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【3】清酒の表示(1) -必要記載事項と表示禁止事項-

店頭に並んでいる清酒にはさまざまな情報が書かれています。この記事のヘッダーの画像は、私が好きな銘柄の1つ、「而今じこん」の特別純米酒の裏ラベルです。
ラベル(等)に書かれている文言には基準があり、記載事項を分類するとこうなります。
・必要記載事項
・任意記載事項(ルールが決まっているもの)
・自由に記載できる事項(特に制限なし)
・表示禁止事項(書いてあったらダメですけどね)

基準になっている大きな柱が以下の二つです。
食品表示法(食品表示基準)
酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律(清酒の製法品質表示基準)
他にも関係する法律はありますが、まず上記2点に基づいた説明から。

記事は2022年3月時点での記載です。後述する2023年1月の清酒の製法品質表示基準の見直し後は取扱い内容が一部変わりますので注意してください!2023年改正後の変更点を修正・追記しました


食品表示基準

「清酒」は「酒類」としての前に「加工食品」の扱いになります。
したがって「食品表示法」に基づき「食品表示基準」により、加工食品として横断的義務表示とされている項目が定められています。

一般用加工食品に適用される項目が以下の通りです。
・名称
・保存の方法
・消費期限又は賞味期限
・原材料名
・添加物
・内容量又は固形量及び内容総量
・栄養成分の量及び熱量
・食品関連事業者の氏名又は名称及び住所
・製造所又は加工所の所在地及び製造者又は加工者の氏名又は名称

「食品関連事業者」とは、その表示内容に対して責任を有する者を指します。具体的には次の4つのうちのいずれかが該当します。
 ①製造者:実際に食品を製造した者
 ②加工者:実際に食品を加工した者
 ③輸入者:食品の輸入の届出をした者
 ④販売者:上記の者と合意により、これらの者に代わって表示内容に責任を負う場合の販売者
③と④はまだわかりやすいのですが、①と②の違いは何?となりますよね…。

「製造」および「加工」の定義を教えてください。
  ↓
一般的には、
①「製造」とは、その原料として使用したものとは本質的に異なる新たな物を作り出すこと
②「加工」とは、あるものを材料としてその本質は保持させつつ、新しい属性を付加すること
です。

食品表示基準Q&A「第1章 総則」 より

酒類の場合、①は酒類を製造した者、②は容器充填等(加水調整くらいまでは加工でOKみたいですが)を行った者、あたりの解釈に落ち着くようです。そして後述しますが、酒類の場合にはこの「食品関連事業者」と「製造所又は加工所」の取扱いが面倒くさいです。

また、該当する加工食品に適用される項目が以下の通りです。
・アレルゲン
・L-フェニルアラニン化合物を含む旨
・指定成分等含有食品である旨(及びその関連事項)
・特定保健用食品である旨(及びその関連事項)
・機能性表示食品である旨(及びその関連事項)
・遺伝子組換え食品に関する事項(及びその関連事項)
・乳児用規格適用食品である旨
・原料原産地名
・原産国名

食品表示基準についての詳細はこちら↓をご覧ください。

これらのうち、「省略できる」「表示を要しない(不要)」「対象外」がありますが、その違いはとりあえず「書かなくても良い」という理解で進めます。そして「食品表示基準」では”書かなくても良い”とされていても「清酒の製法品質表示基準」では”必要記載事項”になっているものがあります。
前者は消費者庁、後者は国税庁。何このお役所仕事。

ひとまず食品表示基準により定められた必要記載事項が以下の通り。
・名称
・添加物
・内容量又は固形量及び内容総量
・食品関連事業者の氏名又は名称及び住所
・製造所又は加工所の所在地及び製造者又は加工者の氏名又は名称
・L-フェニルアラニン化合物を含む旨
・指定成分等含有食品である旨(及びその関連事項)
・遺伝子組換え食品に関する事項(及びその関連事項)
・原料原産地名

これを踏まえて、清酒の製法品質表示基準が加わります。

清酒の製法品質表示基準

「酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律」により、酒類には表示の基準が定められています。それに伴い、清酒における表示基準が告示されています。

