ポケモン銀への偏愛

僕にはかれこれ20年遊んでいるゲームがある。
ポケモン銀だ。

結論、これ以上好きになったゲームが見つからなかった。
思い出補正込みで、おそらくこの先も無いだろう。

出会いはたしか幼稚園年長くらいだったと思う。
僕には歳の離れた兄がいて、兄がプレステに移行したことで遊ばなくなったゲームボーイを勝手にやり始めていた。

当時は何も分からず、
コガネシティからウバメの森を通ってヒワダタウンに着いた時、違う街に来た!とテンションが上がって兄弟に自慢したり、
技のPPの仕様が分からず、PPが切れると一生その技は使えないと思い込んでいて、PPの多い「いあいぎり」ばかりしていた気がする。

僕の家はあまり裕福ではなかった上に、
親はゲーム反対派だったから、
流行りのゲームを買ってもらえず、僕はいつも周回遅れだった。

小学校に上がって友達と遊ぶと、皆はゲームキューブやアドバンスで遊んでいた。
僕だけゲームボーイで遊んでいて、なんか〇〇君だけ違うね、と言われていた。

僕は周りのゲームと違うのは気づいていても、自分がやっているゲームが劣っていると思わなかった。
グラフィックは違っても、確実にポケモン銀は面白い、と思いながら、
家に帰って1人で銀をしていた。

小学2年生になっても、僕は相変わらずゲームボーイをしていた。
この頃になると兄の持っていたピカチュウ版もクリアし、ますます夢中でゲームをしていた。

ただ、当時はDSが大流行していて、
周囲でゲームボーイを遊んでいる人はいなかった。
だから通信ができず、欲しいポケモンが手に入らないのが辛かった。
通信交換で進化するポケモンも、過去作から連れて来れるポケモンもほぼ幻に近かった。

小学校3年生の頃、
友達からアドバンスSPとポケモンエメラルドを買った。
周回遅れは2世代遅れから1世代遅れまで縮まった。

この頃はアドバンスなら遊んでいる友達もいて、少しだけ通信プレイで遊ぶこともできた。

それでも僕は時折、銀を最初から初めて、
データを消さないようにレポートは書かず、
SPを充電したまま殿堂入りまで遊び続けたこともあった。
なぜだか、何度遊んでも楽しかった。

金銀のポケモンのグラフィックは生き生きしていてとても魅力的だったし、
BGMのノスタルジックな感じとか、
ストーリーのシンプルな感じが、
うまく言語化できないけどとにかく好きだった。

僕が小学校高学年になった頃、
金銀の発売から10年が経ち、
リメイク版であるHGSSが発売された。

発売を知った時、
これは僕のためのソフトだ、と思った。
物心ついてからずっと遊んでいるソフトのリメイク版が出るなんて、
僕が買わなきゃ誰が買うんだ?とさえ思っていた。

TSUTAYAの店頭にあった、スイクンたちが印刷されたポスターをもらって、
ワクワクしながらパーティを考えた。

発売された時、僕は母にどうしても欲しいのだと伝え、買ってもらうことに成功した。

ポケウォーカーも含め、ファンに対するサービス精神をひしひしと感じた。
何度もやり込んだし、好きなタイトルなのは間違いない。
けど、金銀の方が好きだな、という気持ちは正直感じていた。
グラフィックなのか、サウンドなのか、思い出なのか、、
分からないけど、僕はリメイク版を遊んでも尚、リメイク前が好きなんだなということに自分でも驚いた。

そして、その頃から銀の電池が切れてしまい、セーブデータの保存ができなくなった。
僕はたまに起動しては、「さいしょから はじめる」というメッセージしか表示されないことにため息をつき、電源を切ることを繰り返した。

さらに時が経ち、2017年にはポケモン金銀クリスタルのVC(バーチャルコンソール)が発売された。

僕はこの発表をニンテンドーダイレクトで聞いた時、
過呼吸みたいに荒い息で喜んだ。

VCで初めてクリスタルバージョンをプレイし、それなりにやり込んだし楽しかった。

ただ、VCであることが、なんとなく熱中し切れない感じがあった。
データが移植されて遊んでる感じがあって、
熱中しようにも、なにか真剣さがないというか、仮初のように感じてしまう。

やはり実機で無いと、子どもの頃に没頭していた感覚は味わえないんだろうか、と思った。 

そしてさらに数年後、
僕は仕事を辞めてフリーターになり、
改めて自分がやってみたいことについて考えた。
いくつかやってみたいことはあったか、その中で「ポケモン銀を電池交換して、また遊べるようにしたい」というのがあった。

そして、僕はサイトを参考に、
ポケモン銀を分解して、電池交換をした。
思い出のカセットを分解するのは勇気がいったし、もし壊してしまったらと思うと怖かった。


右上の電池を無理やり取り外し、交換する

電源をつけ、レポートを書き、電源を切る。
そして再び電源を付けると、「つづきから はじめる」が表示されていた。
僕は嬉しかった。何年ももう遊べないと思っていたことが、
少しの勇気を出せば解決できたんだなと思った。

僕は最近また銀をやっている。
実機だからか、プレイしていて違和感がない。
VCには沢山お世話になっているが、
やはりハードとソフトが噛み合っていないとあまり愛着は持てないものなのかもしれない。

僕は最近、レトロゲームショップに行っては、
ゲームボーイと通信ケーブルを探している。

子どもの時叶えられなかった、銀での図鑑完成が夢だ。
VCなら安価に手が入るけど、どうしても実機で見たい。

やっぱりまだ偏愛から抜けられそうにない。

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