碧海祐人

宅録音楽家 / シンガーソングライター 文章を書くのが好きです、行間を汲み取ってくだ…

碧海祐人

宅録音楽家 / シンガーソングライター 文章を書くのが好きです、行間を汲み取ってください。

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きっと春に雪が降るようなことじゃない

今日は知り合いが、少し前の約束をよく思い出すわね、と言う。どこか、もの思いに耽るような顔をして。 連絡が来る。明るくなっていく街からの光で部屋が青くなる頃。素直になって言うべき大切なことを隠す。これで、何回目だっただろう。 誰かが本当にいなくなってしまうような、そんな事が日常の真隣にはあるはずなんだ。それは、きっと春に雪が降るようなことじゃない。 今日も知り合いが、少し前の約束をよく思い出すわね、と言う。どこか、もの思いに耽るような顔をして。 誰かが僕に放った言葉や、

    • 家事と生活と所感

      洗濯物がたまる。洗濯槽にかさ張る布、洗剤をトレーに入れながら思う。 ああ、僕は新曲のひとつも作れていないのに、洗濯物だけはこんなにも溜まってしまうのか。と。 ご飯を作る。手を抜いたり、手を抜かなかったりする。手を抜かないで、マグロの柵を塩で水抜きしたり、お肉に隠し包丁を入れたりしている時思う。 ああ、面倒なことってどうしてこうも馬鹿馬鹿しくて楽しくて素敵なんだろう。と。 風呂に入って体を拭く。 タオルは角質や汚れが付くと臭くなるから、洗面台に水を張りジャブジャブと洗う。

      • かぜ薫る セルフライナーノーツ

        「僕らはまだいける」! これが全てです。肩を貸すわけでも、意味を与えるわけでもなく、ただどこかで飛んでいる。 風に乗って。誰かの存在を薫る時、ほんの少し軽くなるその感じを、どうにか宿せているかなと思います。 __________ アイデアの発端は「ゼルダの伝説 Tears of the Kingdom」をやりながら。飛んでいる時の空気感。自分が目的としている空島へ、自分の工作とアイデアがたどり着けるか!というひりつきは、ときめきと共に強く形にしたかった。(実はストーリー

        • 電車を滑る夏の日差し溜まりが

          夏草が朝の湿度を攫って煌めいている。 八月の綻びに、六月の香りを感じても、もうそれは二度と現れない花。 虹が消えた日。伸びていく影、誰かを拒絶する弱さ!!わかってくれって強く思ってるよ。置き去りのままの自転車。 ある日取り壊されたアパート、営業終了したばかりの市民プール。楽しくてたまらなかったあの日にはまだなかった、アイスコーヒーが美味しいという気持ちだとか。 解かせようとしている謎こそが最も良くない。ざまあみやがれ!!と力強く笑ってやるのが作法。 あんたが綱渡してビ

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        きっと春に雪が降るようなことじゃない

          次の嘘は、君に喜ばれるだろうか?

          蝉の抜け殻を足元に眺め、立ち尽くす青年を見た。 夕立の匂いが街に張り付いて、雲の影が魚影のように澱みなく進んでいく。 次の嘘は、君に喜ばれるだろうか?自我の隅っこで、裏切られるギリギリをにやけながら歩けたらと思う。時間はもうない。厳密には、ずっとあり続けるし、ずっともうないような感じだ。 雨が夏の街を壊して、虫の声が少し止む。彼の頭の中にも大いなる何かが渦巻いて、瞬く間に次の嘘で、誰かへの筋を通そうとしている。 「筋なんて通さなくて良い!」と叫んだら、風向きが変わるよ

          次の嘘は、君に喜ばれるだろうか?

          反復横跳びを始めるような気概で

          自分のことが綺麗に模れそうな帰り道、蛇腹みたいになった私の創造性。片っぽから照らせば赤、片っぽからは蒼。 「伝わらないなら意味がない」なんてこと、ないよ?きっとその眼差しを止めることの方が意味ないんじゃない? やめてー、強い言葉や誰かの意見で私を縛らないでー。自由になった角を知らないところで削ってくれたらそれでいいの。私は私で一所懸命なの。あなたもそうだろうけれど。 遍在のようなことを考えては、きっとまだ、折り合いはついていないのだ。誰かが通り過ぎていく。君の全てを祈って

          反復横跳びを始めるような気概で

          転写する街々.2

          あなたが思うことは誰にもわからない。 日々、繋がりを問うように生きて、お為ごかしの通知と仮面のダンスパーティを生き過ぎて来た僕らには、もう自分の感覚なんてわからないと思う。 自分に起きていることを客観的に観察しているふりをしてみたり、愛している人の境遇を憂いたり、または妬んだり、力無く握った拳がモルタルやベニヤを破壊しふと我に帰る時、生物として強く情けなさを思う。 もうどうでもよくて、誰かの連絡も無視して、帰路のフェンスをへし折って、誰かの善意を睨みつけて、そうやってし

          転写する街々.2

          毎週誰かが新曲を発する。

          毎週誰かが新曲を発する。ちゃんと良かったり、どこか良くなかったりする。 果たして、作られた物に生命一個体として全身全霊で向き合えているか?と、毎週水曜日に必ず思う。まるで研究者が恐る恐る顕微鏡を覗くように。マウンドのピッチャーがキャッチャーのサインに首を振るように。 およそ一年前に世界を模ったあのアルバム。もう誰もあの曲の話をしなくなった。奪われ続ける心と裏腹に、トップソングという名前の山から滑り落ちていって、まるで代表曲でもないかのように、システムが弾き殺す。みんなの世界

