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父の帰宅 15

朝になってヒサコさんが目を覚ましてコーラが飲みたいといったので、買ってくるといって予約したオレンジのガーベラを引き取り、コンビニで朝食とコーラを買ってきた。

ヒサコさんはマサが帰宅したことに気づかないで眠ったままだった。その間マサはずっヒサコさんが目を覚ますまで待っていた。そしてヒサコさんが目を覚ました。

「わぁー、ガーベラ」ヒサコさんは二日酔いで頭痛がしていたが嬉しかった。

「お気に入りのガーベラです」

「いつ帰ってきたの」ヒサコさんはもう普段と同じ状態に戻っていた。

「結構前、二時間くらい前かな」

「信じらんない、私だったら誕生日プレゼント買ってきた時点で、寝てようが何してようが強引に喜べって渡すけど、そのマサ君の行動は尊敬に値する」

「気持ちよさそうに寝てたから」

「ありがとう」

「どういたしまして」

ユウカさんがマサの携帯に電話してきた。ヒサコさんの誕生日を一緒に祝いたいと。マサはヒサコさんにこのことを伝えて、ヒサコさんがマサの家に来てもいいと伝えたのでユウカさんがマサの家にやってきた。マサの部屋で三人が無言の状態がかなり長い時間が続いた。

ユウカさんはうつむいて泣いている。ここでマサはギターを手に取った。この雰囲気をギターで打開しようとした。三人とも知っている曲をチョイスした。ボン・ジョヴィの『ワンワイルドナイト』のイントロを弾いた。以前三人でライブに行ったことがあって、皆のお気に入りの曲だった。途中で間違ったのでヒサコさんが「やっぱり途中で間違った、毎回間違ってるでしょ」と初めて口を開いた。

「マサ君あの曲弾けるの、なんで?」

「うん、ちょっと聴いて練習した」

「すごーい、リッチーじゃん」

この会話をきっかけにマサは適当にみんなが知ってそうな曲を弾いて、無言の雰囲気を見事に打開した。その後ヒサコさんの誕生祝として三人でイタリアンレストランで夕食をとった。お腹が減っていてたくさん注文したが、三人ともストレスで胃が受けつけず半分くらいしか食べられなかった。

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