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父と暮らす:父のメタモルフォーゼ 細胞からみた「分子栄養学」

2019年7月位から、90歳の父は一切食事を摂らなくなった。8月末に突然起き上がって家に来た。10k以上痩せていた。まるで何もなかったように夜は一緒に一杯やった。

私たちの「身体というコロニー」で生きる細胞達は毎日死んでいく。そして「お代わりの出来ない臓器」が今の状態を維持できなった時にトリアージュが起こる。生き残れる細胞が残るために細胞の間引きが起こり新たな父の姿にメタモルフォーゼしたのだ。蛹が蝶になる様に新たな自分の姿に変わったのだ(チョット小さなお爺ちゃんになった)。

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細胞は生命の単位、DNAは細胞のプロトコル

細胞とは、「タンパク質が埋め込まれた脂質の膜」にくるまれた「数十億のタンパク質と脂質の化合物が溶け込んだ水溶液」であり、常温での化学反応(代謝)が常に起こっている。タンパク質は数分から数日の間に分解され再構築される。

細胞内で閾値を超えたアミノ酸や脂質は細胞の外に押し出され不足している分は取り込まれる。「ホメオスタシス」は細胞レベルで維持されるからあたかも「身体と言うコロニー」のレベルの現象に見えるが、それは単なる影だ。食事という形で身体に取り込まれた多くの生命が細胞の内側で代謝されて数限りない代謝物を変化させる。検査値というのはそのうちの僅かな種類の高分子化合物の「検出された値」である。

だから、調べられていない種類の代謝物は遥かに多く含まれている。ある物質の値は、産出する代謝系が多いのか消費する代謝系が多いのかの判断など出来はしない。それでも昨今の分子標的型の薬は、どちらかの代謝系を潰すので検査値を操作するのはお手の物である。効かなければ、逆を潰せばいい。いずれにしても検査値は正常になる。治療のアウトカムが検査値の正常化であるというのは製薬会社にとっては嬉しいことだ。

商品化された「食事を買わざるを得ない人生」では、食事を変えることは出来ない。無論選択する弁当やお店を変えることしか出来ない。高い金をかければ別だが、そうでない限り、が「商品化=利益を出すための素材のミイラ化」された食事から逃れることはできない。 グローバル化した食事ビジネスは毎日の食事から税金のように利益を出している。そんな食事は検査値の異常を招く、だから薬を飲む。どうしてこんな世界になってしまったのだろう。食事の価値を信じることの出来ない私達は、全てこの道を通る。

検査値の異常だけ下げて

「常に変わる状況」に対応するために「身体というコロニー」を構成している細胞(=生命)は破壊され構築される。70兆個(注)とも言われる細胞達は周りの海(血液+間質液)の中のメッセージを通じて自分のニーズを表現する。医学はこの液体の中の「僅かな生化学物質」を計測して「検査値」と呼び「身体と言うコロニー」の中を想像する。「群盲象を撫でる」とはよく言ったものだ。

お代わりのない細胞

人の臓器(細胞)には2種類ある。その機能を担う細胞がなくなってしまった時にお代わりの細胞が生まれる臓器と、そうでない臓器だ。『心筋、脳、神経、目鼻口耳の受容体、腎臓、膵臓、肝臓の一部、皮膚・粘膜組織(肺も含む)の一部、前立腺、卵巣、甲状腺』これらの細胞は失われると同じ機能を持った細胞が出現しない。そのためにこれらの組織がある程度以上死ぬと、機能が失われ新たなコロニーの形にコロニー全体の死につながる。再生治療が対象にしている臓器だ(注)。

「一般大衆的細胞」は常に生まれ変わる

お代わりのない細胞が「派手なスタープレーヤー」だとしたら、それ以外の細胞は縁の下の力持ちだ。例えば、「髄膜」と言う細胞からできているシートは脳と神経系を包み外部から脳を守っている(このバリアのおかげで梅毒は脳に達するまで10年以上かかる)。これ以外にもスタープレイヤー達はそれぞれに細胞でできたシートで守られている。関節を包み特異性を維持するシートはコンドロイチンを逃さない(笑)。血管の内皮外皮とサンドイッチされた横紋筋は血液循環の要だ。それぞれに分化した細胞達は自分の「生」を懸命に生きていくのだ。当然では有るが身体というコロニーを知ることはない。私達が神様と出会うことがないように........

