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父の帰宅 24

これまでノートに手書きでレジュメを書いてきたが、内容がシリアスになるにつれ感情の制御に戸惑うようになってきた。次のレジュメからマサはパソコンのワープロソフトを使って過去の記憶を記していくようになった。左記は二〇〇二年一月二五日にマサが橋本先生に提出したレジュメだ。

現在の不安

──頭の怪我、パニック障害の残遺症、トラウマ、うつ、バイトのストレス、いったいどれに不安を感じているのか分からない。ここ一週間ほどかなり不安定。デパスを飲めば楽になるのは分かっているが依存性があることは知っていてパニック発作が起きたとき効かないと怖いので極力飲まないようにしている。

マイスリーを飲んでもだいたい四時間前後で目が覚める。その後もう一度眠るが眠りが浅い。朝目が覚めたときが一日で一番疲労を感じる。強い肩こり、歯を強く噛み締めたような感じ。昼寝をするとたいてい悪夢で目覚める。頭の中をぐちゃぐちゃにされたような感じがして、いつも怖くて無理やり目を覚まそうとする。昔からある症状。

西尾先生の本はきちんと読んで自分に当てはまるところは付箋を貼って実践している。メディテーション、言葉の反復、深呼吸など。でもやはり辛いときがある。

バイトでミスをすると自分はこんな状態だからと誰に向かっていっているのか分からないがいい訳をしている。被害者意識が強いような気がする。これはなんとかしたい。でも年も変わって心新たにやっていこうと思った矢先に四〇度の熱が出て正月の二日から救急病院で点滴を打つはめに。

今は両手の汗ぽう性皮膚炎にもなっていて、またかという思いがある。僕は幸せになりたいです。そのために自分でできることならなんでもします。力を貸してください。

カウンセリングでマサは導眠剤をロヒプノール二ミリグラムに変えてもらい、睡眠用にデパス〇・五ミリグラムも処方されている。ロヒプノールは効いている時間がマイスリーより長い。

マサは眠るときが一番不安定になるのでデパスとロヒプノールを同時に飲んで眠っていたがそれでも一日四時間以上眠れることはなかった。二時間を切る日もざらだった。眠れない、食べられない、そんな状態が父親が帰宅したときから数ヶ月続いていた。左記は二〇〇二年二月一日キョウカ先生に提出されたレジュメだ。家庭の雰囲気の描写がより克明になっている。

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