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5歳児に英語で説教された経験はありますか?僕はあります。

オーストラリア修行編第11話

オーストラリア滞在中に出くわした出来事の中で、

「文法スカスカなのに英語ペラペラ」なアウグストの件と並んで大きなインパクトがあった事件があります。

それはホストファミリーの5歳になる男の子と、庭でサッカー(のような遊び)をしていたときのこと

アドリブで話すチャンス

僕は「使えるものは子供でも使え」のあさましい精神で、そのサッカーの機会さえも英語の上達につなげようと、

サッカーそっちのけで「その場で言えること」をとにかく口から出そうとしていました。

アウグストと出会ってから、「ちゃんとした英語を」という思い込みからはだいぶ解放されており、さらにこのときは相手が子供ということもあってそんな緊張感はゼロ。

もちろん子供ですからそんなに難しいことを言うはずもなく、こちらもそのレベルでいいんだ(実際簡単なことしか言えないわけですが)という安心感も、

口を滑らかにするのを助けてくれました。

これ以上ない、アドリブで話す練習のチャンスでした。

そういう中で何気なく言った、"You are a good player!" という一言

この言葉を聞いた途端、それまでキャッキャッ言って一緒に遊んでいたその子が、急にボールを止め

厳しい顔でキッと僕のほうを向き直り、強い口調でこう言ったのです。

"No! PLAYER"

気の緩みは発音の緩み

親が子供に発音を教えるように、口を指差しながら思いっきり「L」を強調して

「ちゃんとした英語を」という気持ちがまったくなったことで、それまでのように頭の中で練習することもなく

リラックスした状態で、思いついた英語をそのまま口から発することができていた、

しかしその副作用として発音への意識が薄くなり、自分では「player」と言ったつもりが、

L の発音が甘くて

その子には「prayer」のように聞こえたのでしょう。

LとRの発音の区別は特に注意して取り組んできたつもりだったのに…

以前にもお伝えしたように、脳の処理力には限界があります。

音読だけに集中できるときならしっかりと発音し分けられても、それまで一切やってこなかった「その場のアドリブで何を話そうか考えて実際に口から出す」というタスクは

それだけで脳にとって大きな負荷となり、発音に一切注意が及ばなくなってしまった

あんなに簡単なセリフであっても。

にしても30を過ぎて5歳児に怒られるというこの衝撃!

LとR の混同

恐らく子供ながらに、「prayer」(祈り)のような神聖な言葉と「player」を間違えるなんて、許しがたかったのでしょう。

それまでのあどけない笑顔から、急に鬼のような表情になったその子の迫力に圧倒された僕は

慌てて「player」と発音し直しました

もちろん「L」は舌の先を上の歯の付け根の内側あたりにしっかりつけて強調して

それを聞いた師匠は「それでいいんだ」とばかりに無言でコクッとうなづき

また何もなかったかのように元の無邪気な笑顔に戻ってプレー再開

さっきまでと同じようにキャッキャッ言ってます。

なんという切り替えの早さ…

この一件は強烈な思い出となりました。これ以来、L・R を発音する際には、いつもあのときの師匠の厳しい顔が浮かび、意識してはっきり言い分けるようになりました。

聞き取りながら話すこと

ただ、発音のミスを5歳児に怒られはしたものの、実はこの時にもう一つの発見があって、

それは相手の話す英語を聞き取りながら、アドリブで話す、ということができていた、ということ。

アウグストのおかげで「ちゃんとした英語を話さなきゃ」という強い思い込みはだいぶ和らいでいたものの、

それでも大人が相手のときは、例の「英語ができる奴だと思われたい病」が顔を出し、「きちんとした発音で言おう」とちょっと構えてしまうところがやはりあり 

このために「相手が話している最中に頭の中で練習する」癖を捨てられませんでした。

しかし子供相手にはその病気すら出ません。「伝わりゃいい」精神の究極の状態でいられましたから、

このために、「頭の中での練習」という、それまでのスムーズな発話を妨げていた、脳にとって大きな負荷となるプロセスを完全になくすことができ

これによって脳に余裕ができたおかげで、「相手の英語を聞き取りながら話すことを考える」ということが出来たのでした。

「英語を話す」ということにおいて、どういう心持ちでいるかが大きな影響を及ぼすということですね。


実はこの「5歳児に怒られた事件」のときと同じぐらいリラックスできた場面がもう一つありまして、それはみんなでお酒を飲んだときです。

酔うと細かいことが気にならなくなりますからね。

「間違うと恥ずかしい」よりも「伝えよう」という気持ちのほうが勝るようになり、しらふのときよりもスムーズに発話できるようになります。

僕と同様に、必要以上に間違いを気にしてしまってスムーズに話せない、という方は、「お酒を飲みながら会話する」といいかも知れませんよ。

つづきます。

こちらから全話読めます。

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