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横顔【エッセイ】六〇〇字

 早大エクステンション「エッセイ教室」春講座、三回目の課題は、「横顔」。「顔」絡みでは、そのものズバリ、「顔」。そして「素顔」「別の一面」(表の顔、裏の顔)(昼の顔、夜の顔)など微妙に違いがあるが、「横顔」って? 英語では、profileって意味もあるのだろうか。「プロフィール、人物紹介」とか「意外な一面」のような意味もありますね。選挙広報で、立候補者の趣味などを紹介する場合も、横顔。さて、どう書くか…
 ちなみに、TOP画像は、1965年のテレビドラマ「青春とはなんだ」。原作は、石原慎太郎であった。懐かしい…💦^^
              ※
 「うるさい! 静かにしろ! 俺は、他の先生と違うからな。よく憶えておけ!」。六十年前。中学初日の全校集会で、怒声が響いた。教師になって三年目のK先生だった。
 一級上に姉がいるHが「暴力教師らしいよぉ。担任でなくて良かったな~」と囁き、顔を見合わせ頷いた。ところが、二年になると二人の担任になり、評判通りの凶暴性と、別の一面を知ることになる。
 ある日の自習時間。剽軽ひょうきん者のHが騒いでいるところに先生が入ってきて、すぐに平手が飛んだ。その光景を前にし、「悪いのは俺だ。注意しなかった級長のオレが…」と思いながらも口にできなかった。悔いた…。
その週の日曜日。Hと教員住宅を訪ねると、花壇の草抜きをしている先生の姿があった。背後から、そのときの思いを伝え謝ると、しゃがんだまま、「その気持ちを忘れるな」とだけ答えた。そして、Hと同じように貧しい農家に育ち、小さい頃から畑仕事を手伝っていたこと、高校を出て就職してから夜間部に通い、教員資格を取得したことを、話してくれた。
 この日のことを、Hが教室で話したのだろう。先生との距離が一挙に縮まった。手を挙げる姿も、この後見ていない。(そしてHは、後年、この地の町長を三期務めることになる)
 春休みになり、野球部の練習で登校しているとき、廊下ですれ違った先生に声を掛けられた。「三年も、俺のクラスだからな」と。

(おまけ)
怖~い文芸評論家のおばちゃんが、吠えています。優しいおじちゃんのワタクシとしては、まったく同感! とくに最後の一言は、二度頷いた。^^

東京新聞朝刊(5月1日)

<予告>
斎藤美奈子に尻を叩かれたので、次回は、政治ネタを。
「五本に一本書かねば、筆が腐る」と、五本目であるし、教室も休みだし…💦^^


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