(酒類の表示の基準)
第八十六条の六 財務大臣は、前条に規定するもののほか、酒類の取引の円滑な運行及び消費者の利益に資するため酒類の表示の適正化を図る必要があると認めるときは、酒類の製法、品質その他の政令で定める事項の表示につき、酒類製造業者又は酒類販売業者が遵守すべき必要な基準を定めることができる。

酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律 第86条(e-Gov法令検索より)

これを受けて↓のようになっています。

初っ端に特定名称酒の話が来るのですが、それはそれでボリューム必要ですし、次の投稿【4】清酒の表示(2) で特定名称と任意記載事項については詳しくやります。

必要記載事項

「清酒の製法品質表示基準」において必要記載事項とされているものについては以下の通りです。
・製造者の氏名又は名称*
・製造場の所在地*
・内容量*
・酒類としての品目*(←食品表示基準では「品名」)
・アルコール分
・原材料名
・製造時期(後述の通り任意記載事項へと変わりました)
・保存又は飲用上の注意事項(←食品表示基準では「保存の方法」)
※外国産清酒を使用した場合はその表示と使用割合、原産国名も必要になります。

*を付けた4点は食品表示基準と重複しており、一つの表示で両者の内容の表示がなされている場合、重複表示は不要です。また食品表示基準では不要とされた「原材料名」「保存の方法」が必要記載事項になっています。原材料名が食品表示基準で不要とされているのは、清酒としてその表示が義務付けられているから、加工食品としては表示を不要としている…そうですが、別に重複していても良くない?と思います。
関係性についてはざっくりした図にしたらこんな感じです。国税庁の資料のを参考にしましたが、項目等は弄っています。

清酒における必要記載事項と関連制度の関係性

今回、こちらのサイトを参考に随分と修正しましたので、リンクを貼っておきます。ここ見た方がわかりやすいとかそういうことは言わないでいただけると助かります(笑)
※こちらの内容は2023年1月改正を反映していません

製造者の氏名又は名称

何処の誰が造りましたよ、ということで、〇〇酒造とか〇〇商店とか、企業名や屋号が主として該当します。氏名って何?となりますが、会社という形態ではない製造者もあります。全国新酒鑑評会の目録を見ているとポツポツあります。
またここでは「製造者」と記載していますが、酒類を含む加工食品の場合、「①食品関連事業者」と「②製造(加工)所と製造(加工)者」の2者の記載が求められ、①と②が同一の場合はその事業者名と所在地(次項「製造場の所在地」の要件)を記載することで②の記載を省略できる、とされています。
したがって委託充填や委託醸造等、①②が異なる場合はそれぞれの記載(製造者、加工者など)が必要となります。
こういう場合はどう表示したら良いか、はこちらの「食品表示法の概要 (酒類表示編)」(PDFファイルが開きます)を参照してください。正直書いていると終わりません(笑)。製造所固有記号の話も省略します。

製造場の所在地

何処で製造したか、で、基本的にはその蔵(製造場)の住所を載せるだけですが、先述の通り「製造場」をどう取扱うか、製造者と販売者が異なる場合などはそれに応じた表示が必要です。

内容量

酒類は「『特定商品の販売に係る計量に関する政令』5条に掲げる特定商品」に該当するため、内容量又は固形量及び内容総量の表示は「計量法」の規定によりますので、容量で示し、リットルまたはミリリットルで記載します。
酒類は容量で課税されますが、温度によって容量は変化するのでそこはどうするのか、という点については、「酒税法及び酒類行政関係法令等解釈通達」の中に以下のように定められています。

