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感想文 『消失の惑星』

Disappearing Earth (Julia Phillips, narrated by Ilyana Kadushin) 2019年
図書館のオーディオブックを借りて聴いた。邦題『消失の惑星』。

カムチャッカ半島が舞台って、珍しい。なんてエキゾチックなんでしょう(日本からは近いけど)。作者はカムチャッカ出身だろうか。行ったことのない未知の土地の人々の物語に興味を引かれてひととおり聴き終わったけれども…これなぁ(ため息)。冒頭の少女たちがさらわれる場面と結末だけ読んで、真ん中部分は飛ばしていいよミステリーが目当てなら。何言ってんのよカムチャッカの女性たちの話が読ませるんでしょ、ってことなら私はけっこう辛かったです。

最初の30%まではワクワクして聴けた。しかし次から次へと新しい人物が現れては消え、なにか重要なことを聴き逃してるのではと不安になるくらい特にひっかかるところがない。そして素早く章変わり。え、また別の人出てきた。さっきの話の続きは?あ、ないのね…の繰り返し。この消化不良。そして行方不明事件の解明はどこへいった。作者に少女らを助ける気はあるのか?という点でミステリー要素はあったといえる。

半ばまで聴いたところで、作者の名前が Julia Phillips(ジュリア・フィリップス)であると気がついた。どう考えてもロシアとは無関係と思われた。Julia(ユリア)さんが例えばアメリカ人と結婚してフィリップスさんになったのかも、と思ったり。Wikiによると作者はアメリカ人、モスクワの大学に短期留学したことある。

留学以外にも現地でカムチャッカ女性の直面する問題について研究したそうで、知識と経験はあるのだろうが、なーんだ、アメリカ女性の創作かい、と気が削がれたのは否めない。それにしてもよく cultural appropriation として糾弾されなかったことよ。(近年アメリカではSNS等で言論統制がはげしく cultural appropriation「異文化の盗用」も簡単に問題視される。往往にして瑣末なことで多くは白人が叩かれ理不尽なことです)

作中に描かれた数多い人物の中に、面白い、もっと展開していってくれ、と思わせるのがいくつかあった。極東の幻想的な風景も織り込まれるがこれもまたたく間。カムチャッカをもっと堪能できるかと期待したのに。オーディオブックなのでいつの間にか聞き流しちゃった部分もあるだろうけどそれにしても残念。

作者の公式サイトを見たところ、ご本人はゴージャスな美人。日本版の表紙のモデルさんかと思った。日本版はデザイン勝ちやね。Twitterで「ジャケ買い」という文字をちらほら見かけたから、内容と関係なくてもおしゃれな写真貼り付けたのが成功したのか。たしかに素敵。でも私はオリジナル版の表紙の方が好き。寒々とした景色に少女二人の姿を遠目に写したのがいかにも心細げで本の中身に合ってると思う。

ジュリア・フィリップスさんがモスクワ・タイムズに寄稿したブログ。こちらでカムチャッカの日常を垣間見ることができた。
2011年11月から2012年8月までの25記事
https://www.themoscowtimes.com/author/julia-phillips

本作上梓時のジュリア・フィリップスさんインタビュー動画。なぜロシア、なぜカムチャッカ、が語られる。
Library Labyrinth Live Presents: Author Julia Phillips

カムチャッカ出身の作家による本があるなら読んでみたいなぁ。


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