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#37 五木寛之さんの対談イベントに思う「語ること」の大切さ

1.今日は二十四節気の「雨水」

 今日は二十四節気の「雨水うすい)」ー「冬の間に降った雪や氷が溶けてて水となり、雪が雨に変わって降り、ぬるんだ雨水が草木の芽を潤す頃」を意味する日とされています。

「立春」から15日目、寒さはまだ続きますが、日照時間も冬至の頃に比べれば、1時間以上も長くなりました。
 梅の開花もかなり進み、本格的な春の到来が待たれます。

東京の日の出 日の入り(国立天文台暦計算室)

2.五木寛之さんの対談イベントに参加

2月14日(月)、ホテルメトロポリタンで開催された毎日新聞社主催のトークイベント(五木寛之さんvs梯久美子さん対談)にオンラインで参加しました。

今年、90歳になられる五木さんのお話を、オンラインではありましたが、ライブで視聴することができ、とても有難い、貴重な「時感」でした。

(1)語ることは、書くことよりも大事

冒頭、五木さんは、『語ること』を『書くこと』よりも大事に考えているとお話されました。ーまず、『語ること(物語)』があり、その表現の手段としての活字があること、その意味で、『対談』の場を大切にしている、と。
 
これまで、50年以上に渡って五木さんが対談した相手は、1500人以上とのこと(現在NHKラジオ第一放送で放送されている「五木寛之のラジオ千夜一話」でもおっしゃっています。)

先月出版された「一期一会の人々」(中央公論新社)には、思い出深い20人との対談が掲載されています。どの対談の内容も味わい深く、また対談の名手である五木さんの観察眼に驚きました。

(2)”Keep On!”

最後に、五木さんは、英語で”Keep On"という言葉を紹介されました。「(~を)やり続けよ」という意味です。この言葉は、アメリカの名ドラマー(ジーン・クルーパ Gene Krupa(1909-1973)が、日本の若いジャズメンへのアドバイスとして送った言葉だそうです。

ジーン・クルーパは、1952年4月・1953年11月・1964年7月の3度来日しています。その何れかのタイミングで、ある日本の若いジャズマンが、ジーン・クルーパの楽屋を訪ねて、「このままジャズを続けていていいのだろうか?」と自身の悩みを打ち明けた所、ジーン・クルーパは”Keep On!”と答えたそうです。

五木さんは、このエピソードをどこからか耳にして、以来、自分の活動においても、”Keep On!”は大事にしている言葉である、とお話されました。

実際、五木さんの活動は、この言葉に相応しいものです。
●五木さんがTBSラジオでパーソナリティを務めた『五木寛之の夜』も25年間の長寿番組(1979年10月~2004年9月:TBS)で、語り手としての五木さんの魅力が存分に発揮された内容でした。
●日刊ゲンダイに連載のエッセイ『流されゆく日々』も、1975年の10月から連載が始まって今年で48年目、今週で11322回を数えました。(ギネス記録更新中)

●「青春の門」は、第1部「筑豊篇」が出版されてから50年以上が経ちました。2019年9月に「新青春の門 第9部 漂流篇」が出版されましたが、五木さんは、現在「完結編」を執筆中とのこと。時空を超えた壮大なシナリオを描き続ける五木さんのエネルギーには驚くばかりです。

3.「語り手」と「聴き手」

「書き手」に対し「読み手」が必要なように、「語り手」には「聴き手」が必要です。対談の中で、「語ること」の大事さ、対話の大切さについて、五木さんは、意味深いメッセージを送られました。

コロナ禍にあっても、ポストコロナにおいても、自身の生き方として「語り続ける」という強いメッセージとして受け取りました。

LIFE SHIFT2」でも、3つのキーワード、①物語 ②探索 ③関係が挙げられていますが、この中では、①物語が最も重要な意味を持つと思います。

原書(THE NEW LONG LIFE)では、「物語」にあたる部分は、「動詞”Narate”」:「語りなさい」という、より能動的な意味が込められています。note#32にも、そのことを書きました。

4.「雪が溶けると何になる?」

雪が溶けると何になる?
ある小学校でのお話(同校の学校だよりに載っていました):
校長先生が、オンラインで質問し、生徒に答えを募集した所、1番多かった答えが「水になる」、2番目が「春になる」、そして、色々、ユニークな答えが出された中で、「雨になる」が挙げられていました。ー「」のがなくなると、「」になるとの着眼点は面白いですね。(本来の漢字「雪」の由来とは異なると思いますが、小学生の目の付け所がユニークです。)

五木寛之さんは、小説家としてのデビュー前、作詞家としても活動していました。ペンネーム「のぶひろし」でも、多くの歌を作詞しています。その中に「雪が溶けたら」という童謡があります。

漫画家倉田真由美さんとの2年前の対談で、「この童謡は、1965年に発表された『ねむの木の子守歌』(当時の美智子妃殿下が高校時代に作詞)のB面の曲」として、五木さんは述懐しています。

発表当時、五木さんは33歳。平易で優しい歌詞の中に、五木さんの豊かな感性が窺えます。YouTubeに河村順子さん(1925年-2007年)の歌がアップされており、歌詞を書きとめました。

二十四節気の「雨水」に、タイミング良く、この詩/この歌に出逢えたことを嬉しく思います。「雪」にイメージできるものは、自然の他にも、私たちの内に外に、色々とあると思います。
Keep On!”:やり続けたいですね



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