8 酒類を重量により詰口する場合の取扱い
 酒類を重量により詰口する場合における1キロリットル当たりの重量は、当該酒類の詰口時の実際の比重により算定する。
 ただし、別表に掲げる酒類については、品目ごとに同表の「1キロリットル当たりの重量」に掲げるところによることができ、蒸留酒類については、アルコール分ごとに算定した「1キロリットル当たりの重量(kg)」(国税庁所定分析法の「第2表 アルコール分と密度(15℃)及び比重(15/15℃)換算表」の「密度(15℃)」欄に掲げる数値を温度4℃における水の密度(0.99997)で除し、1,000を乗じて得た数値(小数点以下第2位を四捨五入したもの))によることができる。
 算定に当たっては、1リットル当たりの重量にキログラム位未満第4位の数値がある場合は、これを切り上げてキログラム位未満第3位にとどめる。
 なお、実際の比重により算定する場合には、測定器具の故障等により正確な測定ができない場合その他正当な理由がある場合を除き、上記のただし書きによる算定方法に変更することはできないのであるから留意する。

9 酒類を容量により詰口する場合の取扱い
 容量により詰口する場合の酒類の数量は、温度摂氏15度の時における数量とし、計量に当たっては温度の変化による膨張率を考慮の上、正確に量定する。

10 容量2リットル以下のびん詰品の容量の取扱い
 容量2リットル以下のびんに詰口する酒類の容量の決定は、同一形態の容器100本につき詰口された酒類又は水の容量(容器の王冠部から液面までの空間の長さ(以下「空積深」という。)を一定とした場合の容量)を重量により測定して1本当たりの平均容量を算出(1本当たりの平均容量はミリリットル位にとどめることとし、1ミリリットル未満の端数があるときは、その端数は切り捨てる。)し、その平均容量をもって当該容器に詰口した酒類の容量とする方法によるものとする。

酒税法及び酒類行政関係法令等解釈通達
第30条の2 移出に係る酒類についての課税標準及び税額の申告」より

8の「別表」によると、清酒は1キロリットルあたりの重量を1,000kgとしています。日本酒度±1桁の範囲ではほぼ比重1になるので、概ねその扱いで問題ないということになります。
熱充填する場合は膨張していますから、9にあるように15℃で収縮した際に適正容量になるよう計測しなければならず(経験的には2%程度は縮むと思います)、瓶容器の場合、10にあるように重量と併用して基準の入味線(引用中では「空積深」)を設定しておく必要があります。
丸正ビンと呼ばれる規格瓶(日本産業規格S2350容量表示付きガラス製びん)ですと、規定の入味線に合わせることで容量を満たすと考えられていますが、これも温度によって上下するので、重量計測を伴う確認は必要かと思われます。

誤差範囲についてですが、同解釈通達では以下のように定められています。

11 酒類を詰口する場合の増量詰の取扱い
 酒類を重量又は容量により詰口する場合には、正確に計量させるものとし、計量の結果、1容器の詰口数量が、当該容器の詰口表示量を超えて増量詰されている場合において、当該増量詰分が表示量の1パーセントに相当する重量又は容量(その容量が5ミリリットル未満のときは、5ミリリットルとする。)の範囲内であるときは、当該増量詰分については、強いて移出数量に算入させる必要はないものとして取り扱う。この場合において、容量2リットル以下の容器詰品については、1容器当たりの増量詰量が上記に定める重量又は容量を超えるときであっても、それらの容器100個に対する増量詰量が上記に定める重量又は容量の範囲内であるときは、上記の場合と同様に取り扱っても差し支えない。

酒税法及び酒類行政関係法令等解釈通達
第30条の2 移出に係る酒類についての課税標準及び税額の申告」より

増える分には1%程度までなら認めますよ、ということになります。また2L以下の容器商品の場合、1容器あたりで1%を超えるものがあったとしても、100個に対して1%の範囲内に収まればOKとします、とばらつきについても考慮されています。実際、瓶の形状による誤差もありますし。
少ない方は記載がないけどどうなってるのかな、というと「計量法」における「商品量目制度」にでは、充填容器の容量に応じて表示内容量からの誤差が認められています。
同制度が定める「量目公差表」により、アルコールを含む飲料の場合
 100mL超~500mL以下 → 2%
 500mL超~1L以下 → 10mL
 1L超~5L以下 → 1%
とされています。
なお、経済産業省案件です、計量法。
管轄省庁違うけど、これでいいのかな解釈……。計量法だと多い場合の規定はもっと緩いのですが、酒税の観点では望ましくないので別途規定しているのかなと想像します。

