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「添え物」【エッセイ】九〇〇字

 「僕」は、社会貢献度は高いと、自負している。
 しかし、人気がない。無視されることさえある。決してイケメンってわけじゃないからかもしれない。アフロヘアーのようなチリチリしたヘアースタイルが受けないのかもしれない。取り残されることが多いから、昔は、「僕」をちょっと洗い再登場ということもあると、噂されもした。ひたすら引き立て役に甘んじている。とても主役にはなれそうもない。まあ、バイプレーヤーでも、「名」がつけばヨシとするが・・・。「僕」の名前は、パセリという。
 同じ宿命の仲間がいる。まず、刺身の傍に寄り添い下に敷かれる、ダイコンくんや大葉くん。ともに殺菌・抗菌作用がある、と言われている。ダイコンくんなんかは、昔から「食あたりをしない」と言われることから、「役が当たらない」役者に「大根」を付けて呼ぶことになったらしい。好いてくれる方もいるが、だいたい、そのまま残される。
 同じ運命にある仲間は、他にもいる。ダイコンくんと一緒になることが多い、にんじんくん。彼は、特に子どもに嫌われる。和製ハーブといわれる花穂紫蘇はなほじそさん。彼女は、観賞用と誤解されることが多い。最後にクレソンくん。ヨーロッパ出身だけあって、西洋料理を盛り立てる————。しかし、「僕」たちは、添えもんと言われる。
 そんな「僕」が、2012年、「ガッテン」に出演した。初の主役をはった。NHKで、だ。男は見かけじゃなく、中身と言ってくれた。ビタミンが非常に多く、他の野菜の数倍。あと、美肌効果だってある、とも。
 最近、添え物仲間でその社会貢献度を普及する協会を設立した。主たる目的は、健康のために“つま”も残さず食べよう運動を実施し、子孫のために「食品ロス」をなくすこと。本来食べられるのに捨てられる「ロス」の量は年間522万トンになっている。日本人の1人当たりの量は、1年で約41kg。これは1人が毎日お茶碗1杯分のご飯を、捨てているのと同じらしい(農林水産省サイト 令和2年度推計値)。
 そして、協会のテーマソングを、「添え物ブルース」にした。
 「いちょう並木に春が来る 君にも来るよ、幸せが なぜかかなしい そえもんたちよぉ ♪」
(886字) 


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