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「砂漠」と「失踪」~「砂の女」をより楽しめるキーワード~芸術新潮 2024.3 号より

安倍公房生誕 100 周年を記念して、芸術新潮 2024 年 3 月号では安倍公房特集が組まれている。

ここでは、早稲田大学院教授鳥羽先生が書いた「 キーワードで開く安倍文学の扉」から、僕が読んだ『砂の女』の感想を「砂漠」と「失踪」の二 つのワードを取り上げて書こうと思う。

キーワード~砂漠

『砂の女』では、何といっても砂に囲まれた集落が印象的だ。
安倍公房が持つ砂のイメージとは何だったんだろうか。
そんな疑問を考える手助けになるキーワード。

この記事を読んで印象的だったのは、安倍公房が生活いていく上で置かれた環境だ。安倍公房は、小さい頃に満州の奉天で過ごし、身近にあった荒れ地、満州から焦土となった東京に引き揚げてきた当時の風景、荒涼とした景色は安倍にとって身近だったのかもしれない。

記事には、安倍公房が『砂の女』の着想源や砂に惹かれたきっかけも取り上げている。おすすめです。

失踪

このキーワードを扱った記事では、安倍公房の様々な作品で、失踪やアイデンティティの喪失、回復を扱っていることを取り上げている。
『砂の女』では、に囲まれた集落に囚われた男が自ら失踪を選びとり、最初戻りたがっていた社会から姿を消す選択をする。

記事では、安倍公房の故郷を持たない強い自覚があったという。
安倍公房自身がアイデンティティを探し続けてきたのではないか、と思えた。
迷うからこそ、失踪する、そんな問いがあることに気づかせてくれた。
『箱男』についても触れており、安倍公房作品におけるアイデンティティの謎をもっと深く読みたい人におすすめ。

安倍公房の作品は多様化する世の中で、どう生きればいいのか悩む人に対して刺激になると改めて感じた。

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