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非IT系大学でスマホアプリプロト開発を教えた話

はじめに

こんにちは。私は2023年の3月まで教育専任教員という立場で東海地方の某大学で准教授として4年間学生を教えてきました。

本学はいわゆるカレッジとよばれるサイズの大学で、もともと建築をメインとした造形学部と経営学部からなりたっています。建築学科と同じ造形学部内に併設されていた芸術やデザインを教える造形学科が、昨今の実学重視の大学改革の波の中、ちょうど4年前にAIのデザインや利活用を教えると銘打ってスマートデザイン学科に名前が変わり、カリキュラムを変えると同時に民間から先生を募るということで、縁あって教育専任教員として働くことになりました。

本新設学科では、卒業時にはスマホアプリなどのプロトタイプを実装し、卒業作品に仕上げるといった目標が高く設定されているわりには、実際の授業ではプログラミングをいっさい教えないというカリキュラムの構成になっていました。そんな中、新設学科に新しく入ってきた1年生を4年間面倒をみて、学生の考えたアイデアを実現する形で卒業作品であるスマホアプリのプロトタイプをつくる指導をすることになったわけです。

作成した卒業作品

4年前の2020年に入学した学生のうち私がゼミを受け持った10名は今年無事卒業作品を完成させ単位もとって卒業するに至り、そのうちの2名はIT系の会社に就職するに至りました。主だった作品は以下の通りです。

  1. 観光デジタルスタンプラリーアプリ
    観光スポットを巡りデジタルスタンプを集めるアプリを開発しました。観光スポットがスタンプギャラリーや地図上にリスト表示され、観光スポットにあるQRコードをスマホから読み取るとデジタルスタンプが有効になり、観光地の評価や口コミとともに、スタンプを押せるようになります。

  2. カードゲームのEコマースアプリ
    カードゲーム好きな学生がカードゲームを物理的に購入して、オンラインチャット機能を使って仲間とカードゲームを行うことを目的としたアプリを開発しました。

  3. 観光地石像の3Dモデルアプリ
    観光地においてある銅像石像をiPhoneで3Dスキャンしてフォトグラメトリして作成した3DモデルをAR表示するスマホアプリを開発しました。

  4. AIとチャットするアプリ
    指定したキャラクターに扮するAIとチャットを行うアプリを開発しました。AIチャットのエンジンには今流行りのChatGPTを使いました。

記事としてまとめる予定の内容

本記事では、プログラミングを学んだことのない学生に身近な社会課題を見つけさせ、それを解決するアイデアを考えさせ、スマホアプリの形で卒業作品として実装させてまとめさせるということを四年間をとおして実施した体験談をシリーズとしてまとめたいと思います。

1. オンラインサービスのしくみと作り方
2. AIのしくみと使い方、倫理規定を学ぶこと
3. プログラミング未経験者によるプロトアプリ開発について
4. スマホアプリのノーコード開発について

教育専任教員としての仕事は4年が一つの契約期間であることから、本書は2020年4月から2023年3月までの短い間の体験談となります。ただ、この間世の中的にはコロナパンデミックに突入し、オンラインサービスに対する認識が劇的に変化することを体験したこと、学業だけでなく生きる気力に関しても決して高いとは言えない学生たちのメンタリティーが4年間付き合う中で成長する姿が見れたこと、僕自身が人間中心設計やユーザインタフェース、AI、教育等々についてあらためて勉強する機会をいただきアウトプットさせてもらえたことなど、得がたい経験をさせていただきました。これらの体験を通してえられた内容を技術的な観点と人の教育といった視点、大学の社会への意味といった観点も踏まえてまとめていけたらと思います。


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