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新型コロナウィルスによって明らかになったイベント主催者のリスクマネジメントの新常識:実施か中止かオンライン実施かの3択へ

世界中でイベントが相次いで中止されたり、延期されたりしている

新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、WHO=世界保健機関が「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」宣言を行い、日本政府が当該感染症を「指定感染症」とする政令について施行日を2月1日に前倒しする方針を示した。

2月16日には、厚生労働省が緊急記者会見を行い、「新年会を行うとか送別会を行うとか、今はスカイプとか電話会議で遠隔地から会議も出来るので、不要不急な集まりは避けるように頂きたい」とコメントし、人混みを避けるように要請した。

「いまどき、スカイプ?そこは、Zoomでしょ!」と『Zoomオンライン革命』の著者としてはツッコミを入れたくなったが、それはともかく、このような発表を受けて、国内外でイベントが相次いで中止されたり、延期されたりしている。

スペイン・バルセロナで2月24~27日に開催予定だった世界最大級の携帯通信関連イベント「モバイル・ワールド・コングレス(MWC)」の主催者GSMAは、2月12日にイベントの中止を決定した。

日本では、2月27日から4日間、横浜市の「パシフィコ横浜」で開催予定だった「CP+2020」(シーピープラス2020)の開催中止が2月14日、発表された。「CP+」はアジア最大のカメラ見本市として知られ、約7万人の来場者を見込んでいた。

イベントの主催者は、状況をギリギリまで見極めながら、実施か中止か、または、延期かの難しい選択を迫られたはずだ。感染がどこまで拡大するのか、いつ収束するのかが予想困難な状況の中では延期の選択をするのは難しく、WHOの緊急事態宣言が出ている状況での実施は、感染者が出たときの責任問題となるため、中止はやむを得ない選択だと言える。

しかし、その中で第3の選択をしたイベントもあったことに注目したい。

女性起業家を支援する国際NPOであるWeconnect International in Asia Pacificは、2月13日にマレーシアのクアラルンプールで実施予定だったローンチイベントを、急遽、Zoomを使ったオンライン開催に切り替えた。主催者は、Facebookのイベントページに次のように投稿した。

Please note that because of the nCov virus, we have needed to change this to an online event. Dial in details are as below -
WEConnect International is inviting you to a scheduled Zoom meeting.
Topic: WEConnect International Launch in Malaysia
Time: Feb 13, 2020 10:00 AM Kuala Lumpur

私は、Weconnect Japanにメンバーの一人として関わっているため、参加者の一人としてオンラインで参加した。パネリストが順番にパワーポイントを画面共有して話すというシンプルな構成だったが、約100名がオンラインに集まり、無事にイベントを終えることができた。女性起業家を支援する活動がマレーシアで予定通りにスタートできたことに大きな意味があった。

新型コロナウィルスにより、テレワーク在宅勤務への移行が促進

中国では、新型コロナウィルスの影響でテレワーク(リモートワーク)が急増している。それを受けて、Zoom の株価は上昇し、2月3日、Zoom は8ヶ月間で最高となる15%以上上げ87.66ドルの終値で引けたのことだ。

今までテレワークに重要性を感じていなかった人達が、外出や会合に制限がかかったことで、オンラインの活用に本気で取り組み始めたのだ。その結果、現在、もっとも優れたツールであるZoomに注目が集まり、一気にテレワークの導入が進んでいる。