酒類としての品目

酒類の分類上の品目です。
【1】清酒?日本酒?でも触れましたが、「清酒」に加え、地理的表示(GI)の要件を満たす場合は「日本酒」と表示しても差し支えありません(例外表示)。

アルコール分

以前は「アルコール度数」でしたが「アルコール」に改められました。
アルコールが何%(容量%)含まれているか、です。
表示は「○度」でも「○%」でもOKです。
酒類によってルールが異なりますが、清酒の場合は1%の範囲内での表示が認められています。しかし、例えば「15%以上16%未満」と「15%」では、その内容の示す1%の範囲が異なるので注意が必要です。
・15%以上16%未満 →15.0%〜15.9%
・15% →14.1%〜15.9%

アルコール分表示の違い

前者の「以上〜未満」を使うとその範囲内なのはわかりやすいのですが、後者は記載のアルコール分の±1%未満を認めていますので、最大で1.8%の差が起こりうるのです。
○%表記なので下限まで薄めて出しても問題ないだろう、という蔵は流石にないと思いたいですし、ルール上は問題なくても所轄税務署のご指導は受けそう…。
毎年原酒で出している商品が規格に届かない、または下限に触れる可能性があるときには、○%表示としておく方が無難です。毎年17%の原酒で売るのに今年は16.8%にしかならなかった!というときでもコレなら表示はそのままで売れますので。

原材料名

その清酒の製造に使われた原材料が記載されますが、水は除きます
米、米こうじ、その他添加した醸造アルコールなどの記載が必要です。使用できる物品については【2】清酒の定義で記載した通りで、原材料のうち、添加物と見做されるモノは「/」で区切った後に表示することになりました(これは消費者庁の食品表示基準による添加物の表示方法の案件)。
じゃあ米、米こうじ以外は添加物なので「/」の後ろ…ではなくて、醸造アルコール、糖類などは「原材料」で、有機酸や金箔、炭酸ガス等が「添加物」に該当しています。何を「添加物」とするかは厚生労働省が決めていますから、酒の原料とは、という議論とまた別と思ってください。
また、米および米こうじについては、米トレーサビリティ法(農林水産省案件)により、産地情報を伝達する必要があります。

米(国産)、米こうじ(国産米) といった表記を取られていることが多いかな? 〇〇県産、という表示でも可です。「日本産(米)」としている蔵元さんもあります。

製造時期(任意記載事項に変わりました)

いつその「商品が」作られたか、です。
中の「清酒が」いつ出来たのか、ではありません。 で、さらに瓶詰めしたときが商品化されたとき…とも限らないからややこしいんですよね。というのも、特定名称酒で(条件緩和されました)瓶貯蔵等した場合に、最終的にその貯蔵を完了して製品として完成した時点を製造時期とすることができるためです。

ロ 表示基準3の(2)「製造時期」について
(イ) 特定名称の清酒であって、容器に充填し冷蔵等特別な貯蔵をした上で販売するものについては、その貯蔵を終了し販売する目的をもって製品化した日を製造時期として取り扱う。

酒税法及び酒類行政関係法令等解釈通達 - 第8編 酒類行政法令関係 - 第1章 酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律関係 - 第86条の6 酒類の表示の基準 - 2 清酒の製法品質表示基準の取扱い - (3) 記載事項の表示(e-Gov法令検索より)

↑記載内容が変更されました

瓶詰めして冷蔵庫に入れておいて、発注来たから出して製品として完成しましたよ、としてもOKらしいので、そうなると表示されている製造時期が最新のものでも、実際いつ搾った酒をいつ瓶詰めしたのか、という情報はこの製造時期の表示ではわかりません。
酒の中身を知らせるべく、〇〇BY(酒造年度)とか、瓶詰日と出荷(製品化)日を分けて記載しているとか、そういう蔵元もあります。酒造年度とは、7月1日〜翌年6月30日を年度とする暦なのですが、それも知っている人の方が珍しいでしょうし、何にせよ消費者にはわかりづらいです。
そして2022年3月10日付でこの項目について見直しする旨のパブリックコメント募集が行われています。(終了しました)