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居場所が決まらず、使い捨てられる細胞

血液(赤血球:120日、白血球:数時間)皮膚(30日で捨てられる)粘膜(胃袋の粘膜は1-2日)と短いサイクルで作られ破壊される。赤血球は20兆個存在するので1秒に120万個が作られ破壊されているのだ。脾臓で破壊された赤血珠は、脂質とタンパク質で出来たボトルに入れられて骨髄でもう一度新たな生命として使われる。身体に老廃物という概念はない。身体というコロニーでは常に破壊と再生が繰り返される。

生命にとって重要な要素をプールする組織

骨組織、筋組織(随意筋)、脂肪組織、のようにそれぞれの細胞に必要な物を(骨=カルシュウム、筋=アミノ酸、脂=脂質)プールする組織も有る。骨は1.5年で入れ替わり、、筋・脂は毎日5〜20%溶かし出されインスリンの許可でブドウ糖が細胞内に取り込まれて、溶かし込んだ分をもう一回構築する。I型糖尿病ではインスリンが分泌されないから再構築されない。だからI型糖尿病の患者はやせ細っていく。

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瓶に詰められて海を漂うメッセージ

多くのタンパク質や脂質がメッセージを出来上がった分程度で分解される。「ユビチキン」と呼ばれる仕組みが体内を余計なメッセージが流れないように破壊するのだ。その瞬間の身体の状態をすべての細胞に伝えるのがホルモンの役割だ(注)。

インスリンのようなホルモンは長くて5分程度で分解される。「ユビチキン」と呼ばれる仕組みが体内を余計なメッセージが流れないように破壊するのだ。その瞬間の身体の状態をすべての細胞に伝えるのがホルモンの役割だ(注)。

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メタモルフォーゼ(変態)とは?

生物は食物連鎖の流れの中に生きます。一定の気温、湿度(水分)、太陽光線から植物は炭水化物を合成します。ほぼ植物が合成する生化学物質は、ほぼ100%が炭水化物です。木の幹は「リグニン」と言われる頑強な炭水化物です。ブドウ糖(デンプン)も炭水化物ですが、僅かな量なのです。葉や根はタンパク質や脂質を含みますが、ごくわずかで、短い寿命しか持ちません。植物の生命は「葉」なのです。そして一年で死んで来年又生まれます。そう考えると植物の寿命は一年なのです(熱帯などの環境は別ですが.....)。


そしてそれ(リグニン)を代謝(常温での化学反応で分解)するのが菌類です。菌類は最近とよく似ています。繊維質を分解できるようになるまでの数億年でくされなかった木の幹は石油や石炭と言われる化石燃料となったのです。そして菌類は昆虫ー>小動物と連鎖を続け動物へと組み立て直されていきます。動物の身体は脂質とタンパク質が50%づつです。

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生命は大きく食物連鎖から離れる時に形態を変えます。ヤゴはトンボになり、セミは幼虫から空を目指します。動物は外形をこれらの例のように外見を大きく変えることはありません。しかし移動することで食物連鎖を追います。

野生の草食獣が季節によって長い距離を移動しながら草を追い、渡り鳥は大陸を移動します。小さな生命は、移動する身体の中で生きていきます。まるで鳥をウイルスという悪魔を運ぶ汚い生き物のように言うのは間違いです。肉食獣はその獲物を変えることはありません。「一つの谷に一匹のトラ」と言われます。哺乳類にも「冬眠選択した種」が居ます。

ヒトは食事を作ることで環境に適応して来た

栄養学には「ライフステージ」と言う言葉があります。「食事」と身体の状況を対応させるとよくわかります。

哺乳類ならば「乳(血液を消化器官から飲む)」を必要とする時期から始まり(母親と言うフィルターを通して世界と向き合います)。いくつかのステップを踏み、思春期を通り抜けて受胎可能な雄と雌になります。その後も細胞達は身体というコロニーの中で適応を続けながら新たな生命の姿になっていくのです。その延長に年をとりいろいろな細胞達は死んでいきます。

やがて、無理が効かなくなってくる世代、生殖を司る組織が機能しなくなります。膵臓の機能が衰えれば皆糖尿病になります。心筋が多く死に始めると慢性心不全が始まります(母の死因でした)。

閉経は病気なのか?不老不死を求める愚かさ

この世が始まってから閉経を逃れることの出来た女性はいません。更年期障害という言葉には腹が立ちます。「成長痛」と呼ばれる思春期の身体の痛みがあります。骨と健のアンバランスが起こす傷みです。

同様に年をとっていくと身体の各所が傷みます。それは身体の自然な傷みなのです。自然で当たり前のことを「病」にして、よく効く薬で治す医学のあり方こそ多くの問題の源です。マッチポンプという言葉を思い出しましょう。

検査値ってなんだろうか?

