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読書・映画感想文

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記事一覧

あの言葉たちは仕掛けられた爆弾だったのかも|映画『ラストマイル』を観て

“時限爆弾”という一種の表現がある。 例えば、10代の頃にとある大人から貰った言葉。そのと…

“完璧”とは脆いはずなのに|映画「PERFECT DAYS」を観て

遅ればせながら、というか超絶遅れて、映画「PERFECT DAYS」を観た。少し前に、PERFECT DAYSを…

過去に存在する自分の“加害性”との対峙(小説「ブルーマリッジ」を読んで)

あの人が今の自分の発言や投稿を読んだらどう思うのだろうか。過去の自分の行動は、批判する自…

静寂に身を浸すことで感じられた「小さな声」

ときどき自分の声が小さすぎて聞こえなくなるときがある。 綺麗だと感じていたものへの確かな…

天狗だったあの日の自分へ

以前から気になっていた『大学1年生の歩き方』を読んだ。ちょうど明日から4月。この土日に街で…

それでも、この街で生きていく|映画「キリエのうた」を観て

10月、学生時代から仲の良い友人が東京を離れた。 19歳の秋に知り合い震災復興の渦中にあった…

自分を侵す価値観と対話

早いもので9月中旬。来週には秋分を迎えて、一応暦の上では秋に向かっていく。暑さも湿気もまるで夏から秋に向かっているようには思えないが、分からないところで少しずつ季節は変わっているらしい。 ところで、今週ドラマ『こっち向いてよ向井くん』の最終回を観た。休職中の8月にNetflixで観たことがきっかけでハマったのだが、ずっと考えさせられていた。 例えば、向井くんの10年前の恋愛で当時の彼女・美和子を守ると言ったところ、妹の麻美と元気が結婚してから「夫だからしっかりしなくては」

泣くほどの理由もない。ただ一人ぼっちだ

ただ出会いを探しただけなのに、なぜこんなにも自分の人生について突きつけられ、悩むのか。 …

傷によって人は繋がれるのかもしれない

自分に特筆すべき感性なんてあるのだろうか。 日々の生活や映画、小説を通して、特別な感情や…

食べものを思い浮かべられること

最近、食べものについて思い浮かべられる幸せがあるのだということに、はたと気付かされた。 …

「ピンとこない」の中にある傲慢さ

「ピンとこない」って便利な言葉だなと思う。その通りではあるのだけれど、目の前にあったはず…

繊細さと流れていく感情

川上未映子さんはどうしてこんなにも「繊細さ」を代弁してくれるのだろうか。本を閉じた瞬間そ…

黄色い家、危うさと隣り合わせだった過去

川上未映子さんの「黄色い家」。貧困や犯罪と隣り合わせの環境や家という小さな世界以外に社会…

ぼやける記憶の中で、確かにあったこと

東京の喧騒の中で生きていると、東北で育った頃の記憶がぼやけていく。生きる世界線が近いようで遠い。 電車が1時間に1本のローカル線が走る地域で生まれ育ったこと。「震災」という言葉が良くも悪くも自分の人生を変えたこと。石巻や仙台で過ごした時間のこと。 東北で見た景色とは隔絶された世界で、一つ一つの記憶がぼやけていく。 映像は鮮明なのに、当時の心情にライドできなくなっていく。 多感な時期に東日本大震災を経験して、何を感じて生きていたのか。大学生になって仙台に出てからどんなこ