特に問題がなければ、製造時期の表示については、2023年1月より任意記載事項へと変更される見込みです。任意記載事項のため、表示しなくても良くなるのですが、既存の流通体制やロット管理等の問題から、おそらくたいていの場合は継続して表示されると思います。ただし、特定名称酒以外でも商品化の段階をもって製造時期とすることができるようになるため、場合により一層わかりにくくなりそうな気もします。→後述します

また酒類においては、先述のとおり「食品表示基準」により賞味期限の記載が省略できるとされています(書いても良いですが製造年月の記載はどちらにせよ必要です→製造年月は必須ではなくなりました)。これはアルコールを含む特性から長期間の保存に耐え得るものであるとされているからで、海外においてもワイン等で賞味期限の表示は不要とされています。

清酒において未開封の場合、充填時に火落ひおち菌の混入がない限り、まず腐りません。時間の経過よりも、保管環境が劣悪な方が清酒はダメージを受けます。光(紫外線含む)、温度は特に顕著で、太陽光なら1日あればあっという間に酒をダメにできます。実際、体験談として、コンビニで直射日光受けているであろう棚に置いていた清酒がえげつない日光臭(不快臭)をしていたことがありました。
その辺まできっちりまとめられていたのが国民生活センターのQ&Aにありました。

冷暗所で保管したとしても、時間が経てば出荷時の酒質からは良くも悪くも変わってしまうので、品質保持期限として各社ともこれくらいまでには飲んでくださいというのは決めているところもあるかと思います。
→ この件については【13】清酒の賞味期限 にまとめました。

保存又は飲用上の注意事項

ロ 表示基準3の(2)「保存又は飲用上の注意事項」について
「保存若しくは飲用上の注意事項」の表示とは、「要冷蔵」、「冷蔵庫に保管して下さい。」、「冷やしてお早めにお飲みください。」等の消費者及び流通業者の注意を喚起するための表示をいう。

酒税法及び酒類行政関係法令等解釈通達「第86条の6 酒類の表示の基準」より

基本的にはこれを指しています。生詰の商品の場合に必要とされますね。
ただ、食品表示のルールでは保存上の注意かそうでないかによって、記載方式が変わるようで、一括記載事項に含むか含まないか、具体的な条件記載が必要か不要かなど、厳格に適用すると面倒くさいことになりそうなのですが、売場の商品を見る限りではそちらのルールが厳密に適用されている清酒はさほどなさそうな印象を受けています。管轄省庁違うからかな……。

その他の必要記載事項

他にも記載が必要な項目としては「20歳未満の飲酒は法律で禁じられています」といった「酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律」の規定に基づき定められた「二十歳未満の者の飲酒防止に関する表示基準」がありますし、使用資材によっては「資源有効利用促進法等の表示」(リサイクルマークとかいわれるやつです)、それと「製造物責任法等を踏まえた表示」(キャップ等で手を切らないようにとかいう注意喚起)、加えて「酒類の広告・宣伝及び酒類容器の表示に関する自主基準」による「アルコールと健康問題等に関する事項」における注意表示事項として妊産婦の飲酒や適量飲酒、飲酒運転への注意文言など…

ここまでちょこちょこ記載していますが、管轄省庁の異なるルールに加えて、酒造業界の定める自主基準など、いろいろ面倒くさい手続きを経てあのラベルに情報が掲載されています。
そして文字のポイント数(日本産業規格Z8305(1962)に規定する文字の大きさ)も「○○ポイント以上あること」と項目ごとに決められていますので、300mL瓶や180mL瓶のラベルにそれ以上の情報詰め込もうとすると、もうデザインどうこうの話ではなくなってきます。
表示する場所(モノ)はラベルでなくとも構わないのですが、箱に書いて本体はスタイリッシュに…というのもダメで、本体から取り外しできないものに記載するルールです。首掛けや掛札でもシール等で固定する必要があるようです。キャップに書いても可ですが、容器底面は不可です。

