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童門冬二「上杉鷹山」を読んで

はじめに

3か月ほど前に、ビジネスパーソンとして尊敬する年上の知人に座右の書を聞いた。その時、この本の名が即座に口から出た。それ以来いつか読もうと思い、先日読破できたため、その感想を記したい。

他家から養子ながら、藩士や領民に対し愛と信頼をベースにした政策を実行し、米沢藩の危機的財政難を凄まじいスピード感で立て直し、人々の心までも蘇らせた上杉鷹山。現代の経営立て直しにも通じる事例が江戸時代にあったことに驚きです。


鷹山の改革の手腕はもちろんのこと、改革に対する執念や信念、真摯さ、公平さ、藩士や領民に対する感謝や思いやりなど、経営をする者としての心構えを学べる一冊だと思います。


具体的な4つの施策

江戸中の商人に借金を断られ、幕府に大名家返上を本気で検討するほど危機的な財政状況。
それを打破する具体的な手法として、以下4つを実行。


1.可視化=財政状況の見える化、情報公開
2.コストダウン=質素倹約、旧来のしきたりによる出費の削減
3.生産性向上=権威付けのためだけの城内の仕事や管理のための管理などのBullshit JoBの廃止、管理職(=侍)の現場(農林業、産業)への投入
4.高付加価値製品の開発(鯉、縮、木工細工など)


特に、3の生産に実質貢献していなかった、労力(侍とその家族)の現場投入は、現代でも難しい課題で、財政改革にとって本質的に大切なものは何か、今手元にある資産活用できるものは何かを考えた上で、旧来の常識を覆す最大の功績に思った。


人々の心を変えたものは?

鷹山は実際の改革にあたって、最も大切なものは、米沢の人々の心を変えることと説く。小説内のメタファーでは、燃え尽きたように見える灰の中にもまだ赤く燃えているものがある。それがあなたにあるのなら、どうか周りの人にもその火をくべてほしい途いう。実際に鷹山は、以下3つのことを行い、人々の心を変えたと思う。


1. 共通のビジョンの制定=火種の話、領民ファースト、三助(自己、相互、公共)など
2.自己貢献感の醸成=日々の米沢が良くなっていることに対し、藩士・領民自信が貢献している気持ちの醸成
3.愛と信頼の政治=藩士・領民に対し、思いやりと感謝を藩主自ら率先して示す


最後に

改革の道は決して平坦なものではなく、旧重臣たちの屈曲した改革批判や妨害行動、藩邸の家事や冷害などの災害、改革当初からの信頼する仲間の不正行為など、数々のトラブルに見舞われた。

それらトラブルすべてを真摯に受け止め、決して感情に流されることなく、公明正大に藩士の意見も聞きながら、執念深く信念をもって改革を進めた鷹山の器の大きさ脱帽するばかりである。

大きなビジョンに向かう途中、困難に当たった時、本書を読み返し、鷹山ならどうするか、そんな問いを立てるために傍に置いておきたい本です。


座右の書として、紹介してくださった知人に感謝したいです。

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