐々にその抑制を解除し、より自然な書き方を自分に許していく過程だった。

そして今年の10月に、なんとなく、そのための準備したわけでもなく、大きなことが起きた。それは美術の再開である。

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