身体というコロニーを形つくっている生命(細胞)は互いに間質液を通じてメッセージをやり取りしているのです。父の絶食中おそらく検査値は最悪だったでしょう。何度も点滴をして元気になるだろうかと考えました。食事を持っていっては食べずに寝ている父のベッドサイドにおいて帰りました。医師に委ねようかと何度も考えました。

父も母も延命治療は望んでいませんでした。輸液(点滴)をすれば元気になるでしょう。しかし、細胞達は注射針から送り込まれたフェイクな液体に騙されます。まだ身体の多くの細胞が元気なのだと思い込みます。そして船が本当に沈むまで元気いっぱいに乗務員も乗客も浮かれ騒ぎます。

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父はすっかり回復しました。時折散歩を楽しみ、食事を楽しみ、出来の悪い息子(僕)との酒を飲むことを毎日の楽しみにしていました。元気な90歳でした。

けどね、僕のほうがもっと楽しみしていたんだ。

そして、2020年2月8日の誕生日、背骨の圧迫骨折で動けなくなります。

そして母のもとに父は行きました。二人は仲良く過ごしています。そして僕が来るのを待っていてくれています。ゆっくり来いよと言っています。

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僕は延命治療は望みません。

自分の口で食べられなくなったら、そのまま死なせてください。自分の身体で生きれなくなったら人生のはそこまでで結構です。

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注)

70兆個とも言われる細胞達

どうせ誰も数えたことないのだからいくつでもいいのだが、37兆個というのが一番少ない計算のようだ。赤血球が20兆個あるというんは本当らしい。そして1個の赤血玉には1億個のヘモグロビンがあり一つのヘモグロビンは4つの鉄の分子を持ったタンパク質の集まりだ。なんか、すごい話だが血液と血管お話はこちら。


再生治療がターゲットにしている臓器だ

なぜ「お代わりが出来ない」のだろうか?全ての細胞が常に変化していっている。お代わりの出来ない細胞は、身体全体の状況に常に向かい合い、その一瞬一瞬を記憶していると考えるとわかる。生まれてからの様々な出来事をその細胞の一つ一つが自分を変えることで記憶するのだ。

エピジェネティックと言う考え方がある。細胞の膜タンパクや内部の代謝系の存在全ては生まれた瞬間から変わり続ける。もし、再生治療がその位置に置かれるべき細胞を再生したとしてもその細胞は0歳なのだ。60歳の僕の膵臓に0歳のβ細胞が埋め込まれたとして、まともに働くだろうか?「ベテラン社員が抜けた穴をアルバイトが埋められるか問題」とでも言おうか(笑)。

再生治療は医学の奢りとしか思えない。それが証拠に、企業が手を引き出している。10年近く投資を続けてようや、加齢黄斑変性(老人の視力低下の治療)の治療の臨床が行われ一人1億円かかるという。最初は脊椎損傷での身体の麻痺が治るかのごとく鳴り物入りの国家プロジェクトだったのに.....

先端医学の研究者は、自分の研究を担保に金借りとているようなものだ。下手な博打打ちよりリスクが高い。

ホルモンの分解を行う酵素をブロックする分子標的型の薬も有るが、これほど恐ろしいものはない。

膵臓を叩いてインスリンを分泌させるホルモンにインクレチンと呼ばれるものがある。小腸から分泌されるが5分程度で分解される。インクレチンは身体を循環する間にDPP-4と言われる酵素に分解される。この酵素をブロックする分子標的型の薬剤がある。これがよく効くのだ。副作用もないということになっている。

しかし、問題はこの酵素がこれ以外の役割を持っていないかである。ひとのDNAは45,000このタンパク質をコーディングしている。一つのタンパク質が年齢やその人の病歴、代謝系によって様々な昨日を持ち、使い回されていることは容易に想像ができる。

なぜ5分で分解するように人の身体では作られているのだろうか?早い話、「山のコダマ現象」というか「ハウリング」と言うか、消えるべきメッセージが消えないためになにかおこるということは考えていないのだろうか?血糖値は食事当たり前の表れである。食事を変えないで薬で検査値をっ正常にするのっておかしくないかい?

「分子標的型のよく効く薬」の副作用というのは副でもなんでもないのだその酵素にとっては当たり前の反応なのだ。だから恐ろしい。自分が無知であるということを隠すのが専門家(商売人)だ。殺されないためには、一生懸命学べばいい。そうでなければ、病気を作っている商売人にありがたがりながら金払って殺してもらうことになる。


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厨房研究に使います。世界の人々の食事の価値を変えたいのです。