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「巣ごもり」のご利益【エッセイ】

 「無職」歴、五年。悠々自適とまではいかないが、年金と蓄えで愉しく暮らしている。現役の多くは、コロナのせいで非日常の生活を余儀なくされているが、我々は以前も、そもそも「巣ごもり」が日常であった。ではあるが、変化と、何某かのご利益もあるようだ。
 生きがいのゴルフや外呑みを自粛し、耐えられるか懐疑的だったが、意外にも、大丈夫だ。その分読書量が増え、呑みながら本を読むと眠たくなるので、酒の量が減った。おかげで、体脂肪率が二ポイント、下がった。
 これまでも料理をするほうだと思うが、期間中、その頻度が増えた。ピザ作りも覚えた。中でもお気に入りなのが、塩豚なるローストポーク。肩ロース肉に、粗塩と胡椒をまぶし、ニンニク、ローズマリーを添え、オリーブ油をからめ、3日寝かす。オリーブ油レモンと醤油のタレで食べると、三五〇gくらいはいける。白ワインを呑みすぎるのが、難点だが。
 と、ドヤ顔気味だが、上手がいる。NYにいる友だが、天然酵母でパンを作るという。パンやピザを自宅で作る人が増え、イーストが品薄らしい。なら、酵母菌を飼ってしまえと、菌を育てている。林檎と梨を食べた後に残る芯と皮を、水と、スプーン一杯の蜂蜜を混ぜて数日置くと、元気に増殖するようだ。
 ここまでは良いのだが、大失態をやらかした。チェーンメールだ。感染チェックの方法と水分補給の奨めが内容だった。普段から冷静沈着な某女史からの情報だったのでなおさら。まんざらガセじゃないだろうと、勇んで流す。親戚一同、思いつく限りの友たちに。が、間髪入れず、S化学に勤める理系男からのご指摘。大冷や汗をかいた、のだった。とはいえ、何年かぶりの友と生存を確認し合えたので、これもご利益と、納得している。
 ところで、酵母飼育話だが、林檎だけでも良いらしい。さっそく、ピザで試してみよう。

※三日寝かせた塩豚(五〇〇g)は、ガスオーブンで、予熱一八〇度、そのあと同温度で五〇分。良い焼き加減だと思います。
(撮影後、パンをセットするのを忘れていたことに気づきました。笑)

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