新型コロナウィルスの感染防止のためのテレワークの導入は、日本でも始まった。テレワークに移行しやすいIT企業を中心に、在宅勤務への移行が急激に進んでいる。

GMOインターネットグループは、いち早くテレワークによる在宅勤務へと移行し、長期化する状況に備えて継続する体制を整えた。

ドワンゴは、2月17日から21日にかけて約1000人の全従業員を在宅勤務にすると発表した。来客など業務上、出社がやむを得ない場合を除き、自宅で業務に当たる。

NECは、グループ社員6万人が1週間、在宅勤務を行う実験を行う。これは、オリンピック期間のテレワーク実施も視野に入れた試みである。

NTTは、グループで働く約20万人の従業員に対してテレワークや時差出勤を呼びかけている。

ヤフーは、従業員の感染を防ぐため、100人以上の集会を原則、禁止した。通勤ラッシュを避けるため、午後からの出勤も認めている。

ちなみに私たち(与贈工房)は、6カ国に分散する30名ほどの自律分散型オンライン組織で、普段から全員がリモートワークなので、業務にはまったく影響が出ていない。

テレワークだけでなく、就職活動のオンライン化も始まっている。

人材サービス大手のエン・ジャパンは新卒採用に向けた面談をビデオ通話に切り替えた。人事担当者が会議室でパソコンに向き合い、約45~60分ほどの面談を行う。通過した学生には後日、次のオンライン面談の日程を伝えている。

今回の新型コロナウィルスは、多くの企業に、緊急時に業務を継続できるように在宅勤務へ移行できる体制を普段から整えておくことの重要性を知らしめている。

テレワークの体制が整っていれば、いざというときに出社と在宅勤務の比率を調整するだけですむが、テレワークの導入から始めなければならないのであれば、対応に時間がかかり、後手を踏むことになる。素早い対応をした企業は、緊急時の対応力をアピールして企業イメージをアップさせている。今回のことをきっかけに、各企業のリスクマネジメントの常識がアップデートされるはずだ。

新型コロナウィルスによりイベントもオンライン化する

このように日常業務のオンライン化は進んでいるが、イベントのオンライン化はどうだろうか?

多くの企業や団体が、日常的に、100名以上のイベントを企画し、会場を予約し、集客を行っている。新型コロナウィルスのような伝染病だけでなく、気候温暖化による大型台風の到来など、様々な理由でイベントが中止に追い込まれる可能性が高まっている。中止になると、活動が停滞するだけでなく、入場料の返金、会場のキャンセル料の支払いなど赤字を抱えこむリスクも発生する。

Weconnect Internationalのように、イベントを直前にオンラインイベントに切り替えるという措置が可能なケースもあるが、テレワークと同様に、リアル会場とオンライン参加のハイブリッド形式のイベントは、いざというときに比率を変えるだけで対応することができるために、リスクに対して対応できる幅が大きくなる。

私が立ち上げから関わっているEssential Management School(EMS)は、250名の受講者が学ぶ社会人大学院であるが、最初から3種類の参加方法が用意されている。受講者は、1)毎週水曜日の夜、御茶ノ水のエデュプラ会場に集まる会場参加、2)当日にZoomから参加するZoom参加、3)録画を視聴して、後日、Zoomに集まって対話する反転授業参加、の3つの参加方法のうちから自分に合った参加方法を選んで参加することができる。

これは、学習者の制約を少なくするために導入されたものであるが、今回は、それが、リスクマネジメントにも生かされた。EMSの主催者は、2月17日に新型コロナウィルスの感染拡大を防ぐために1)を取りやめ、受講者は、2)または3)から選択することを決定した。オンライン参加を可能にしたデザインにしていたことで、中止にすることなく、参加の仕方の選択を変えるだけで対応できたのが、今後のイベントの在り方の参考になるのではないだろうか。

「会場でもオンラインでも参加可能」という設定を、予め準備しておくことは、地域の壁を越えてイベントに参加できる環境を提供できるだけでなく、いざとなればオンライン実施に切り替えられるため、伝染病リスクや天候リスクに備えることができる。こちらは、テレワークに比べると進みが遅いが、今年中には、イベント主催者のリスクマネジメントの新常識となりそうだ。

どこまでできる?オンラインイベント

新型コロナウィルスの感染拡大を心配しているイベント主催者が、「オンラインで実施」のイメージを持つことが出来るかどうかは、イベント主催者が、どの程度の「オンライン体験」を持っているかによって決まる。

