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キャリア教育の3つの要諦③~Enjoy & Survival。

ここ数年,私がキャリア教育科目を担当するとき,伝えることが3つあります。「Being is Choosing」「Courage to be」「Enjoy &Survival」の3つです。今回は,「Enjoy & Survival」について考えてみましょう。

この言葉は,REBT(いろんな訳がありますが,いわゆる「論理療法」「理性感情行動療法」「人生哲学感情心理療法」などと訳されます)の創始者であるアルバート・エリス(Albert Ellis)の言葉と言われます。

REBTには,人生を生き抜き,人生を楽しもうという理念があります。自分にとってつらいこと,腹立たしいこと,悲しいことは,その感情を味わいながらも動揺することがないようにしてうまくやり過ごし,自分がうれしい,楽しいと思えることに自分の心のリソースを使うことで人生をエンジョイしていこうという発想です。

学生生活にしろ,就職活動にしろ,人生全体にしろ,生きていれば楽しいこともつらいこともあります。特に就職活動については,「しんどそう,辛そう(だから避けたい)」という想いを持つ学生もいます。実際,先日開催された就職ガイダンスに同席した際,学生から聞かれたのは圧倒的に「就職活動に対する不安」でした。この不安をどうやり過ごすのか。

REBTの考え方(「ABC理論」とか「ABCDE理論」とか呼ばれます)では,不安の背後にある「イラショナルビリーフ(不合理な信念)」を「ラショナルビリーフ(合理的な信念)」に置き換えることが推奨されます。

私自身は,特にコロナ禍での授業の中で,学生に繰り返しこのメッセージを伝えてきました。コロナ禍で満足な学生生活が送れず,就職活動に対する不安がさらに高まっていたころです。入学の時にやりたいと思っていたことが,コロナ禍でできなくなってしまった……就職活動でアピールできるような経験が何もない……。それもこれもコロナのせいだ…。そんな風に不安を募らせる学生が多かったのです。

しかし,学生の自己PR文を添削していると,例えばこのようなアピールをしている学生に出会います。

大学の授業で,地域のイベントに参画する課題がありました.
コロナ禍で,地域の方との連携は難しかったですが,
最終的には,当初の目標を上回る数の出展があり,盛況でした.

春の新歓イベントが中止になり,このままではサークルメンバーが入らず,
サークルが消滅してしまうと危機感を持ちました.
SNSでの広報活動を強化するとともに,イベントに参加できた時にはこのSNS自体の告知に努めました.

一方ではコロナ禍でやりたいことができずに不安を募らせていく。もう一方では,コロナ禍でもやれることをやっていく。この差は結局,「心の持ちよう」から生まれてきます。この「心の持ちよう」をREBTでは「ビリーフ」と呼ぶわけです。そしてこの「ビリーフ」を,人は往々にして意識していません。だから「コロナ禍のせいであれができなかった,これができなかった」と,周りや環境に原因を求めて不適切な感情をもち,不適切な行動を取ってしまうのです。

しかし,ヴィクトール・フランクルは,自分の過酷な強制収容所の体験を踏まえて,「どんな出来事でも,起こった出来事に対してどうふるまうのか,自分自身の中で選択する自由が人間にはある」と述べました。どんな状況に陥っても,それに対して自分がどう考え,どう行動するかの自由は残されており,他人が奪うことは出来ないのです。

結局、自分がどう生きていくかは自分で決めることができるわけですから、それならばネガティブな感情にとらわれすぎることなく、前向きに生きていくほうが人生エンジョイできますよね、ということですね。


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