          毎週誰かが新曲を発する。

          liner note___「遠吠え」

          朝方の淡い水色と、夜去の群青。 何かを作ること、そこに渦巻くはかりごとと意志。 背後にある大好きな80s、汲んでオマージュして受け継がれてきた鮮やかすぎる愛。 作ることの途中に生じる副次的な苦しさ。 街にまとわりつく退廃、いけ好かない空気、地獄みたいな雲。 誰かからもたらされた譲れないもの。 ___________________ かってえ言葉でニュアンスを伝えさせてもらいました。音楽の種明かしって難しいんですよ、言い過ぎて聴き手の願いを折るのは嫌だし、作り手よ

          liner note___「遠吠え」

          転写する街々

          【?】 ある日空から落ちてきた探査船は、どうしても隠しきれない秘密を燃料に、裏の森に降り立った。木々の隙間からほのかな焚き火が見える。狼煙は空高く伸びている。星を眺めれば吸い込まれるようで、量子的な何かに意識を食われる。気づけばどこまでも真白の中にいて、またしても感動していた。 【?】 いつかの記憶で夏を象徴するような女性が、ある日夢に出てきたようで朝起きる。脳が認識を獲得していくうちにぼんやりと忘れる。最近出逢ったあの人か?女性の影は瞬くうちに消える。目尻には涙が渇いてい

          転写する街々

          へらへらと石橋を叩くような。

          最近気づいた事だが、フォーマルな場面や固い空気の中で、くだけた発言をする事が多い。そしてその後にへらへらする。この自分の笑い声に気づいた時には寒気がした。なぜだろうかと深化していく。 主張ではなく、その人の自信。多くのステージに立つ人間は胸を張って大きな声で真面目な事を真面目な顔で話す。随分と立派そうである。 もちろん褒められるべき事だが、そこにある大きな違和感にいつも複雑な気持ちになる。どうしてそんなに自信ありげに自分の主張の上に立っていられるのだろう?と。高比良くるまの

          へらへらと石橋を叩くような。

          社会と自分のどうしても繋がりづらい関係性

          「tiktokをダンスなどで戦略的に〜」 「俳優業を専門でやっていくならマネタイズが〜」 カフェで細イケメン黒タートルネックがブランド物片手に流暢に吐き出す言葉たち。 その間の僕の心はというと、 「ああ!駄目だわ!無理すぎる!劣等感!気持ち悪すぎる!心がキツい!」 でした。 いや、別に良いのよ。ブランド物も、黒タートルネックも(なんで起業してますよ系ビジネスマンチックな人ってみんな黒タートルネックなんでしょうね)、細イケメンでセンター分けなのも。 問題は、資本主義社会、

          社会と自分のどうしても繋がりづらい関係性

          抑えきれない気持ちがあるのなら、月を見て偲べば良い

          表明すること。例えば有名な誰かが亡くなった時、何かを経験した時、人はSNSに、人生における大きな影響を長文で書き記す。 「いや、それ一人でやれば良くないか?」 と、思ってしまう僕は性格が悪いんだろう。中にはそこまでの感動や影響を受けてもないくせに(そういうのって作品や人柄から結構わかりますよ)軽々に載せやがる輩もいる。「今日は尊敬する〜さんとワークショップでした。光栄で、実りある時間でした!」「〜さんの作品中学の時聴いてました、ご冥福をお祈りします。」なんてのは誰かに表明

          抑えきれない気持ちがあるのなら、月を見て偲べば良い

          僕を支配する誰かのさみしさなど

          綱渡りのような帰路で、心と穏やかな時が分裂する。この気持ちをどう伝えたらいいのだろう?わからないから、読み手にもこれを伝える為に、わからないものを書く。 まるで当たり前のように選りすぐられた果実、この無力さはきっと人にしか発生しないもの。詳らかにしていけば、澱みでしかないキメラのような歪な動物。ただし人はそれに従事する。 これは天体にケチをつけるようなこと。やめておくか、と思う。 そう、星や月の話をしたい。いつも僕を救って離さない、風や波にさえ揺るがない光のこと。 勝ち負

          僕を支配する誰かのさみしさなど

          信じていた音楽は効力を失った

          耳の聴こえないあの娘の事を思い出して嫌になったり、僕が座る岬にはもう何も無いのかもしれない事に落胆したり、「誰もが自分勝手だな」と思った自分が 、その最たるものだったりする。 信じていた音楽は効力を失った。ずっと頼りきりで、プレイリストの一番初めにあったあの歌。僕らの天井を切り裂いた傷みたいなあの詩。 結局そうなってしまうなら、くだらないと思う。全てを捨てて意識だけの存在にでもなりたい。今なら、それはきっと自由だと思う。 きっとこれを読むお前も「わからない」などと、ほざく

          信じていた音楽は効力を失った

          言葉がありふれた世界で、また君と交信したいと想う

          僕らにできることなんてものすごく限られていると思う。それはそのはず。 三つ並びの席のど真ん中に腰を下ろす。それもそのはず。 反射する水面に、鏡に、強く期待を込めて眼差しを送る。ような、そんな風に君の時間を貰った。さりげない優しさなんて存在しなかったはず。何かを最後まで走り終えることは最高速を捉え損ねることなんだと。 一時間前に飲んだアイスコーヒーが強く胃を軋ませる。 言葉がありふれた世界で、また君と交信したいと想う。かえって眠りきった朝の街が美しくて、交わした約束なん

          言葉がありふれた世界で、また君と交信したいと想う