第一段階:スカイプで1対1で話したことがある。
第二段階:Zoomで、3-4人のミーティングをしたことがある。
第三段階:Youtubeライブなどのオンライン配信を見たことがある。
第四段階:Zoomで、50人規模のイベントに参加したことがある。
第五段階:Zoomで、50人規模の参加型のイベントで、ブレークルーム対話を体験したことがある。
第六段階:Zoomで、分科会を含む数百名規模のオンラインイベントに参加したことがある。

多くのイベント主催者の認識は、第二段階に留まっていることが多く、大規模のオンラインイベントが実施可能であることには気づいていないのが現状である。

しかし、遠隔コミュニケーションのテクノロジーは、数年前の常識を遙かに超えた地点まで進んでいる。Zoomウェビナーは1万人まで入れるし、双方向コミュニケーションが可能なZoomルームは、1000人まで入ることができ、50個の部屋に参加者を振り分けることが可能だ。しかも、大人数になっても接続は安定している。

複数のアカウントを組み合わせることで、数千人規模の国際会議をホテルを貸し切らずにオンラインだけで実施することができる。オンラインイベントを支えるインフラと運営ノウハウの進歩は、ここまで来ているのだ。

その現状を知らないと、イベント主催者は、オンライン実施の準備をすることで回避可能な伝染病リスクや天候リスクを負い、大きな損害を被る可能性にさらされることになる。

情報化社会におけるイベント主催者のリスクマネジメントの新常識

大規模オンラインイベントを可能にするインフラが整ったのは2016年、試行錯誤を重ねて運営ノウハウが蓄積し、企業レベルで実用可能なレベルになったのは2019年である。2020年が、大規模オンラインイベントが社会実装される最初の年になる。

これからのイベント主催者は、次のような形でイベント準備を進め、リスクマネジメントを行うことになるだろう。

(Step 1) リアル会場での企画を行う。
※リアル会場のイベント企画会社と契約

(Step 2) オンラインからの参加も可能にする企画を行う。
※オンラインでのイベント企画会社と契約

(Step 3) リアル中止の判断基準と判断時期を決定する。
※リアル会場のキャンセル可能時期などを考慮する。
 
(Step 4) リアル中止の場合はオンラインで実施することを明記した上で参加者募集を行う。
※オンライン実施のときも参加者に返金しない。
 
(Step 5) リアルandオンライン/すべてオンラインを確定する。
※オンライン実施のときはリアル会場を解約。
 
(Step 6) イベントを実施する。

リアル会場でのイベントのバックアップとしてオンライン実施も用意しておくという考えもあるが、最初からリアルとオンラインの両方で参加可能、または、すべてオンラインイベントで企画するというケースも増えてくるだろう。すべてオンラインの場合は、会場を予約する必要がなく、実施できなくなる可能性も極めて低いので、リスクを低く抑えられるという利点がある。

最後に、Zoom革命をかかげ、オンラインのワークショップやイベントの開発を行ってきた私たちの試みの一端をご紹介しておく。

「社会の組織開発」を364人が実感した夜!「組織開発の探究」オンライン読書会が示した未来

オンラインフェス2019夏:パラダイムシフト系イベント運営をやってみて分かったこと

2016年から100名以上のオンラインイベントを数え切れないほど実施してきた。私たちのチームには、テクニカルサポートができるメンバーが100名、オンラインファシリテーターが50名いる。ワールドカフェ、OST、フューチャーセッション、AI(アプリシェイティブ・インクワイアリ)など、様々なワークショップをオンライン化してきた。その過程で、リアルのワークショップを、どのように工夫すればオンラインで実施できるかのポイントが分かってきている。

現在、イベントを実施するか中止にするかを迷っているイベント主催者の方は、一度、私たちに相談してほしい。あなたの想像もしなかったやりかたでイベントをオンライン化するためのアイディアが、私たちの引き出しの中で出番を待っている。

絶体絶命のピンチの中から、次の時代を切り開くイノベーションが生まれる。このピンチをチャンスに変えようではないか。

Zoom革命への問い合わせはこちら

(追記)Facebookでシェアしたところ、12時間で172件のシェアをいただきました。数百名規模のイベント(学会、国際会議など)の問い合わせも複数いただいています。投稿はこちら




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