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《物》【エッセイ】一六〇〇字

 楽しかった2週間が過ぎてしまい、いまはWBC&オオタニさんロス状態。(-_-;) でも、来週からは大リーグもプロ野球も始まります。また熱い半年が始まります。来月7日からは、マスターズ・ゴルフもあります。
 実は、このエッセイを決勝戦の日にアップを予定していました。急遽、予定を変更。(笑 延期して良かったです。こんな重いテーマではね・・・。(-_-;)
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 独居老人の身としては、医学界に貢献できるのなら最期は「献体」で、と考えている。すでに十分すぎるほどにアルコール漬けになっている肉体でも、よろしければではあるが。可能なら、解剖は女性の医学生の手でやさしく。なぜ、悪さをしてしまったかを解明してほしいと、リクエストして・・・。しかし、「そのためには脳味噌から調べないと無理でしょ」と言われそう・・・。
 脳味噌と言えば、夏目漱石の脳は、東大医学部に標本として保存されている。「献体」は、「科学的思考を重んじる日常の言動からして、遺体を解剖してはっきりと死因や病気の痕跡をつきとめ、医学の将来に役立ててもらうということが、漱石本人の遺志に叶う」と、妻、鏡子が希望したのだ。他に、桂太郎も。最近では、大辻伺郎、田谷力三、細川俊之、穂積隆信らがいる。
「献体」を初めて知ったのは、先日亡くなった大江健三郎の『死者の奢り』。高校二年のとき、結核で半年入院していたころ。半年の入院と言っても、当時としては軽症。「不治の病」と言われていた時代とは、違う。しかし、「死」についておぼろげながらではあるが、考えた時期だった。アルコールのプールに漬けられた《物》に衝撃を受けた。大江は、プールに浮かぶ「死体」をこう表現した。

「死者たちは、濃褐色の液に浸かって、腕を絡みあい、頭を押しつけあって、ぎっしり浮かび、また半ば沈みかかっている」

大江健三郎の『死者の奢り』

 当時と違っていまは、遺体は、一体ずつ状態を保つ固定液が入った箱に入れ保存されるらしい。プールならひるむが、そんなに丁重に扱ってもらえるなら、悪くない。
 ただし最近では、登録するひとが急増していて、登録を中断している大学もあるという。高齢化が進むなか、献体の認知度が上がり「医学の進歩に貢献したい」「死後も役に立ちたい」という人が増えたこと、死生観の変化が背景にあるようだ。

献体篤志家団体が62団体あり、献体登録者の総数は315,641名を越え、そのうちすでに献体された方は152,795名に達しています(令和4年3月31日現在)。最近は登録者数も増加の一途をたどり、登録者数の多い大学では、登録を一時見合わせているところも多くなっております。
昭和57年度からは献体者に対する文部大臣(現・文部科学大臣)からの感謝状贈呈が行われるようになり、
遺体保管場所の確保難や遺骨返還までの期間が延びるのを懸念し、大学が献体登録の受け付けを停止したり制限したりする動きも広がってきた。

(公益財団法人 日本篤志献体協会WEB)


 過去は、身元不明の遺体を解剖していた時代があったようだ。いつごろだったか、NHKのドキュメンタリーで観た。身元不明者や、引き取り手のない遺体は、解剖後は火葬され、大学内の納骨堂に納められ供養されていた。しかし、「遺体引き取りから火葬までの費用は各大学の負担で、1人平均約40万円。核家族化などを背景に、葬儀の負担減を見込む希望者も近年は存在していて『やっとの思いで家族を説得して登録したような、古くからの会員と意識の差が大きい』(大学関係者)。登録する理由を詳しく聞き取る動きも一部で出てきた」(日経電子版)と、登録者数の急増に困惑も拡がっている、とも報じられている。

 先日、『眉山びざん』(2007年)という映画を観た。さだまさしの小説が映画化されたもの。主人公(松嶋菜々子)の母(宮本信子)が、「献体」に登録していたのだ。母の死後、遺体は大学病院に引き取られる。解剖は、直ちに行われるわけでなく、遺骨が戻ってくるのは、1~3年かかる。映画では、解剖に関わった医学生が出席のもと、慰霊祭が行われ、大学側から感謝状(文科大臣)が授与される様が描かれている。
 
 文科大臣の感謝状はいらないが、慰霊祭までやっていただけるなら、嬉しい。しかし、問題がある。登録条件をクリアできるかどうかだ。私の不純な動機では、不合格かも。大学に2度も落ちて、最期も落ちてはね・・・。

映画『眉山』

(ふろく)
「朝日新聞朝刊(3月20日)の声」
このような医師になってくれるなら、「献体」も意味あるかなと思える話です。

朝日新聞朝刊(3月20日)の「声」

(おまけ2)

戦場に必勝しゃもじ平和ボケ

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