見出し画像

オンラインサービスのしくみと作り方

はじめに

非IT系大学でスマホアプリプロト開発を教えた話」に書いたとおり、私は2020年4月から2023年の3月までの4年間教育専任教員という立場で東海地方の某大学で准教授として学生を教えてきました。私が所属した学科は非IT系の学生が所属する新学科でしたが、卒業作品としては学生の考えたアイデアを実現する形でスマホアプリのプロトタイプをつくることを目標としていたため、授業やゼミを通してWebアプリやスマホアプリのしくみを教えるとともにノーコード開発環境を使い、スマホアプリの卒業作品を制作しました。

本書では、その中でも通常の授業で行ったWebアプリやスマホアプリのしくみについて教えた内容となぜそれを教えようと思ったのかを紹介したいと思います。

システム構築の基礎授業の内容

大学の授業は前期後期それぞれ一コマ90分の授業が16回ほど行われますが、授業コンテンツとしては、大学が文科省に提出したシラバスに沿った形で授業を受け持つ先生が教科書をもとにレジュメを作って授業することが大半かと思います。

私の場合は民間から採用された教育専任教師であったこと、私が担当したITシステム構築の基礎を教える授業のシラバスはすでに用意されてしまっており、さらに特にそれにあわせた教科書と言えるものがなかったため、下記のことを念頭に授業の内容とコンテンツを考えました。

  • ITのことを学んでいない学生向けになるべくその後の卒業作品作りにつながるような授業コンテンツにすること

  • そもそもシステム構築とはだれがどのような体制でなぜ行うのか、プログラミングってそもそもなぜする必要があって誰がするのか、ITシステムってどのようなものから成り立っていて最近だとどうつくるのが現代的で安くいいものが作れて効率がいいのかといった本質から説明を試みること

  • 文献を参考にした口頭ベースの授業にするのではなく、毎回図や動画を盛り込んだパワーポイントにまとめたコンテンツを用意すること

そこで用意した資料を一つのPDFにまとめたものが以下になります。

非IT人材にITを理解してもらうこと

前に書いた通り本授業の目的は、ITを学んでこず、ITに興味をもたない、ともすれば苦手意識のある学生たちに卒業作品としてスマホアプリのプロトタイプを作らせるため、すくなくともITシステムの構造や目的を理解してもらい、苦手意識を払拭して興味を持ってもらうことでした。

そのため、授業資料はなるべく本質的なことから説明するようにしてあまりIT用語の細かなことには触れないようにしました。具体的なOSやプログラミング用語などを並べて説明しても苦手意識が先行して嫌がる学生が続出するだろうなと思ったため、僕のゼミで採用したノーコードによるスマホアプリ開発のために理解が必要なざっくりとしたシステムの構造だけを説明して、あとはなぜITシステムを構築するのか、誰がどのようなチーム体制で行うのが一般的かなどといった内容にすることにしました。また、アプリのユーザインタフェースの考え方やITセキュリティについては具体的な事例をあげて説明するようにつとめました。さらに各コマごとに4択から選ばせる形の理解度テストを毎回行って、授業で説明したことを勘違いせず理解したかを確認させることを行なっています。

このように、非IT人材に身近なITシステムをベースにわかりやすくITを説明するといったとりくみは、昨今中小企業や非IT企業においてもデジタルトランスフォーメーションや学び直しが叫ばれる中、重要視されてきています。例えば、古くよりLinuxやオープンソースソフトウェアに関連する認定試験実施の取り組みをされているLPI-Japanという団体では、日常的に使われているITサービスを題材にして、それを実現しているしくみや社会との関係を具体的に解説することで、ITシステムのしくみを楽しくかつ意欲的に学べる教材として「ITベーシック学習教材」というものを無償で提供していたりします。

今後、ITシステムのざっくりとした構造は少なくとも理解した上でスマホやアプリを利用するといったリテラシー教育がますます重要になってくると思われます。一方、難解なプログラミング言語を学ぶことなくノーコード開発環境を使って、人工知能のモデルやアプリケーションを開発して仕事に利活用するといった環境はますます進化して実用的になってくると思われます。これからはシステムの目的や構造を正しく理解して、民主化されたテクノロジーをうまく使っていける人材育成が重要になってくるものと想像しています。

私はひとまず大学の先生を卒業して民間企業に戻りますが、ここに挙げたような考え方は企業や社会においても重要になってきますので、先生をしながら学んだことはこれからの仕事にも生かしていこうと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?