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夢見モグラは空を待ち侘びて 50日目

具合の悪いモグラは、
しばらくの間うなされていた。
夢の中で何度もブクブク溺れていたし、
得体の知れない暗闇に追いかけられては、
怖い顔をした悪魔に捕まったところで毎回目が覚めた。
ベッドの上で汗だくになってばかり、
一行のその具合は良くならなかった。
定期的に来ていた”ミマワリ”と呼ばれる人に、
必死になってそれを訴えかけたが、
難しい顔をして首を傾げるばかりで、
全く聞く耳を持ってはくれなかった。
モグラは途方に暮れフラフラとよろけながら、
ポケットに手を突っ込んで、
少し不貞腐れた態度をとった。

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立ち向かわないという話。

あれ今日祝日だっけか。
家を出て混み合う街の様子に戸惑う。
途中の道すがらフレンチブルのかわい子ちゃんとすれ違って、
ガン見してしまって飼い主の方に少し不振がられる。ごめんなさい。
フレブルのお尻フリフリの後ろ姿がなんともまた愛おしい。
と思ったら正面から全力で猛スピードの自転車。
すんでのところでギリギリかわしつつも軽く吹っ飛ばされ、
一人歩道に膝をつく。痺れる手。
振り返ると相手は遥か彼方風のように通り過ぎていったし、
たいした怪我なかったから良いけど(ここ歩道やぞ)、
いやまあよそ見してたのは自分も自分か。

気を取り直し、歩き出して携帯の画面を見て、すぐに心が凍る。
年齢なのか、今、友達周りに体調を崩す人が多くて、とても心配事が多い。
もちろん流行りの病のこともあるけれど、無事や健康を願うばかり。
それでも、中途半端なことは言うべきではなく、なんて返していいかわからなくて、返信できないまま駅にたどり着き、電車に乗り込む。

今度は目の前に居合わせた子たちが、たまたま僕の友人のことを話していた。
根も葉もない適当な噂話だし、
機嫌のせいもあったけれど、
少なくとも僕にはちょっとイジっているように聞こえて、
とても嫌な気持ちになった。

他人の噂話してる暇があったら、
手前の人生、ちゃんと生きて見ろや。

なんて、気の小さい、揉め事の嫌いな自分はもちろん面と向かって言うわけもなく、人のフリ見て我がフリなんとやら。気をつけよ。
ただただ大人しく心の中でボヤきながら、そそくさと駅で降りてスタジオへ向かう。

仕事がひとつは少々トラブル気味、上手くいかなかった。
けれどもうひとつはいい方向に進んでいるのがわかって、
ほっと胸を撫で下ろす。
あれ俺さっきなんでイライラしてたんだっけか(そういうところは天才的)。

総じてこの日の自分は、立ち向かわなかった、と言う話。
それが正しいか正しくないかはさておいて、
良いことも、悪いことも含めて。
立ち向かわないこと、スルースキル、なんて言う。
勇気がないと言う欠点は、揉め事が少ないという利点を生むのかもしれない。
ただ一つ間違えば見て見ぬフリとはまさにこのこと。

向き合うことは大事だ、それは避けてはいけない。
ただ、それに実際に立ち向かうか、上手く受け流すかは、全くもって別の話。
めちゃめちゃ感受性、感度は強くて、
それでいて叩いても叩いてもへこたれない、
サンドバックみたいなタフなメンタルが欲しい。
それではまた明日。

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本日の表紙は__pepeandさんの写真を使用させていただいております。


褒められても、貶されても、どのみち良く伸びるタイプです。