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父の帰宅 08

NPO法人の方はこの団体に入るにはまずアンケートを受けないといけないということでアンケートが自宅に送られてきた。これは自称パニック障害者の人間が増えていて厳密にパニック障害者による団体として運営したいという意図があってのことだ。正しい見解だ。

しかしアンケートの項目が「あなたは、心療内科や神経科の医院、クリニックをどうやって見つけているのですか。インターネット・電話帳・駅看板・紹介・その他」から始まって「自分だけ取り残された感じがするときがありますか」まで全一〇四項目に答えなければならなかった。そのアンケートに答えること自体がストレスになるのでこの法人に入会することは止めた。民間団体の集いに集まるには自宅から距離がありすぎたのでここも入会するのを止めた。

こうした努力もむなしく、マサの求める医師には出会えずにいた。定期健診を児島総合病院で受けていたので、現状を里見先生にすがるような思いで相談した。里見先生は家族の問題やトラウマに関して得意分野とする病院に心当たりがあるということで橋本クリニックを紹介してくれた。家から車で一五分のところにある。とにかくそこに行くことに決めた。

マサはこのときなるべく時間をかけずに円滑に自分の症状を伝えるために医師に見せるためのレジュメを作成していた。普通の医療機関では初診は問診票を患者自身が書くわけだが、橋本クリニックは初診患者用に別室が設けてあり、橋本先生の助手にあたるスタッフの聞き取りによって患者の症状をまず把握する体制をとっていた。

この時点でマサはこの医療機関は少し違うなと感じた。名前が呼ばれてこのとき初めて橋本先生に出会った。最初の印象はちょっとそっけない感じがした。左記がマサが橋本先生に提出した最初のレジュメである。

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