表示禁止事項

次に表示禁止事項を先にまとめておきたいと思います。
・清酒の製法、品質等が業界において「最高」、「第一」、「代表」等最上級を意味する用語
官公庁御用達又はこれに類似する用語→品評会等で受賞したものであるかのように誤認させる用語及び官公庁が推奨しているかのように誤認させる用語
・特定名称酒以外の清酒について特定名称に類似する用語
の3点です。

清酒の製法、品質等が業界において「最高」、「第一」、「代表」等最上級を意味する用語

任意記載事項のところにおける内容とややこしい案件になるのですが、端的に表すと、自社製品の中でのランク付けはOKだけど、他社製品と比べて一番だというのはNGだよ、ということみたいです。
(個人的には人気酒造さんの「人気一にんきいち」の名称は15年ほど前の話なのによく通ったなと思いますけど…)

品評会等で受賞したものであるかのように誤認させる用語及び官公庁が推奨しているかのように誤認させる用語

(前半については改正後の追記です)
国、地方公共団体等公的機関から受賞した場合のみその受賞の記述が可能、とされていた「品評会等で受賞」についての表示が制限がなくなり、民間のコンテストの受賞についても表示に記載できるようになりましたが

(イ)その事実がないにもかかわらず、あたかもその事実があるかのように見せかけた賞
(ロ) 社会的な地位、責任のないものの授与した賞
(ハ) 自己の付けた賞
(ニ) 自己の取り扱う他の商品又は自己の行う他の事業で受けた賞であるにもかかわらず、自己が製造した清酒についても、その賞を受けたものであるかのように誤認されるおそれのある表示

酒税法及び酒類行政関係法令等解釈通達「第86条の6 酒類の表示の基準」より

については表示できません。主に消費者保護の観点かと思われます。

後半の官公庁と書いてますが、ほぼ宮内庁案件でしょう。「宮内庁 or 皇室御用達」は使用不可です。
酒類以外でも老舗店の商品の売り文句でたまに見かけるヤツですが、清酒の場合は記載が禁止されています。というか清酒に限らず今は何であってもダメなんじゃないでしょうか。
皇室行事に使われる清酒については、宮内省時代の産物で、銘柄など詳しい人はご存知ですし、WEBにも情報は拡がっていると思います。しかし公式にそれを謳うこと自体が許可されていません。商品の表示に限らず、蔵の宣伝や販促物への使用もダメ。飲食店向けの展示会でそれをプレゼンしちゃった蔵元さん、見たことありますけどね……。
改正に伴い文言が多少変更されているものの、概ね内容に変わりはありません。

特定名称酒以外の清酒について特定名称に類似する用語

特定名称酒の話を後回しにしているのにこれを持ってきても説明しづらいのですが、紛らわしい表現、誤解させる表現はダメということです。
例としては「米だけの酒」が挙げられています。米と米こうじと水で仕込んだとしても、条件を満たさず「純米酒」を表示できない清酒であれば、特定名称酒と異なる旨をはっきり示さないといけません。

個人的にこれよく通ったな第二弾として「全米吟醸」という名称があります。

特定名称酒だし、吟醸酒なので「吟醸」の文字は使って差し支えないのでしょうが、「全米」とは?「純米吟醸」じゃなくて?と思いそうな表現が既に商品として認められているのですよね。
添加するアルコールが自社の純米酒を蒸留して得た「米100%の醸造アルコール」だから「全てお米の吟醸酒」みたいな表現されていますが、それはそれで誤解されそうです。

チ 表示基準2の本文について
(前段略) なお、特定名称と類似する用語は、特定名称としては使用できないものであるが、特定名称を表示した上で、当該用語を銘柄等に併せて使用することは差し支えないものであるから留意する。

