ゼロから始めるフリジア語(3日目)

今回はドイツ語聖書(Schlachter 2000)も同時に比較していきたい。
ドイツ語: Im Anfang schuf Gott die Himmel und die Erde.
フリジア語:Yn it begjin hat God de himel en de ierde skepen.
英語:In the beginning God created the heaven and the earth.

前回までは冠詞や名詞に注目をしていたが、今回は統語(syntax)の話題にいきましょう。この文構造を理解するために、ドイツ語版にも登場してもらいました😅

では、主語(S)である神(God, Gott)に注目しつつ、SVを降ります。
ドイツ語: <Im Anfang> schuf(V) Gott(S) [die Himmel und die Erde](O).
フリジア語:<Yn it begjin> hat(Vの一部) God(S) [de himel en de ierde](O) skepen(Vの一部).
英語:<In the beginning> God(S) created(V) [the heaven and the earth](O).

こうしてゲルマン語派の3言語を比較すると面白いですね😆 今回の文構造を理解するポイントは、文頭に副詞句<in the beginning>等があるということです。英語版の翻訳では、文頭の副詞句の影響は特に受けずいつも通りのSV語順をとっています。
一方のドイツ語とフリジア語では、SVではなく、VS語順になっていることがわかります。
これについて児玉(226)では次のように述べられている。

副詞句が文頭に来る時:フリジア語では,副詞ないしはそれに相当する語句が文頭に置かれると,義務的に倒置構文となる。この語法は、オランダ語やドイツ語にも普通に見られるが,英語では極く限られた表現(特に否定の意味を持つ語が文頭に来る場合)にしばしば見られる。

児玉 仁士『フリジア語文法』

なお、フリジア語では、hat … skepenという風に、単純過去ではなく英語でいうところのhave+p.p.の完了形を用いていることがわかる。児玉(160)によると、フリジア語では、ドイツ語やオランダ語と同様に、英語で言うところの完了形を単なる過去形の意味で用いることがあるとのことである。

関連して、フリジア語のhawwe ’have’の活用を確認しよう。
人称代名詞: ik(私)、do(君)、hy(彼)、wy(私たち)

現在形
ik haw/ha
do hast
hy hat
wy hawwe/ha

***
Yn it begjin hat God de himel en de ierde skepen.
なお、skepenは動詞skeppeの過去分詞形である。英語でも過去分詞形は-en語尾になることがあるが、フリジア語においても、強変化動詞の過去分詞は-enとなる。
最後に、強変化動詞の活用について、動詞drinke(飲む)を例に見てみたい。
<現在形>
一人称単数 drink
ニ人称単数 drinkst
三人称単数 drinkt
複数 drinke 
<過去形>
単数 dronk 
複数 dronken 
<過去分詞>
dronken
<現在分詞>
drinkend

※強変化動詞は、語幹の母音を変化させる(母音交替)ことによって、過去形・過去分詞形を作る。この母音交替には動詞によって様々なタイプがある。

では今日はここまで!(^.^)/

[参考文献]
・児玉 仁士 『フリジア語文法』 大学書林,1992年.

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