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【備忘録】ランダル・レイ『ミンスキーと<不安定性>の経済学』(その3)

『ミンスキーと<不安定性>の経済学』で私が特に印象に残ったり箇所を抜き出して残しておく記事の「その3」です(強調部分は、私が特に重要だと感じたり、目から鱗が落ちたような箇所)。その1はこちらその2はあちらです。

今回が最後で「第七章 ミンスキーと金融改革」、「第八章 結論――安定性、民主主義、安全および平等を促進するための改革」の紹介です。

連邦準備制度の政策にとって唯一の普遍的なルールは、いかなる普遍的なルールにも縛られないということである。(p185)
ミンスキーは、「中央銀行が金融システムで何が起きているのかを熟知しているべきだとすれば、中央銀行は銀行および市場との間で、業務上、監督上、検査場の関係を有している必要があ」り、銀行を検査し監督する責任を軽減してしまったら、中央銀行の「金融政策機能を発揮する能力」を阻害してしまうことになると考えていた。
(中略)
中央銀行が監視を続けるための一つの方法は、前述のとおり、銀行を割引窓口へ強制的に行かせることである。(p216)
ケインズの『一般理論』(1936年)は、資本主義システムの2つの根本的な欠陥、すなわち慢性的な失業と過度の不平等を指摘していた。この2つはつながっており、過度の不平等は、支出するよりも貯蓄率を高めることを好む富裕層に過剰な所得を与えることになる。それが、需要を押し下げて、雇用不足のままにしてしまうのである。
ミンスキーは、3番目の欠陥を付け加えた。つまり、不安定性は、金融的な経済システムである現代資本主義の標準的な特徴である。さらに、永続的な安定性は、たとえ適切な政策を実行しても達成することができない。なぜならば、安定性が、「それ(恐慌と負債デフレ)」が起こりやすくなる方向に、行動を変えてしまうからである。(p218)
ミンスキーなら、社会保障給与税(payroll tax)を廃止すること、また年金受給者が社会保障給付を失うことなく働くようにすることで、労働力参加の障壁を減らすだろう。彼ならば、すべての労働者の社会保障給与税を2パーセントポイント引き下げるオバマ大統領の「社会保障タックスホリデー」を支持しただろう。
(中略)
ミンスキーならば、社会保障給与税の従業員負担分と雇用主負担分の両方を廃止することによって、それをさらに推し進めたであろう。(p229~p230)
依然として家計を圧迫している負債の山は、部分的には、家計が生活水準を維持しようとする中で、国民所得が賃金から他にシフトしてしまったことによって引き起こされたものである。このシフトは、主にウォール街の「上位1パーセント」に大きな利益をもたらした。
バブリーナ・チャーネバの研究によれば、世界金融危機からの回復の利益の95パーセントは、上位1パーセントの所得層の手に渡っていた。別の研究からは、米国の人口の上位1000分の1(0.1パーセント)が、今やすべての資産の5分の1を所有していることが分かっている。(p241~p242)
3つの相互に関連する問題が経済の資本発展を妨げている。第一に、利潤への分配があまりに大きく賃金への分配があまりに小さいため、これが需要を押し下げ、失業の原因となっている。第二に、金融部門が、付加価値の20パーセントを占め、GDPに占める割合があまりに大きすぎて、不安定性を増大させている。第三に、金融部門に配分される企業利益の割合があまりに大きすぎる。(p242)
経済の資本発展がうまくいくようにするには、金融のダウンサイジングが不可欠である。(中略)
「大きすぎてつぶせない」金融機関に、銀行免許を失うか、ダウンサイジングするかのどちらかを選択するように要求すべきである。(p242)

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