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#女たち Vol.16

小蘭(シャウラン)の場合

シャウホン叔母さんがやっているチャーシューライスの店に人気歌手が来たらしい。

  きっとシャウホンの店はもっと繁盛する。
  シャウホンも旦那を亡くして大変だったけ 
  ど、やっと運気が巡ってきた。
  シャウホンにあやかって、ロトを買おう!
  当たるかもしれない。

母の興奮した声が台所から聞こえて来た。

シンガポール人の中華系、特に年配層はロトを買うのが好きだ。
父も母に便乗して、ロトのマークシートを片手に鉛筆はどこだと探している。

何年か前、母は、近所に住む夫婦が双子を出産した時、その赤ちゃん達のバースデーナンバーを買って3等を当てた。
それ以来、縁起が良い事があった時の日付や、それに関係する人のバースデーナンバーのロトを買い続けている。

シャウホン叔母さんの店に芸能人が来た話が、今はロトの話だ。
うちの会話はいつも話が色んなところに飛ぶ。

このタイミングで、私がマレー系の彼と付き合っていて、結婚したいと思っていると言ったら、両親はどう言うだろうか。

ロトどころじゃなくなるだろうか。

私がマリークと出会ったのは四年前。
次の旧正月が終わったら、マレーシアのイポーの病院で働く事が決まり、良い機会だから、一緒について来てほしいとプロポーズされた。

だが迷っている。
結婚すれば、イスラム教徒として彼と生活することになる。
小さい頃から周りにはマレー系の友人はいたし、彼らの食や文化、生活習慣なども、どんなものなのかは分かっているつもりだ。

だが、結婚となると、不安だった。
この気持ちを両親に打ち明けたかった。
大丈夫だよと背中を押してくれたらと思ったが、果たしてその前に両親は私と彼の結婚を
喜ぶだろうか。


母の大きな声が響く。

 シャウラン!

 ロトは店に来た歌手の誕生日のナンバ                 
 ーにしよう!
 店に来たって言うあの歌手の誕生日、
 携帯で調べておくれ!

 シャウラン!
 聞いてるの?!

 シャウラン!

                   
 聞いてるのかい!?
            

 シャウラン!

私は愛する彼の誕生日を伝えた。
当たったら、両親は、手放しで私の結婚を喜んでくれるだろう。






#ロト
#シンガポール













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