酒税法及び酒類行政関係法令等解釈通達「第86条の6 酒類の表示の基準」より

たぶんコレを適用しているのだと思いますが、「吟醸」が特定名称で、銘柄等として「全米吟醸」だとしても、その解釈もどうなの?と感じています。
「人気一」も「全米吟醸」も福島県(内の一部地域)で、仙台国税局の所轄案件ですけど、この辺の解釈はどうなっているのでしょうね…。

その他の表示禁止事項

任意記載事項の方の話が前提ですが、2022年3月時点では民間のコンテストの受賞結果の表示は認められていません。え?「○○で金賞受賞!」とか書いてあるよ?とお思いですよね?
国、地方公共団体等公的機関から受賞した場合のみその受賞の記述が可能、とされていますので、即ち民間団体のは不可なんです、一応。
ただ、本体のラベル等への記載はダメだけど、“取り外しのできる販促物”ならOKという話なので、シールや首掛けなどで表示しているケースが多いです。どこまでが本体の表示でどこからが販促物扱いなのかは所轄税務署の裁量次第のようです。
そしてコレも2022年3月10日のパブリックコメント募集で取り上げられていますが、2023年1月から公的機関に限るという条件を緩和し、民間におけるコンテスト結果も表示を認める方向です。
 →上記のとおりです

清酒の製法品質表示基準の改正について

何度か触れましたが、「清酒の製法品質表示基準を定める件」等の見直しが行われ、その一部が改正されました。2023年1月より施行(適用)です。

2 清酒の製法品質表示基準の一部を改正する件(令和4年国税庁告示第30号)の概要
 国内外の消費者にとっての分かりやすさや日本産酒類のブランド価値向上を図る観点から、令和4年7月19日に「清酒の製法品質表示基準」及び「酒税法及び酒類行政関係法令等解釈通達」の一部を改正し、令和5年1月1日に施行しました。主な改正内容は次のとおりです。
(1) 製造時期表示
製造時期の表示を必要記載事項から任意記載事項に変更しました。
(2) 受賞の記述の表示
受賞の記述に関する任意記載事項の規定を廃止した上で、「品評会等で受賞したものであるかのように誤認させる用語」及び「官公庁が推奨しているかのように誤認させる用語」を表示禁止事項に追加しました。
(3) 複合表示
「生原酒」、「生貯蔵原酒」などの表示が可能となります。

国税庁WEBサイト「『清酒の製法品質表示基準』の概要」より

製造時期表示

①必要記載事項から任意記載事項に変更
②特定名称酒以外でも「冷蔵等適切な貯蔵が行われた場合」は製品化された時点を製造時期とすることができる
ところが変更点になります。
①→任意記載事項のため、表示しなくても良くなるのですが、既存の流通体制やロット管理等の問題から、ほぼこれまで通りの表示が適用されているところがほとんどだと思います。「任意記載事項」なので表示の仕方は従前の通りですが、製造時期に代わり「上槽日」や「瓶詰日」などが表示されるケースも想定されています。
②→若干文言も変わっていますが要するに制限の緩和です。特定名称酒以外でも最終の商品化の時点を以て製造時期とすることができるようになりました。ただし生貯蔵酒における「加熱した時点で貯蔵を終えたものとする」点は変わらないのでご留意ください。

受賞の記述の表示

先述の通り、任意記載事項として規定されていた「国、地方公共団体等公的機関から受賞した場合のみその受賞の記述が可能」の項目が撤廃されたので、民間の品評会の受賞についても自由に記載ができるようになりました。その際の条件については「禁止記載事項」に追記されています。
「官公庁の~」は文言の変更で中身に変わりはありません。

複合表示

「生原酒」「生貯蔵原酒」などの複合表示も認められるようになりました。公的には「生酒」「原酒」はそれぞれ表示が必要とされていて「生原酒」は正式な表現としては認められていなかった(一応)ものが、今後はOKになりました。ただし「生酒」と「生貯蔵酒」を誤認するような表示については変わらずNGです。

必要記載事項と表示禁止事項については以上です。
次はようやく「特定名称」「任意記載事項」についてです。

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