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ウォーキング小景【エッセイ】一二〇〇字

 ウォーキングを日課にしている。速足で、8,000歩。還暦あたりから10年以上続いている(雨の日は避けているので、毎日ではないが)。自宅のある新宿区を縦横に、5ルートある。

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(ルートのひとつ、神宮外苑 銀杏並木(昨年、撮影)。来月には、こんな感じか)

 速度は、時速5.5kmくらい。普通よりちょっと速く歩くと、4kmちょっとだから、けっこう気合を入れて歩く。本人は極めて真剣なのだが、真剣だからこそ、はたから見ていると、滑稽に見えるかもしれない。そんな最中に、面白いことが発生する。
 まずは、勝気なひとと会うことがある。前方を歩いているひとを追い抜いたとき、抜かれたのが悔しいとばかりに、かなりの速足で抜き返すではないか。100m前方にいたひとだから、スピードがまるで違っていたはず。このタイプは、男よりも若い女性に多い(個人的感想だけど)。コンパスが、こちらのほうがかなり長いので、その「勝気」な女子は、小走りのような、急ピッチ走法である。私も負けじと、速度を上げる(おいおい、どっちが勝気やねん)。
 急に抜き去るケースで、こんなこともあった。私の歩き方が大袈裟なのだろうか、抜いたはずの女子高生が、走って抜いていき、腕を大きく振って、腰をくねくねして歩くのだ。たぶん、私の歩き方をマネているのだろうが、その所作が極端なのだ。そして、後ろを振り向き、ニヤっとして、走って地下鉄の駅に降りて行った。
 最近1週間のことである。3回、同じひとに追い抜かれた。3回とも時間帯は、同じじゃない。30分くらいのずれがあるのだが。外苑東通りでの出来事である。陸上自衛隊の制服のような深緑色のズボンをはいた、30代前後の男。Tシャツは毎回違うが、ズボンは同じ。リュックサックを背負っている。身なりだけでなく、歩く姿が、ユニークなので、記憶に残っていたのだ。猫背、コンパスは異様に長い。そして、大股走法。それなりに脚長がある私でも、さすがにかなわない。とにかく、一生懸命に歩くのだ。決まって、大久保通り手前辺りで抜かれて、1km先の四谷三丁目に向かって歩いていく。
 追い抜いてくれるなら、まだいい。速度が同じなのが、一番、悩む。たまたま信号で一緒になったひとと仲良く歩かなければならなくなる。絶世のベッピンさんなら、望むところだが、野郎なんかじゃゴメンしたい。そんなときは急に曲って、進路変更。しかし、合流地点で、バッタリ再会してしまうことが、多い。
 長く歩くと腸内が活性化されるのか、ゴール近くになると、「ほうひ」したくなることが多い。我慢するが、どうしようもなくなるときが、ある。近くにひとがいないかを確認するのだが、そういうときに限って、いらっしゃる。男なら、まあ、「許せ」とばかりに、可能な限り、出口を絞って、音を抑える。ところが皮肉にも、女性がいるケースが、多い。そんなときは、車の走行音で、ごまかす。
 最後に、ワンちゃん。前方に車いすを挟んで付き添いの二人とポメラニアンが一匹、狭い歩道を歩いていた。ガードレールをまたぎ車道から追い越そうかと思っていると、犬が振り向き、進路を譲ってくれたのだ。通過する際に犬と目が合ったが、笑っているように感じた(まさかね)。

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