第1章 ヨウとおジィ 昔ばなし 27
シモツマには昔の戦争で、おジィが狙撃兵をして、イギリスの兵隊を何人も殺したということを聞いたと話した。それを聞いて、とりあえず家にじっとしていることが我慢ならなくて、学校へきたんだといった。
「ああいう大きなサイトで、無記名のやり取りじゃなくてさ、もっと開けた、なんていうんだろう、今俺とヨウがこうやって話しているような感覚で話したほうがいいんじゃない？ じゃないと、今回来た変な、自己顕示欲だけが強い回答が来ると思うよ」
シモツマの意見はもっともで、ただの掲示板的な姿勢をとるならば、死ぬほどあるほかの掲示板に埋没することは明らかだった。
ウェブカメラを使ったライヴチャットを無料でできるサイトなんて、いくらでもあるんだからとシモツマは提案してくれた。
チャットとは、インターネットを使用して、ライヴで二方向以上の相手とやり取りをすることだ。回線速度が遅いころは、文字のやり取りのみだったが、ブロードバンドの普及で動画のやり取りも可能になった。
ＰＣのモニターの前にウェブカメラと呼ばれる専用のカメラを設置して、相手もカメラを設置すれば、テレビ電話のように、相手の顔を見ながらやり取りができる。企業では、遠距離間での会議で、出張コストを落とすために、このシステムを使って会議をすることも、今では日常だ。
遠距離恋愛をする恋人同士にも重宝するし、欲求不満の主婦がウェブカメラの前で下半身半裸になって、いやらしいことをすることもあるらしい。ウェブカメラは二、三千円で買えるし、システムの使用自体には金はかからない。
今回使った質問に回答してくれるポータルサイトは、告知力があり、いいたがりが集まってくるというのは問題だが、人は集まる。しかしライヴチャットができるサイトを解説しても、それだけでは人は集まらない。
テレビで売れているアイドルがサイトを開けば、何百万のアクセスが一瞬できて、回線はダウンするだろうけど、僕の場合を想像すると、シモツマ以外誰も来そうにない。最悪、興味を持ったおジィが公民館にある共同使用のＰＣから、アクセスしてきかねない。
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