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顎変形症は予防できるの?


昨今、他人と会えないこともあり、
自分への関心が異常に高まっていないかい?
歯磨き、化粧、髭剃り、ZOOM会議と、1日1回はお目にかかる自分の顔、歯並び、かみ合わせ。
個性と考えるのもひとつだが、矯正歯科治療で改善可能なものは多い。
しかし中にはその限度を超えており、矯正歯科だけでは対応が困難なケースが存在する。
それが顎変形症(がくへんけい症)。

1.顎変形症ってどんな病気?

原因が遺伝によるあごの変形と推測されるかみ合わせのことで、
主症状は歯並び・かみ合わせの異常と上あごと下あごの大きさが違う、
あごの付き方に左右差があるといった顔の変形です。

歯並び・かみ合わせを治す治療である矯正歯科治療は、あごの骨の中で歯の位置を変えていく治療なので、あご本体の位置を変えることは出来ません。一般的な矯正患者さんでも多少の骨格の問題はあるのですが、顎変形症の場合その範疇を超えているため、治療は「手術を併用した矯正治療」が第一選択になります。
かみ合わせの手術をすることで、あごの出っ張り、引っ込み、左右非対称が軽減できるという二次的な効果も見込めます。

2.顎変形症の種類 

代表的な顎変形症には
骨格性下顎前突症:顎変形症治療の中で最も多いかみ合わせで、下あごが大きすぎてかみ合わせが受け口になっている。
骨格性小下顎症:下あごが小さすぎて、かみ合わせが出っ歯になっている。
骨格性開咬症:前歯の接触が一切なく、奥歯しか接触がないもの。
骨格性顎偏位症:かみ合わせの左右差が大きく、顔が左右非対称なもの。
などがあります。

3.顎変形症は予防できるの?

低年齢から治療を始めれば、将来の外科手術を回避できるのでは?
と考える方は多いと思います。

最も治療頻度の高い骨格性下顎前突症を例に挙げると
① 下あごが前に成長するのを抑える治療
② 上あごを前に成長させる治療
臨床現場では、このどちらかが成長期で行われてきたのですが、

実際の治療効果は
①やってもやらなくても下あごの大きさに差はなく、下あごは前に出ないが、顔が長くなる。
②短期的には大きな効果があるが、時の経過とともに効果が消失する。
ということが分かってきましたので、

筆者の個人的な見解は
「顎変形症は予防できない」です。
なので「放っておくと手術になるから、今すぐ治療を始めましょう」という文言には賛同できません。

ちなみに日本矯正歯科学会の診療ガイドラインでは、
①②どちらにもやんわりと否定的な見解を示しながらも、あらゆる組織、あらゆる思想の歯科医師、コスパ、患者・家族の価値観や好みにも忖度してあるので、中立的な立場を保った内容となっております。

4.顎変形症の治療はコラボ企画

顎変形症の治療は「外科的矯正治療」と呼ばれるだけあって、
矯正歯科と口腔外科のコラボ企画と言えます。
手順は術前矯正治療手術術後矯正治療保定(ほてい)の4ステップで進んでいきます。

① 術前矯正治療:手術をしてから矯正治療をすると思われるでしょうが、
違います!手術直後に上下の歯がうまくかみ合うことを想定して、上あごの歯並びと下あごの歯並びを別々に矯正していきます。
この段階ではかみ合わせは治らないままです。期間は1年~1年半です。

② 口腔外科で手術:入院して全身麻酔にかかってもらい、口の中から切開してアゴを削り、位置をずらします。入院期間は7日~10日ほど。
この段階で、かみ合わせは大雑把に仕上がります。

③ 術後矯正治療:緊密なかみ合わせに仕上げるステージです。期間は1年弱です。

④ 保定:矯正装置から解放された歯は、元居たところに戻ろうとします。
矯正器具を撤去した後は、リテーナーという着脱可能な装置を使って、新しい環境に歯、筋肉、舌などを慣れさせていく期間が必要です。期間は約2年です。

5.外科的矯正治療を選択する際の注意点

外科的矯正治療は安全な手術になったとは言え、ZEROリスクではありません。
術中の出血、異常骨折、神経・血管の損傷、術後の知覚麻痺といった合併症がないとは言い切れません。このことを理解したうえで選択する必要はあります。
もう一つ、顔の変化に過大な期待は込めないことです。
美容整形とは違うので、気に入らないから何回も… ということは出来ません。
現在、矯正治療は美容面が過度に強調されている傾向にありますが、
外科的矯正治療の第一の目的は通常の矯正治療と同じで、歯並び・かみ合わせの改善にあります。
顔の変化は二次的なもの。そもそも全員パーツが違うし…

6.心当たりがあれば病院で診察してもらおう

治療が大掛かりなので、さぞかし高額な請求が来るのでは?と思われるでしょうが、顎変形症の治療は指定自立支援医療機関であれば歯科矯正、外科手術どちらも健康保険が適用されます。
気になる方は各県の指定自立支援医療機関にご相談下さい。                                       


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